相続法の改正
〇この記事を読むのに必要な時間は約4分26秒です。
目次
1 はじめに
相続法(民法の「相続編」のことを言います。)に関するルールが、平成31年1月13日から段階的に大きく変わることとなりました。そこで、今回は、相続法の改正についてご説明したいと思います。
相続法は、約40年間、大幅な見直しを行っておりませんでしたが、その間に高齢化社会の到来や家族のあり方の変化など様々な社会変化が起き、従来の相続法を適用していては不都合な結果を招くことが生じたため、相続法を改正するということになりました。
具体的な改正点については、
①配偶者の居住権を保護するための方策
②遺産分割等に関する見直し
③遺言制度に関する見直し
④遺留分制度に関する見直し
⑤相続の効力等に関する見直し
⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
そこで、上記①~⑥の中で、今回、特に注意しておいてほしい項目を説明いたします。
2 配偶者の居住権を保護するための方策
(1) 配偶者短期居住権の新設
配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用することができる権利(これを「配偶者短期居住権」と言います。)が新設されました。
これは、相続が発生した後、被相続人(死亡した人)の配偶者が被相続人所有の建物に居住し続けていた場合、他の相続人から賃料を請求されるという不都合を防ぐため新設されました。
もっとも、遺産分割終了までなので、遺産分割により、配偶者以外の相続人が建物を取得した場合、配偶者は、その相続人に対し、賃料を支払わなければならない可能性がありますので、注意が必要です。
(2) 配偶者居住権の新設
配偶者居住権とは、配偶者の居住建物を対象として、終身又は一定の間、配偶者にその使用を認める権利のことです。
これは、遺産分割によって、遺産である建物の所有者が他の相続人(長男など)になったとしても、居住権を被相続人の配偶者に取得させることで、配偶者が生活環境を変えずに暮らしていくことができます。もっとも、配偶者居住権は、遺産分割において、財産として評価されますので、配偶者は、配偶者居住権も相続財産と金銭的に評価されて遺産分割協議を行うことになります。
3 遺言制度に関する見直し
(1) 自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書遺言とは、自筆で遺言書を作成することを言います。そのため、自筆で書かれていない遺言書は原則として無効となります。もっとも、これでは財産を多数持っている人にとっては、記載しなければならない財産が多岐に及び、自筆証書遺言を利用しづらいということになります。
そこで、パソコンなどで作成した自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようにしました。これにより、自筆証書遺言の作成の負担を軽減させることになります。
(2) 公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設
従来は、遺言書を保管してくれる機関としては、公証役場や法律事務所など一部に限られていました。
このような弊害を解消するため、相続法の改正と合わせて遺言書保管法(正式名:法務局における遺言書の保管等に関する法律)を成立させ、法務局が遺言書の保管をするという制度を新設しました。これにより、自筆証書遺言であっても、法務局という公的機関が遺言書の保管を行うことで、遺言書の紛失又は改ざんの危険性の防止を図ることができるようになりました。
4 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外の被相続人の親族(例:長男の嫁など)が、被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与)が創設されました。
改正前においても、似たような制度として「寄与分」というものがありましたが、その対象は共同相続人に限られており、それ以外の者が被相続人に対して療養看護等を行っていた場合には、基本的には寄与分が認められないという不都合が起こっていました。
そこで、共同相続人以外の特別の寄与をした者についても、金銭的な請求をできるようにすることで、上記のような不都合が解消されました。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
最新記事 by 弁護士法人ふくい総合法律事務所 (全て見る)
- 相続問題の弁護士の選び方 - 11月 29, 2024
- 相続人から訴えられたときの流れと注意点 - 11月 24, 2024
- 相続人と連絡が取れないリスクと対処法 - 11月 23, 2024