遺言書の作成について(作成前の財産調査の重要性)

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遺言書を作成しようとお考えの際、「ご自身の財産」をすべて正確に把握されていらっしゃいますでしょうか。

「だいたいのところは分かっている」と思っていても、実際には長年使っていない預金通帳であったり、権利関係が複雑なままになっている不動産など、ご自身でも見落としがちな財産があるものです。

もし、そうした遺産の一部が遺言書から漏れてしまった場合、どうなるでしょうか。せっかくご家族のために作成した遺言書が、かえって残された相続人間のトラブルの原因になってしまうことさえあります。

今回の記事では、私たち福井で多くの相続案件に携わってきた弁護士が、なぜ遺言書作成の前に財産調査が重要なのか、そして具体的に何を調べるべきかについて詳しく解説していきます。

なぜ遺言書作成の前に「財産調査」が必要不可欠なのか?

そもそも、なぜ遺言書を作成する前に、ご自身の財産を正確に調査する必要があるのでしょうか。

その最大の理由は、遺言書に記載されていない財産があった場合、その財産をめぐって相続人の間で争いが起きてしまう可能性があるからです。

遺言書に記載されなかった財産は、遺言書の効力が及ばないため、相続人全員で「この財産をどのように分けるか」を話し合って決めなければなりません(これを「遺産分割協議」といいます)。

せっかく相続トラブルを防ぐために遺言書を用意したにもかかわらず、財産の記載漏れが原因で、かえってご家族に負担をかけてしまう事態は避けたいものです。

ですから、法的に有効で、かつ本当にご家族のためになる遺言書を作成するためには、まずご自身の財産をすべて洗い出し、一覧(財産目録)にまとめる作業が、何よりも重要な第一歩となるのです。

財産調査のポイント①:預貯金

財産調査と聞いて多くの方がまず思い浮かべるのが、「預貯金」ではないでしょうか。

もちろん、現在お使いになっている銀行口座や郵便局の貯金は、すべてリストアップする必要があります。しかし、注意が必要なのは、それだけではありません。

ご自身でも忘れてしまっているような、長期間使っていない銀行口座はありませんでしょうか。例えば、昔に給与振込用として作ったものの、転職などを機に使わなくなった口座や、そのままになっている定期預金などです。

こうした「しばらく手を付けていなかったお金」は、遺言書を作成する際に見落としてしまいがちな財産の典型です。

通帳やキャッシュカードが手元にあるかを確認し、もし見当たらない場合でも、心当たりのある金融機関に問い合わせてみるなど、丁寧に確認作業を行うことが大切です。

財産調査のポイント②:不動産

預貯金と並んで重要な財産が「不動産」です。ご自宅の土地や建物、あるいは駐車場や畑なども含まれます。

不動産については、まず法務局で「不動産登記簿」(登記事項証明書ともいいます)を取得し、現在の権利関係がどうなっているかをご自身の目で確認することが重要です。

なぜなら、不動産は預貯金と違って権利関係が複雑になっているケースがあるからです。

例えば、住宅ローンなど借金を完済したにもかかわらず、不動産に「抵当権」が付いたままになっている場合があります。抵当権とは、万が一ローンの返済が滞った場合に、金融機関などがその不動産を担保として差し押さえることができる権利のことです。

完済していれば抵当権を実行されることはありませんが、登記簿上に抵当権が残ったままだと、将来その不動産を相続したご家族が売却したいと思っても、手続きがスムーズに進みません。

もしそのような抵当権が残っている場合は、遺言書を作成するこの機会に、抵当権を抹消する手続きを行っておくべきです。そうすることで、後々、相続人にご迷惑がかからないようにすることができます。

不動産は権利関係が複雑なことが多いため、特にしっかりとチェックしておきましょう。

財産調査のポイント③:有価証券(株式や投資信託など)

株式や投資信託などの「有価証券」も、重要な財産です。

これらは証券会社に口座を開設して取引されることが一般的ですので、証券会社から定期的に送られてくる「取引残高報告書」や「年間取引報告書」などが手元にないか確認しましょう。

どの証券会社に口座があるか分からない場合でも、ご自宅に届く郵便物や証券会社からのメールなどから手がかりが見つかることもあります。これらも漏れなく財産目録に記載する必要があります。

財産調査のポイント④:生命保険

生命保険に加入している場合、ご自身が亡くなった際に支払われる「死亡保険金」も確認しておくべき項目です。

法律上、死亡保険金は「受取人固有の財産」とされ、原則として遺産分割の対象(相続財産)にはなりません。

しかし、誰を受取人に指定しているかによって、相続人間の公平さが変わってくる可能性もありますし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれる場合があります。

保険証券を確認し、「契約者」「被保険者」「受取人」がそれぞれ誰になっているかを把握し、遺言書を作成する際の参考にすることが重要です。

財産調査のポイント⑤:負債(借金・ローンなど)

財産調査と聞くと、預金や不動産といった「プラスの財産」ばかりに目が行きがちですが、忘れてはならないのが「マイナスの財産」、つまり負債です。

借金やローン、あるいは他人の借金の「保証人」になっている場合(保証債務)なども、相続の対象となります。

もしプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、相続人が「相続放棄」を検討する必要も出てきます。

ご家族が後で困らないよう、金銭消費貸借契約書やローンの返済予定表なども確認し、負債の全体像も正確に把握しておくことが極めて重要です。

 

調査した財産を遺言書にどう記載するか?

このようにしてプラスの財産、マイナスの財産すべての調査が終わったら、いよいよ遺言書にその内容を記載していくことになります。

遺言書を作成する場合には、調査した遺産を特定して記載することが多いです。

もちろん、「すべての遺産を○○○○に相続させる。」といった包括的な記載の仕方も法律上は有効です。しかし、どの財産が具体的にどこにあるのか、相続人全員がすぐに把握できるとは限りません。

そのため、できる限り「○○銀行の預金は長男に」「福井市の自宅不動産は妻に」というように、遺産ごとに特定して記載した方が、残されたご家族にとっては親切な遺言書といえるでしょう。

どの財産を誰に相続させるかが明確に記されていれば、相続が開始した後、ご家族が迷うことなく手続きを進めることができます。

関連記事

・遺言書の書き方

・遺言書の種類

 

まとめ:相続トラブルを防ぐ遺言書は「財産調査」から

今回は、遺言書を作成する前の「財産調査」の重要性について、預貯金や不動産をはじめ、有価証券、生命保険、そして負債といった主なチェックポイントをお伝えしました。

せっかくご家族のことを想って遺言書を作成しても、財産に記載漏れがあれば、それが新たな火種となり、相続トラブルに発展しかねません。

ご自身の財産を正確に把握し、法的に有効で、ご家族が困らない遺言書を作成するには、専門的な知識が必要となる場面も少なくありません。

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