遺産分割協議のポイント

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ご家族が亡くなられ、相続が開始されたものの、「遺産をどのように分ければよいか分からない」「相続人同士で話がまとまらなそうだ」と不安を感じている方がいらっしゃらないでしょうか。

この相続人全員で行う話し合いを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」と呼びます。

私たち弁護士法人ふくい総合法律事務所は、ここ福井の地で、これまで数多くの相続に関するご相談をお受けしてきました。その経験上、この遺産分割協議が円満に進まず、ご家族・ご親族の関係にひびが入ってしまうケースも残念ながら見てまいりました。

この記事では、遺産分割協議とは何かという基本から、協議を始める前に必ず行うべきこと、基本的な分割のルール、そして万が一話がまとまらなかった場合の対処法まで、相続問題に精通した弁護士が分かりやすく解説していきます。

適切な手順と知識を持つことが、円満な解決への第一歩となりますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

そもそも「遺産分割協議」とは?

「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」とは、亡くなられた方(被相続人)が残した相続財産について、相続人の全員が「誰が」「どの財産を」「どれくらい」取得するのかを話し合って決める手続きのことです。

この協議は、相続人全員が集まって直接話し合うのが一番望ましい形です。

しかし、相続人が遠方に住んでいる、あるいは関係性から顔を合わせにくいといった事情もあるでしょう。その場合は、手紙や電話、メールなどでのやり取りによって協議を進めることも可能です。

最も重要な点は、相続人全員が参加し、合意しなければならないという点です。一人でも欠けているか、合意していない人がいると、その遺産分割協議は無効になってしまいます。

また、ご自身で他の相続人と直接話し合いをすることが難しい場合には、弁護士が代理人として協議に臨み、交渉を行うこともできます。

 

遺産分割の流れ(7つのステップ)

遺産分割協議は、やみくもに話し合いを始めても、論点がずれてしまいがちです。効率的かつ正確に進めるため、概ね以下のような7つのステップに沿って進めていくことになります。

ステップ1:相続人の確認

まず、誰が相続人であるかを法的に確定させる必要があります。

なぜなら、先ほども触れたとおり、相続人のうち一人でも参加しないで行われた遺産分割協議は「無効」となってしまうからです。

「家族は全員分かっている」と思っていても、戸籍を調べて初めて、面識のない相続人の存在が判明するケースもあります。

相続人を確定させるためには、以下の2つの作業が必須となります。

1. 亡くなられた方(被相続人)が生まれてからお亡くなりになられるまでの、全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本など)を取り寄せる。
2. その戸籍から判明した相続人全員の、現在の戸籍謄本を取り寄せる。

これらの戸籍を正確に読み解くことで、法的に相続権を持つ人が誰であるかを確定させます。

ステップ2:遺産の範囲の確認

次に、亡くなられた方が残した相続の対象となる遺産(相続財産)をすべて調査し、その範囲を確定させる必要があります。

預貯金、不動産(土地・建物)、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。

相続人全員が「何を分けるのか」という対象財産について共通の認識を持っていなければ、話し合いを正しく進めることはできません。

もしも、「この財産は相続財産に含まれるのか」「あの財産は本当に被相続人のものだったのか」といった点で相続人間に争いがある場合は、遺産分割協議の前提として、裁判所の手続きである「遺産確認訴訟(いさんかくにんそしょう)」などを通じて、法的に遺産の範囲を確定させる必要がある場合もあります。

ステップ3:遺産の評価

ステップ2で確認した遺産について、金銭的な評価を行います。

特に問題となりやすいのは、自宅や土地などの不動産の評価です。

預貯金と違って明確な金額がないため、評価方法をめぐって意見が対立することがあります。

主な評価方法としては、固定資産税評価額や相続税評価額(路線価)、公示価額などを基に算定する方法や、不動産鑑定士に依頼して鑑定評価を行う方法などがあります。

ステップ4:各相続人の具体的取得額の確認

遺産総額について、各相続人が具体的に取得すべき金額(割合)を確認します。

まずは法律で定められた「法定相続分」を前提とします。

その上で、特定の相続人が被相続人から生前に多額の贈与を受けていた(特別受益)場合や、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした(寄与分)相続人がいる場合には、それらを考慮して各相続人の具体的な取得額を調整します。

ステップ5:各財産の分割方法の調整

ステップ4で取り決めた具体的取得額を前提に、個別の遺産を「誰が」「どのように」取得するのか、分割方法を取り決めます。

例えば、「自宅の土地建物は被相続人の妻が取得し、預金は長男・長女が1/2ずつ取得する」という具合です。

このとき、本来取得すべき金額と、実際に取得する財産の価額に差額が生まれることがあります。

その場合には、財産を多く取得した人が他の相続人に対して差額分を金銭で支払う、「代償分割」という方法などで調整していきます。

ステップ6:遺産分割協議書の作成

ここまでのステップで取り決めた全ての内容を書面にした「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、実印を押印します。

この遺産分割協議書が完成した段階で、遺産分割協議は法的に「成立」したことになります。

ステップ7:合意成立後の処理

遺産分割協議書を作成して終わりではありません。

不動産の名義変更(相続登記)や、預貯金の解約・名義変更、代償金の支払いなど、遺産分割協議書に記載された権利関係を実現するための具体的な手続きを行って、すべてが完了となります。

 

遺産分割における「3つのルール」

遺産分割協議の内容については、基本的には相続人全員の合意があれば自由に決めることができますが、法律(民法)では、話し合いのルールとなる考え方が定められています。

これを無視して主張し合うと、協議がまとまらなくなる原因にもなりますので、基本的な「3つのルール」を押さえておきましょう。

基準1:法定相続分(ほうていそうぞくぶん)

「法定相続分」とは、民法で定められた、各相続人が相続できる財産の目安となる割合のことです。
例えば、「配偶者と子供2人」が相続人であれば、配偶者が1/2、子供がそれぞれ1/4ずつ、といった具合です。

遺産分割協議は、必ずしもこの法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。

しかし、もし協議がまとまらず、後の段階で説明する裁判所の「調停」や「審判」になった場合には、この法定相続分が分割の基本的なルールとなります。

基準2:特別受益(とくべつじゅえき)

遺産分割の基準は法定相続分が基本ですが、これを修正する制度も法律で用意されています。その一つが「特別受益」です。

「特別受益」とは、相続人の中に、亡くなられた方(被相続人)から生前に「家を建てるための資金」「事業の開業資金」といった特別な援助(生前贈与)を受けていた人がいた場合に、その利益を考慮する制度です。

簡単に言えば、先にもらった財産(生前贈与)を、相続財産に一度組み戻して(持ち戻して)計算し直し、相続人間の公平を図るためのものです。

例えば、長男だけが多額の生前贈与を受けていた場合、他の相続人との間で不公平が生じないよう、長男の相続分をその分少なく調整することになります。

基準3:寄与分(きよぶん)

もう一つの修正制度が「寄与分(きよぶん)」です。

「寄与分」とは、相続人の中に、亡くなられた方の財産の維持または増加に対して、特別な貢献(寄与)をした人がいた場合に、その人の相続分を増やすことを認める制度です。

例えば、「被相続人の事業(家業)を無給同然で手伝ってきた」「被相続人の介護を一身に引き受けたことで、施設利用料などの支出を抑えることができた」といった場合が考えられます。

ただし、単なる家族としての協力や扶養の範囲とみなされることも多く、法的に「寄与分」として認められるハードルは低くありません。

これらの「特別受益」や「寄与分」を考慮するかどうか、考慮するとしていくらにするのかも、遺産分割協議の重要な論点となります。

【関連記事】

・特別受益とは

・寄与分とは

 

協議がまとまらない場合の「ポイント」

遺産分割協議は、相続人全員の合意を目指す話し合いですが、残念ながらまとまらない場合もあります。

なぜなら、遺産分割においては、単に法律で定められた相続分(法定相続分)といったルールがあるだけでなく、不動産・株式などの評価の仕方、あるいは先ほど触れた「特別受益」や「寄与分」といった個別の事情をどう考慮するかなど、法的に主張すべき点が数多くあるからです。

こうした複雑な論点について、相続人同士がお互いの主張を感情的にぶつけ合ってしまうと、かえって収拾がつかなくなりやすい、という点が紛争になった場合の注意点です。

当事者間での話し合いがこじれてしまうと、次のステップとして、家庭裁判所を利用した「調停(ちょうてい)」や「審判(しんぱん)」という法的な手続きに移行することになります。

「調停」は、裁判所で調停委員という中立な第三者を介して話し合い、合意を目指す手続きです。
「審判」は、調停でも話がまとまらなかった場合に、裁判官が一切の事情を考慮して、遺産の分割方法を最終的に決定する手続きです。

ここで重要になるのが、「もし調停や審判になった場合、どのような展開や結論が予想されるか」という法的な見通しを持った上で、協議を進められることです。

裁判所の手続きになると、解決までに場合によっては数年もかかってしまうこともあります。

感情的な対立を避け、法的な見通しを持って冷静に交渉することが、早期解決の鍵となります。

 

まとめ|遺産分割協議のお悩みは弁護士にご相談ください

今回は、遺産分割協議をスムーズに進めるための基本的な流れとポイントについて解説しました。

遺産分割協議は、まず「相続人」と「遺産」を正確に確定させることから始まります。その上で、「法定相続分」を基本的な基準としつつ、「特別受益」や「寄与分」といった個別の事情を考慮して話し合います。

もし協議がまとまらなくても、感情的になって対立を深めるのは得策ではありません。本論でも触れたとおり、不動産や株式の評価、個別の事情の考慮など、法的な論点は数多くあります。裁判所の「調停」や「審判」になった場合、どのような見通しになるかを冷静に踏まえて対応することが、円満かつ早期の解決への鍵となります。

当事務所では、遺産分割協議に関して以下の2つのパターンでサポート致しております。

①弁護士が代理人として交渉を行う。

②遺産分割協議に際し、事前に調停や審判を見越したアドバイスを行なう。

遺産分割協議に関して、ご不安やお悩みをお持ちになられている方は、お気軽にご相談下さい。

 

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