遺産分割の調停・審判
〇この記事を読むのに必要な時間は約6分16秒です。 
相続人同士での遺産分割協議(話し合い)が、感情的な対立や意見の食い違いでなかなかまとまらない。
あるいは、話し合いに一切参加してくれない相続人がいるために、手続きがまったく進まない。
「このままでは、いつまで経っても遺産分割が終わらないのではないか」
と、大きな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
こんにちは、弁護士の小前田宙です。私たち、弁護士法人ふくい総合法律事務所は、ここ福井の地で、これまで数多くの相続・遺産分割のご相談を受けてまいりました。
遺産をめぐる話し合いがこじれてしまうと、法律的な問題だけでなく、精神的なご負担も大きくなることを日々痛感しています。
しかし、当事者同士での話し合いで解決できない場合でも、法律はきちんと次の手続きを用意しています。
当事者同士での話し合いが難しい場合、家庭裁判所を利用した「調停(ちょうてい)」や、さらには「審判(しんぱん)」という手続きに進むことになります。
今回の記事では、遺産分割協議がまとまらない場合にどうなるのか、調停と審判とは具体的にどのような手続きなのか、そして私たち弁護士がどのようにサポートできるのかを分かりやすく解説していきます。
目次
話し合いの場を裁判所に移す「遺産分割調停」

当事者同士での遺産分割協議がまとまらない場合や、話し合いに参加しない相続人がいる場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることが可能です。
調停とは、裁判のように公開の法廷で行うものではなく、家庭裁判所にある調停室で「調停委員」という中立な第三者を交えて話し合いを進める手続きです。
調停の進行は、通常、相続人が交互に調停室に入り、まずはご自身の主張や希望を調停委員に伝えます。
調停委員はそれぞれの意見を聞き、それを相手方に伝える形で意見交換を進めていきます。
この方法により、相続人同士が直接顔を合わせて感情的に対立することを避けながら、冷静に話し合いを進めることができます。
調停委員は、ただ意見を仲介するだけでなく、相続人全員が納得できるような助言をしたり、客観的な立場から解決案を提案したりして、話し合いがまとまるように調整してくれます。
この調停で話し合いがまとまったら、「調停調書」という公的な文書が作成されます。
この調停調書には法的な拘束力があり、これに基づいて預金の解約や不動産の相続登記(名義変更)などの相続手続きを進めていくことになります。
関連記事
調停でも合意できない場合の「遺産分割審判」
ただし、遺産分割調停は、あくまでも「話し合い」の場です。
調停委員が解決案を提示したとしても、相続人のうち一人でもその内容に合意しなければ、調停を成立させることはできません。このように話し合いがまとまらない場合、調停は「不成立」となります。
そして、調停が不成立となった場合、手続きは自動的に「遺産分割審判」へ移行することになります。
審判とは、当事者間の話し合いで解決するのではなく、家庭裁判所の「家事審判官(裁判官)」が、最終的な遺産の分割方法を決定する手続きです。
家事審判官は、相続人各人の主張や提出された資料はもちろん、それぞれの年齢、職業、生活状況といった一切の事情を考慮して、法律に基づいた判断を下します。
この審判という判断は、判決と同じ効力を持ちます。つまり、当事者の合意がなくても法的な強制力をもって分割方法が決定されるため、その内容には従わざるを得ないことになります。
調停・審判で後悔しないために弁護士ができること
遺産分割の手続きを進める上では、「もし調停や審判になった場合、裁判所はどのような判断を下すか」という法的な見通しを常に見据えておくことが非重要です。
私たち、ふくい総合法律事務所がご依頼を受けた場合には、ご相談いただいた当初から、最終的に「審判」になった場合に予想される判断を具体的にご説明するようにしています。
この見通しを持つことで、調停という話し合いの場においても、審判になった場合に不利にならないような戦略的な主張を展開することができます。
また、場合によっては、話し合いでまとめるよりも、あえて調停や審判の手続きに移行した方が、依頼者様の正当な利益を守れるケースもあります。その際は、どのような利益が考えられるのかを丁寧にお伝えした上で、調停や審判への移行をご提案します。
調停や審判において、調停委員や家事審判官(裁判官)を味方につけるためには、単にご自身の希望や感情をぶつけるだけでは不十分です。
法律を知った上で、ご自身の主張を裏付ける「適切な主張」と証拠の提出を展開することが、納得のいく解決を得るために不可欠なのです。
まとめ
遺産分割協議が当事者同士でまとまらない場合、家庭裁判所の「遺産分割調停」で話し合い、それでも合意できなければ「遺産分割審判」で裁判官に判断してもらう、という流れになります。
調停はあくまで相続人全員の合意を目指す話し合いですが、審判は法的な強制力を持つ決定です。
どちらの手続きを利用するにしても、最終的な審判の着地点を見据えながら、法律に基づいた適切な主張をすることが、ご自身の利益を守るために重要です。
遺産分割の話し合いが進まずにお困りの方、あるいは調停や審判を検討されている方は、ご不安を抱えたままにせず、一度専門家にご相談ください。 私たち、弁護士法人ふくい総合法律事務所は、福井の皆様の相続問題に数多く取り組んでまいりました。ご事情を丁寧にお伺いし、審判まで見据えた最善の解決策をご提案いたします。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
最新記事 by 弁護士法人ふくい総合法律事務所 (全て見る)
- 相続について電話相談できる窓口と注意点 - 11月 17, 2025
- 11月8日(土)の休日相続・遺言無料相談会の受付は終了しました。 - 11月 7, 2025
- 相続の「単純承認」とは?メリット・デメリットと注意点を弁護士が解説 - 10月 30, 2025













