遺留分で家族が揉めないために(遺言作成時の注意点)

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ご自身の生涯をかけて築いてこられた大切な財産を、ご自身の最後の想いとして、残されるご家族が困らないようにしっかりと分け方を決めておきたい。

そのために、遺言書の作成を検討されていらっしゃるのではないでしょうか。

「長年、苦楽を共にしてきた妻に自宅と十分な老後資金を残したい」

「家業を継いでくれる長男に事業用の財産を集中させたい」

「障害のある子の将来が心配なので、他の子より多く財産を渡したい」。

しかし、その大切な「想い」を実現するために作成したはずの遺言書が、もし法律上の配慮を欠いていた場合、かえって残されたご家族の間で「遺留分侵害額請求」という深刻な金銭トラブルを引き起こす火種になってしまう可能性があることは、あまり知られていません。

この記事では、ご自身の想いを法的に確実なものとし、将来のご家族間の「争続」を避けるために、遺言書を作成する際に必ず知っておくべき「遺留分」の問題点と、その具体的な対策について、分かりやすく解説していきます。

 

1. なぜ遺言書がトラブルの原因に?「遺留分」とは

まず大前提として、ご自身の財産をどのように分けるかは、遺言書によって自由に決めることができます。

しかし、この自由には例外があります。それが「遺留分(いりゅうぶん)」という制度です。

遺留分とは、法律が、亡くなった方のご兄弟姉妹「以外」の相続人(つまり、配偶者、お子様、ご両親など)に対し、最低限の財産の取り分を保障するものです。

もし、ご自身の想いに基づいて作成した遺言書が、この「遺留分」を侵害する(最低限の取り分を下回る)内容になっていた場合、その遺言書自体は法的に「有効」です。

しかし、亡くなられた後、財産を十分に受け取れなかった相続人から、財産を多く受け取った相続人に対して、「侵害された遺留分に相当する金銭を支払ってほしい」という「遺留分侵害額請求」がされる法的な原因を作ってしまうことになるのです。

 

2. 遺留分を侵害する遺言がもたらす「3つのリスク」

遺留分をめぐるトラブルは、単に「お金を支払う」という問題だけでは済みません。残されたご家族にとって、主に3つの深刻なリスクをもたらします。

リスク1:財産を受け取った相続人への重い負担

あなたが財産を多く残したいと願った相続人(例えば、ご自身の配偶者やお子様)が、他の相続人から請求を受けることになります。遺留分は原則として「金銭」で支払わなければなりません。
もし「自宅の不動産」しか相続させていなかった場合、その相続人は遺留分を支払うためのお金が用意できず、結果として、あなたが残したかったはずの自宅を売却せざるを得なくなる、といった事態も起こり得ます。

リスク2:ご家族の関係性の断絶

相続をきっかけに金銭トラブルが発生すると、それはご家族間の感情的な対立に発展しがちです。
故人の想いとは裏腹に、残されたご家族の絆が壊れ、その後の関係修復が困難になるケースは、私たちが弁護士として携わる中でも非常に多いのが実情です。

リスク3:調停や訴訟への発展による負担

当事者間での話し合いがまとまらなければ、この問題は裁判所での「調停」や「訴訟」へと発展します。
そうなれば、解決までに長い時間と弁護士費用がかかるだけでなく、ご家族全員が大きな精神的ストレスを抱え続けることになります。

 

3. 将来のトラブルを防ぐための具体的な対策

では、こうした将来の「争続」を避けるためには、遺言書作成時にどのような準備をすればよいのでしょうか。

対策1:遺留分を侵害しない内容で作成する

最も確実な対策は、初めから各相続人の遺留分を侵害しないように財産配分を考慮して遺言書を作成することです。
ご自身の財産全体を評価し、法定相続人は誰か、それぞれの遺留分はいくらになるのかを事前に計算することが不可欠です。

対策2:付言事項(ふげんじこう)を活用する

遺言書には、法的な効力はありませんが「付言事項」としてご自身の想いを書き残すことができます。
「なぜ、このような財産の分け方にしたのか」という理由や、ご家族への感謝の気持ちを具体的に記すことで、遺留分を侵害する内容であったとしても、相続人の感情的な対立を和らげ、トラブルの発生を抑える効果が期待できます。

対策3:生前贈与の注意点を理解する

遺言書の代わりに「生前贈与」で特定の相続人に財産を渡そうと考える方もいらっしゃいます。
しかし、相続開始前(亡くなる前)の一定期間内に行われた贈与などは、遺留分を計算する際の基礎財産に含まれることになります。
したがって、生前贈与が必ずしも遺留分対策になるとは限らず、かえって問題を複雑にする場合もあるため注意が必要です。

対策4:相続人に遺留分を放棄してもらう

相続人本人の意思で、相続が開始される「前」に、家庭裁判所の許可を得て「遺留分の放棄」をしてもらう方法もあります。
ただし、これは相続人本人の自発的な意思に基づく手続きであり、遺言を作成する方が一方的に強制できるものではないため、ハードルは非常に高いと言えます。

 

4. それでも特定の相続人に多く残したい場合の工夫

遺留分を侵害するリスクを理解した上で、それでも「事業承継者である長男に全ての株式を渡したい」「障害のある子の生活のために、どうしても多くの財産を残したい」といった切実なご事情がある場合もあるかと思います。

その場合は、以下のような工夫が考えられます。

工夫1:生命保険の活用

特定の相続人を「受取人」として指定した生命保険金は、原則として遺留分を計算する際の基礎となる財産から除外されます。
これを利用し、遺言書で渡す財産とは別に、保険金という形で実質的に多くの財産を残す準備が可能です。

工夫2:代償金の準備をさせておく

財産を多く受け取る相続人が、将来、他の相続人から遺留分侵害額請求をされたときに、その支払いに困らないための「金銭(代償金)」をあらかじめ準備しておく方法です。
例えば、遺言書で不動産や株式とあわせて、代償金の支払いに充てるための預貯金も相続させる、といった配慮です。

 

ご家族の「争続」を防ぐために、遺言書作成は専門家へ

今回は、将来の相続トラブルを防ぐために、遺言書作成時に注意すべき「遺留分」について解説しました。

遺言書は、ご自身の最後の想いを実現するための大切な手段であると同時に、残されたご家族が円満に相続手続きを進めるための「道しるべ」となるべきものです。

しかし、その遺言書に「遺留分」への法律的な配慮が欠けていた場合、良かれと思って残した遺言書が、かえってご家族間に深刻な金銭トラブル、いわゆる「争続」を引き起こす原因となってしまいます。

ご自身のケースで、どの相続人にどれくらいの遺留分が発生するのか、ご自身の想いを実現しつつ法的な安定性も両立させるにはどうすればよいか、といった判断は、財産の評価も絡むため非常に専門的です。

私たち弁護士法人ふくい総合法律事務所は、ここ福井の地で、将来の相続トラブルを未然に防ぐための遺言書作成サポートにも力を入れております。ご自身の想いを、法的に確実な、そしてご家族の誰もが安心できる形で残すためにも、ぜひ一度、相続問題の専門家である弁護士にご相談ください。

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