相続財産に借金がある場合はどうする?借金の調査方法も解説

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分32秒です。

被相続人の借金は相続の対象となるため、知らずに相続手続きを進めてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれるケースがあります。

借金があった際、どのように調べればいいのか、また借金を相続しない方法はあるのか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、相続財産に含まれる借金の調査方法や借金がある場合の相続方法などについて詳しく解説します。

状況に応じた最適な相続方法を選択するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

 

被相続人の借金は相続財産に含まれる

相続財産には、預貯金や株式・不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や未払金などマイナスの財産も含まれます。

つまり、被相続人の財産を相続する相続人は、被相続人の借金を返済する義務も負うことになります。

しかし相続人が選択できる相続方法にはいくつか種類があり、相続人としての権利を放棄する方法の選択も可能です。

適切な相続方法を選択するためには、被相続人が遺した借金をすべて洗い出し、正確に把握する必要があります。

 

相続財産の借金を調査する方法

相続財産に含まれる借金を調査する方法として、次の3つがあります。
・被相続人の自宅内を調べる
・信用情報機関に情報開示請求する
・郵便受けや留守電を確認する

借金が残されているかどうかは、複数の方法を使って慎重に調べなければなりません。

それぞれの調査方法について、以下で詳しく解説していきます。

被相続人の自宅内を調べる

被相続人の自宅内には、借金に関する重要な書類が保管されている可能性があります。

借金に関する書類とは、たとえば以下のようなものです。
・金銭消費賃借契約書
・借用書
・カード利用約款
・請求書
・督促状
・通帳の引き落とし履歴
・振込証明書
・内容証明郵便や裁判所からの書類

これらの書類のほか、手帳やカレンダーに借り入れ・返済に関する情報が記載されているかも確認しましょう。

信用情報機関に情報開示請求する

銀行ローンやクレジットカード、消費者金融などの借金を確認する際は、信用情報機関に情報開示請求を行います。

信用情報機関とは、個人のクレジットやローンに関する利用情報を収集し、管理している機関です。

日本にはKSC・CIC・JICCと呼ばれる3種類の信用情報機関があり、それぞれ加盟している金融会社が異なります。

信用情報機関 開示請求方法 手数料
KSC
(全国銀行個人信用情報センター)
・インターネット
・郵送
インターネット:1,000円
郵送:1,679円~1,800円
CIC
(シー・アイ・シー)
・インターネット
・郵送
インターネット:500円
郵送:1,500円~1,650円
JICC
(日本信用情報機構)
・郵送 郵送受け取り:1,300円

亡くなった人の情報を相続人が開示請求する場合、申請者の本人確認書類のほか、相続関係を証明する戸籍謄本や法定相続情報一覧図といった書類の提出が必要です。

3種類の信用情報機関すべてに開示請求を行えば、借り入れ状況の大部分を確認できるでしょう。

郵便受けや留守電を確認する

被相続人の借金を調べるには、郵便受けや留守電のメッセージを確認するのも大切です。

すでに滞納が続いている場合、督促状が送られてきたり、請求の電話がかかってきたりするケースが多いです。

これらの確認によって、見落としていた借金の存在を把握できる可能性もあるでしょう。

借金の全貌を把握するためにも、郵便受けの中身や留守電・着信履歴といった細かいところも忘れずにチェックするようにしてください。

 

借金がある場合の3つの相続方法

被相続人に借金がある場合、相続人は3つの相続方法からいずれかを選択する必要があります。
・すべて相続する単純承認
・プラスの財産の範囲で相続する限定承認
・相続する権利を放棄する相続放棄

相続手続きを進めてからのやり直しは困難なため、それぞれの特徴を理解し慎重に判断しましょう。

各相続方法の詳細を、以下で解説していきます。

すべて相続する単純承認

単純承認は、被相続人の借金を含む財産すべてを引き継ぐ相続方法です。

借金はあるものの、プラスの財産の方が明らかに多い場合などに選択します。

単純承認するにあたって、特別な手続きは必要ありません。

相続の開始を知ったときから3ヶ月以内にほかの相続方法を選択する手続きを行わなければ、単純承認したものとみなされます。

プラスの財産の範囲で相続する限定承認

限定承認は、被相続人のプラス財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ相続方法です。

失いたくない財産がある場合や、財産と借金がそれぞれどの程度残されているか把握できない場合などに選択します。

限定承認する場合は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。相続人全員で手続きを行う必要があります。

限定承認手続きは複雑で時間もかかるため、必要に応じて弁護士や司法書士といった専門家への相談を検討しましょう。

相続する権利を放棄する相続放棄

相続放棄は、被相続人の財産および借金を一切引き継がずに放棄する方法です。

多額の借金が残されており、プラスの財産を相続しても到底返済できそうにない場合は、相続放棄を選択しましょう。

相続放棄を行うためには、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述が必要です。

なお、相続放棄が認められると、その相続人ははじめから相続人でなかったものとみなされ、ほかの相続人に相続権が移動する可能性があります。

トラブルを避けるためにも、ほかの相続人に相続放棄する旨を連絡しておくようにしましょう。

 

借金は相続税の債務控除の対象となる

相続において、被相続人が残した借金は相続税の債務控除の対象となります。

具体的には、相続税を計算する際に、被相続人が抱えていた借金を差し引けるため、相続人が支払う相続税額が減少する可能性があります。

ただし、すべての借金が控除の対象となるわけではありません。
・債務控除できる借金
・債務控除できない借金

以下では、控除できる借金とできない借金の種類について確認していきましょう。

債務控除できる借金

債務控除の対象となるのは、主に以下のような借金・債務です。
・金融機関などからの借入金
・連帯債務
・医療費や生活費などの未払金
・未払いの税金や保険料
・経営していた賃貸物件の敷金
・葬式費用

これらの金額は、基本的に相続税を計算する際に正当に控除できます。

また、債務ではないものの、葬式費用も相続税の計算時に相続財産総額から差し引けます。

債務控除できない借金

一方、債務控除できない借金も存在します。
・保証債務(債務者の代わりに第三者が保証する債務)
・団体信用生命保険付き住宅ローン
・金額などが未確定の債務

これらの借金については、相続税の計算において考慮されないため、注意が必要です。

また、被相続人の死亡にあたって購入した墓地や墓石・仏壇費用に関しては、葬式費用には含まれないため債務控除できません。

 

借金を相続すべきか悩んだら専門家に相談しよう

被相続人の借金を相続するかどうかは、非常に重要な問題です。

借金の全額を引き継ぐ、限定承認を選択してリスクを軽減する、あるいは相続放棄によって完全に避けるなど、それぞれの方法には異なる利点とリスクがあります。

借金の調査や相続方法の選択で悩んだら、早めに弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

相続問題に詳しい専門家に相談すれば、個々の状況に応じた最適なアドバイスを提供してくれるでしょう。

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