相続税の配偶者控除とは?計算方法や手続きについて
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分43秒です。
配偶者に対する相続では、配偶者控除(配偶者の税額軽減)という税制上の優遇措置があります。
配偶者控除について、どのような制度なのか、どのくらい相続税が控除されるのか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、配偶者控除の概要や計算方法、手続きの流れについてわかりやすく解説します。
配偶者控除を利用する際の注意点も解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続税の配偶者控除とは?
相続税の配偶者控除とは、配偶者が亡くなり、遺された財産を相続する際に、1億6,000万円もしくは法定相続分までは相続税がかからないという制度です。
ここでは配偶者控除の内容とあわせて、この制度が適用される要件や基礎控除との違いを解説します。
・配偶者が相続する財産は1億6,000万円まで非課税
・1億6,000万円超えていても法定相続分は非課税
・配偶者控除の適用要件
・配偶者控除と基礎控除の違い
各項目について、以下で一つずつ確認していきましょう。
配偶者が相続する財産は1億6,000万円まで非課税
配偶者控除では、配偶者が相続する財産は、1億6,000万円まで非課税となります。
言い換えれば、配偶者が相続する財産が1億6,000万円以内であれば、相続税がかかりません。
一般家庭の相続であれば、配偶者控除が適用された場合、配偶者には相続税が課税されないケースがほとんどでしょう。
1億6,000万円超えていても法定相続分は非課税
配偶者が相続する財産の額が1億6,000万円を超えていても、法定相続分相当額を超えない範囲であれば、非課税となります。
法定相続分とは、民法で定められた法定相続人に対する遺産分割割合の目安です。
たとえば、配偶者と子どもが法定相続人である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもが2分の1となります。
法定相続分である2分の1が1億6,000万円を超える高額な財産であったとしても、配偶者控除を利用すれば配偶者に相続税はかかりません。
配偶者控除の適用要件
配偶者控除を受けるためには、以下3つの要件を満たす必要があります。
・法律上の配偶者であること
・遺産分割の方法が確定していること
・税務署に相続税を申告していること
配偶者控除が適用されるのは、婚姻届を提出していて戸籍に記載されている法律上の配偶者に限られます。
また配偶者控除を受ける際は、遺言書もしくは相続人同士の話し合いなどによって、遺産分割の方法を確定させておく必要があります。
遺産分割方法が確定したら、相続税の申告も忘れずに行いましょう。
配偶者控除と基礎控除の違い
配偶者控除と基礎控除は、いずれも相続税の負担を軽減させる制度ですが、適用される範囲やタイミングには明確な違いがあります。
基礎控除は相続人全員に共通して適用され、相続税計算の最初の段階で「課税価格の合計額」から控除されます。
対して配偶者控除は、法律上の配偶者にのみ適用され、相続税計算で最終的に算出された配偶者の「相続税額」から控除される制度です。
相続税を抑えたい場合には、ふたつの控除の違いを適切に理解して利用することが大切です。
相続税の配偶者控除の計算方法
相続税の配偶者控除の計算式は、以下のとおりです。
配偶者控除額=相続税の総額×下記①、②のいずれか少ない金額÷相続税の課税価格の合計額
①「1億6,000万円」または「課税価格の合計額×配偶者の法定相続割分」のどちらか多い金額 ②配偶者の課税価格 |
配偶者控除額を算出するためには、相続財産の総額や基礎控除額を引いた課税価格、相続税の総額などを計算します。
相続財産の適切な評価や相続税の計算は専門知識がないと困難なケースも多いため、悩んだら税理士や弁護士といった専門家に相談するのが望ましいです。
相続税の配偶者控除を受ける手続き
配偶者控除を受けるためには、相続税の申告をしなければなりません。
相続税の申告には期限が設けられているため、相続発生後の流れを理解し、適切に手続きを進めていく必要があります。
・申告期限と申告場所
・配偶者控除を受けるために必要な書類
・相続税申告の流れ
相続税申告の手続きや配偶者控除の必要書類について、以下で具体的に確認していきましょう。
申告期限と申告場所
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
配偶者控除を受けるには、原則としてこの期間内に相続税申告を行わなければなりません。
申告する場所は、被相続人の死亡時の住所が日本国内にある場合、その住所地を管轄する税務署です。
相続人の住所地を管轄する税務署ではないため、注意しましょう。
配偶者控除を受けるために必要な書類
配偶者控除を受けるための相続税申告では、以下のような書類が必要となります。
・相続税申告書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・遺言書または遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
相続税申告書は、税務署で入手できるほか、国税庁のホームページからもダウンロード可能です。
必要書類が準備できたら、所定の税務署へ提出して申告の手続きを進めましょう。
相続税申告の流れ
一般的な相続税申告の流れは、以下のとおりです。
①遺言書の有無を確認する
②相続人と相続財産を調査し確定させる
③遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
④相続税を計算する
⑤申告に必要な書類を準備する
⑥税務署で相続税を申告する
遺言書がある場合は原則として遺言書の内容にしたがって相続を進めるため、まずは遺言書の有無の確認が必要です。
遺言書がない場合は、相続人全員が参加する遺産分割協議で遺産分割の内容を決定します。
相続税申告の期限に間に合うよう、相続発生後は早めに手続きを進めていくようにしましょう。
相続税の配偶者控除を利用する際の注意点
相続税の配偶者控除には、以下のような注意点があります。
・相続税がゼロになるとしても申告は必要
・二次相続で多くの相続税がかかる可能性もある
配偶者控除を利用して税負担を軽減させる際は、これらのポイントも事前に押さえておきましょう。
それぞれの注意点を、以下で詳しく解説していきます。
相続税がゼロになるとしても申告は必要
配偶者控除を利用して相続税がゼロになるとしても、相続税申告は必ずしなければなりません。
相続税申告は、配偶者控除の要件の一つであり、相続税申告をしなければ控除が適用されないためです。
「控除で納税する必要がなくなるなら申告も必要ない」と勘違いしてしまわないよう、注意してください。
二次相続で多くの相続税がかかる可能性もある
配偶者控除は相続税の負担軽減に効果的ですが、積極的に配偶者に遺産を相続させると、二次相続で多くの相続税がかかってしまう可能性があります。
二次相続とは、相続人となった配偶者が亡くなった際に発生する二度目の相続です。
二次相続では法定相続人が減るため、一次相続よりも基礎控除額が減額されます。
また、配偶者控除が使えなくなるほか、配偶者がもともと所有していた財産も合算されるため、子どもに課される相続税が重くなってしまう場合があるのです。
子どもがいる場合は、二次相続も考慮した上で遺産分割の内容を検討するようにしましょう。
配偶者控除で相続税を抑えたいときは専門家に相談しよう
相続税の配偶者控除は、適切に利用すれば大幅な税負担の軽減が期待できます。
しかし、配偶者控除の適用には要件があり、状況によっては計算が複雑になるケースもあるでしょう。
配偶者控除や相続税対策で悩んだら、まずは税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
専門家は相続の事例に応じた具体的なアドバイスを提供してくれるため、未来の税負担を予測し、適切な対策を講じられるメリットがあります。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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