へそくりに相続税はかかる?相続税申告の注意点

 

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相続税というと、土地や不動産・預金など大きな財産に焦点を当てがちですが、見落とされやすい財産として「へそくり」があります。

内緒でこっそり貯めていたへそくりも、夫が死亡した場合に、相続税の対象となる可能性があるのです。

今回の記事では、へそくりに相続税がかかるケースや、相続税の課税を避ける方法について詳しく解説していきます。

なぜへそくりに相続税がかかってしまうのか、税金を軽減させるためにはどうすべきか、気になっている人はぜひ参考にしてみてください。

へそくりに相続税がかかる場合の要件

へそくりが相続税の対象となるかどうかは、主に誰がどのようにして得たお金かによって異なります。

たとえば、専業主婦が夫からもらった給料をひそかに貯金したへそくりは、妻が工夫して貯めたへそくりであっても、最終的には夫が稼いだ財産として考えられます。

このようなケースでは、夫が亡くなった場合、妻のへそくりは夫から相続したお金とみなされ、相続税の課税対象となるのです。

なお専業主婦のへそくりであっても、結婚時の持参金や結婚前に仕事をしていたときの貯金からへそくりをしていたとしたら、妻の財産と考えられるため相続税はかかりません。

へそくりは共有財産にはならない?

へそくりは婚姻期間中に貯めたお金であるため、共有財産に含まれます。

しかし、相続税の考え方では、夫が稼いだお金は夫の財産、妻が稼いだお金は妻の財産として扱われます。

そのため、夫が稼いだ給料からへそくりを貯めていた場合は、共有財産であっても、相続税申告時には夫の財産として申告しなければなりません。

名義預金もほとんどの場合で相続税の対象となる

妻の名義預金でへそくりを貯めていたとしても、相続税の対象から外れるわけではありません。

名義預金とは、お金を実際に所有している人とは異なる名義の預金です。

たとえば、妻の名義の口座に、夫が稼いだ給料を入金しているケースは名義預金となります。

妻名義の口座でお金を貯めていたとしても、元々は夫の稼ぎであるため、名義預金のお金も夫の財産として相続税の課税対象となります。

へそくりを相続税対象にしない方法

すでにあるへそくりを相続税対象にしない方法として、贈与で受け取る方法があります。

しかし、相続税対象から外れても、一定の金額を超えると贈与税が発生する場合もあるため注意が必要です。

・贈与の形で受け取る

・贈与の場合は贈与税に注意

以下では、贈与としてへそくりを受け取る方法と、贈与税について詳しく解説していきます。

贈与の形で受け取る

夫が健在であれば、贈与によってへそくりを正式に移転すると、相続税が課税されないようにできます。

贈与は口約束でも成立しますが、相続の際に税務調査で指摘される可能性があるため、客観的に証明できるよう証拠を残しておくべきです。

へそくりを贈与した場合には、証拠として、贈与の対象金額や贈与した日付を記載し、夫婦双方が署名捺印をした「贈与契約書」を作成しましょう。

贈与とは?

贈与とは、財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方の承諾によって成立する契約の一種です。

贈与は生前に行われ、贈与された財産は原則として相続税の課税対象外となります。

ただし、贈与された財産には、贈与税が課税される可能性もあるため注意が必要です。

贈与の場合は贈与税に注意

へそくりを贈与する際には、贈与税に注意しておく必要があります。

贈与税は、無償で財産を譲り受けた人、つまり贈与を受けた人が納める税金です。

基本的に、年間で贈与した合計額が110万円以下であれば基礎控除額内に収まるため、贈与税は課税されません。

生前贈与を行うと相続税からは逃れられますが、下手をすると高額な贈与税が課されるケースもあるため、慎重な計画が必要です。

暦年贈与の上限額

個人から贈与を受けられる金額には、基本的に上限はありません。

ただし、1年間に贈与された財産の合計額が110万円を超えた部分に対して贈与税が課税されるため、もらった金額が大きくなるほど贈与税も高額になります。

暦年贈与の上限額を意識しておくと、贈与税を軽減または非課税にする戦略が可能です。

暦年贈与とは

暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与される財産の合計が110万円以下であれば、贈与税が発生しない仕組みを利用した贈与方法を指します。

暦年贈与を理解し、上限額内で贈与を行えば、贈与税の課税を避けた上で財産の移動が可能です。

本来のへそくりの「内緒で貯める」意図とは離れてしまいますが、相続税や贈与税の節税を考えるなら、暦年贈与は理解しておくべき仕組みといえるでしょう。

配偶者特例で相続税を軽減する方法

配偶者に対する相続では、税額が軽減される特例が用意されています。

・1億6,000万円までなら相続税が課税されない

・配偶者の税額軽減の特例を適用する要件

・遺産総額3,600万円以下なら申告不要

特例が適用されれば相続税が大幅に軽減されますが、適用するためには一定の条件を満たさなければなりません。

配偶者特例の概要や適用条件について、以下で詳しく見ていきましょう。

1億6,000万円までなら相続税が課税されない

配偶者が相続する財産については、1億6,000万円までの部分の相続税を非課税とする「配偶者の税額軽減」の特例があります。

相続する財産が1億6,000万円を超える場合であっても、配偶者の法定相続分(民法で定められた相続割合分)までであれば相続税は課税されません。

この特例を適用できれば、多くのケースで配偶者は相続税を無税にできます。

配偶者の税額軽減の特例を適用する要件

配偶者の税額軽減の特例を適用するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

・被相続人(亡くなった人)の戸籍上の配偶者である

・相続税の申告期限までに遺産の分け方が確定している

・相続税申告書を税務署に提出する

まず、配偶者の税額軽減は、戸籍上の配偶者のみに適用される特例です。

相続税の申告期限は被相続人の死後10ヶ月以内であるため、その期限内に相続人間で遺産の分け方を確定させるようにしましょう。

遺産の分け方が決まったら、税務署に相続税を申告することで、配偶者の税額軽減が認められます。

遺産総額3,600万円以下なら申告不要

へそくりまですべて含めても遺産総額が3,600万円に満たない場合、相続税は課税されないため申告は不要となります。

相続税には相続人の人数によって基礎控除額が定められており、基礎控除額以内の遺産総額であれば課税されません。

法定相続人の人数 相続税の基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

なお、被相続人が残した遺産総額が基礎控除額以下であっても、内緒で貯めていたへそくりを含めると基礎控除額を超えるケースでは、申告が必要となるため注意しましょう。

へそくりを含めた財産で相続税申告が必要になったら専門家へ相談しよう

専業主婦のへそくりは、多くの場合で相続税の対象となりますが、節税の手段も存在します。

長年のへそくりで多くのお金が貯まっている場合には、基礎控除額を超えた遺産総額となるケースもあるでしょう。

相続税の申告が必要な場合や、遺産分割で相続人ともめている場合には、早い段階で専門家へ相談するのがおすすめです。

相続人全員の相続税を最小限に抑えたり、相続人同士でのトラブルをスムーズに解決するためには、専門家によるアドバイスを受けるのが最善の策となります。

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