相続の暦年課税とは?メリットや相続時精算課税との違い

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分38秒です。

多額の財産を相続する際、どのように節税を図るかは重要な問題となります。

相続税を軽減させるための方法として、暦年課税による生前贈与を考える人も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、相続税を軽減できる暦年課税とはどのような制度なのか、詳しく解説していきます。

暦年課税のメリットや利用する際の流れ、注意点についても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

暦年課税とは

暦年課税とは、贈与税の課税方法の一つで、1月1日から12月31日までの1年間の贈与額をもとに課税する方法です。

一人当たりの基礎控除額は110万円と規定されているため、1年間で110万円を超える贈与を受けた場合は、金額に応じた贈与税が課税されます。

逆にいうと、1年間で110万円以内の贈与であれば贈与税は課税されません。

暦年課税による基礎控除額以内の生前贈与を活用することで、相続時にかかる相続税を軽減できる可能性があります。

暦年課税の条件

暦年課税の利用には、贈与者・受贈者ともに適用要件は定められておらず、贈与する財産の種類にも条件はありません。

また回数制限も設けられていないため、何度でも暦年課税を利用して贈与できます。

非課税となる基礎控除額は、受贈者一人につき年間110万円です。

1年間に110万円を超えた贈与を受けた場合は贈与税の申告が必要となり、金額に応じた贈与税が課税されます。

暦年課税と相続時精算課税の違い

贈与税の課税方法には、暦年課税のほかに「相続時精算課税」と呼ばれる制度もあります。

暦年課税と相続時精算課税の違いは、以下の表のとおりです。

暦年課税 相続時精算課税
贈与者の適用要件 なし 贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母
受贈者の適用要件 なし 贈与された年の1月1日時点で18歳以上の子または孫
基礎控除額 受贈者一人につき年間110万円 贈与者一人につき2,500万円
贈与回数の制限 なし
※相続時精算課税選択後は使用不可
なし
※一度選択すると相続時まで継続
贈与税の申告 贈与額が年間110万円を超えた場合に必要 金額にかかわらず必要
贈与税の計算方法 (贈与額−110万円)×超過累進課税(10〜55%) (贈与額−2500万円)×一律20%
贈与者が死亡した場合 相続時の加算はなし
※受贈者が相続人の場合、相続開始前3年以内に受けた贈与財産は相続財産に加算
贈与財産は贈与時の価格で相続財産に加算

相続時精算課税による贈与は、2,500万円までであれば贈与税が課税されませんが、贈与者が死亡した際の相続税は別途課税されます。

また贈与者と受贈者それぞれに適用要件が定められており、適用要件を満たす場合は暦年課税と相続時精算課税のどちらかを選択できます。

長期間にわたって少しずつ資産を移動したい人には暦年課税、短期間で多額の資産を移動したい人には相続時精算課税が適しているといえるでしょう。

暦年課税のメリット

暦年課税による贈与の主なメリットは、次の3つです。
・相続税を軽減できる
・複数人に贈与するとそれぞれに基礎控除が適用される
・生前に自らの意思で財産を分割できる

暦年課税にはさまざまなメリットがありますが、とくに相続に関連する節税の利点が注目されています。

各メリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。

相続税を軽減できる

相続税を軽減できるのは、暦年課税の大きなメリットです。

一般的に相続税の額は、相続財産の合計額にもとづいて計算されます。

そのため、相続前に一部の財産を贈与しておくと、相続財産の総額を減少させられるため、相続税の負担を軽減できます。

暦年課税の基礎控除額をうまく利用すれば、複数年にわたり継続的に財産を贈与でき、結果的に相続税の大幅な軽減が期待できるのです。

複数人に贈与するとそれぞれに基礎控除が適用される

暦年課税における基礎控除のメリットは、贈与を受ける人ごとに独立して適用される点です。

たとえば、3人の子どもに年間110万円ずつ贈与を行った場合、合計で330万円の贈与額となりますが、それぞれに基礎控除が適用されるため贈与税は課税されません。

贈与の対象を複数人に増やすと、いっそうの節税効果を実現できます。

生前に自らの意思で財産を分割できる

自らの意思で財産の分割を決められるのも、暦年課税による生前贈与のメリットです。

相続対策をしないまま相続が発生すると、基本的に相続人同士で話し合って遺産分割を行います。

しかし、話し合いが円滑に進むとは限らず、相続人間でのトラブルに発展するケースも少なくありません。

生前に資産を贈与すると、自らが望む方法で家族や親族に財産を分け与えられるため、相続争いを未然に防ぎ、スムーズに資産を渡せるでしょう。

暦年課税を利用する際の流れ

暦年課税を利用して贈与する際の基本的な流れは、以下のとおりです。
①贈与契約書の作成
②資産の受け渡し
③贈与額が110万円を超える場合は贈与税の申告

贈与を行う際は、後のトラブル防止のために、まず贈与契約書を作成します。

贈与契約書には、贈与者と受贈者の情報はもちろん、贈与した財産の内訳や贈与方法を明確に記載しておくといいでしょう。

また、110万円を超える贈与金については贈与税が課税されるため、最寄りの税務署へ申告が必要となります。

申告を忘れてしまうと、延滞税や加算税といったペナルティを課せられる可能性があるので注意してください。

暦年課税で注意すべきポイント

暦年課税を利用する際は、注意点がいくつかあります。
・贈与後の資産管理は受贈者に任せる
・贈与する際は証拠を残す
・相続開始前の3年間は生前贈与しても節税効果がない

誤解やトラブルを避けるためには、適切な手続きで贈与することが重要です。

注意すべきポイントについて、以下で具体的に解説していきます。

贈与後の資産管理は受贈者に任せる

生前贈与を行った後の資産管理は、贈与を受けた受贈者の責任です。

贈与した財産について、贈与者が管理を続けていると、「名義上の贈与だけで実質的な贈与が行われていない」と判断される可能性があります。

贈与した財産については、受贈者の管理下におき、贈与者の介入は避けるようにしましょう。

贈与する際は証拠を残す

贈与を行う際は、贈与の事実を客観的に証明できる証拠を残しておくようにしましょう。

口頭の契約であっても贈与は成立しますが、後に暦年課税を否定されるリスクを回避するためにも、贈与のたびに証拠を残すのが望ましいです。

具体的には、贈与者と受贈者が署名・押印した贈与契約書を2通作成し、双方が1通ずつ保管するのが有効となります。

また、資産の移動に関する書類や、銀行の振込明細書なども贈与を示す証拠となるため、贈与契約書とあわせて保管しておくのをおすすめします。

相続開始前の3年間は生前贈与しても節税効果がない

暦年課税では、相続開始前の3年間に行われた相続人への贈与は、そのまま相続財産に加算されます。

相続税軽減のために生前贈与を行ったとしても、3年以内に贈与者が亡くなってしまうと、節税効果がなくなるため注意が必要です。

暦年課税を利用する際は、早い段階から計画的な贈与を心掛けましょう。

相続税を軽減するなら暦年課税による贈与をうまく活用しよう

財産を引き継ぐ際の相続税を軽減させるなら、暦年課税による贈与が有効です。

暦年課税は受贈者一人につき年間110万円までなら非課税で贈与できるため、相続財産を計画的に贈与できれば相続税を節税できます。

ただし、適切な方法で行わないと贈与とみなされず、相続税を課税されてしまう可能性もあります。

暦年課税による贈与や相続税の対策で悩んだら、専門家へ相談を検討してみてください。

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