遺産相続トラブル事例と防ぐポイント
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分22秒です。
遺産相続は、故人の財産を受け継ぐ重要な手続きですが、トラブルに発展しやすい問題でもあります。
トラブルを防ぐために、どのような対策が必要か悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、遺産相続でよくあるトラブルの事例や、トラブルを防ぐためのポイントについて解説します。
円滑な財産継承を実現するために、ぜひ参考にしてみてください。
目次
遺産相続におけるトラブルは増加している
近年、遺産相続に関するトラブルが増加しています。
司法統計によると、2013年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の総数は12,263件でした。
10年後にあたる2023年の総数は13,872件となっており、年々増加傾向にあると推察できます。
相続は身近な問題でありながら、専門知識を要する複雑な側面もあるため、トラブルが深刻化するケースも少なくありません。
「財産が少ないから大丈夫」などと安易に考えず、正しい知識を身につけて、早めの対策を心がけましょう。
よくある相続トラブルの事例5選
よくある相続トラブルの事例5選は、次のとおりです。
・遺言書の内容が不平等であるケース
・被相続人の養子縁組を把握していなかったケース
・不動産の評価方法や分割方法で揉めるケース
・多額の生前贈与が行われていたケース
・寄与分を主張する人がいるケース
相続トラブルはさまざまな形で発生するため、潜在的なトラブルの可能性は事前に認識しておきましょう。
それぞれの事例について、以下で詳しく解説していきます。
遺言書の内容が不平等であるケース
遺言書の内容について、各相続人の配分が不平等だと感じられる場合、トラブルが発生しやすくなります。
たとえば、子どもが二人兄弟で長男だけに多くの財産を相続させる内容の遺言書があると、次男が不公平感を抱く可能性が高いでしょう。
このようなケースでは、遺言書の有効性や解釈をめぐって争いが起こりやすいです。
また、遺留分侵害額請求権の行使によって、法定相続分の一定割合を取り戻そうとするケースもみられます。
被相続人の養子縁組を把握していなかったケース
被相続人が生前に養子縁組しており、ほかの相続人に知らせていなかった場合は、相続時にトラブルが発生しやすくなります。
養子は実子と同等の相続権をもつことから、突然新たな相続人が現れたような状況になるためです。
養子の存在によって相続分の再計算が必要となり、想定されていた遺産分割と大きく異なる結果になるケースも少なくありません。
また、遺産分割後に養子縁組の事実が発覚すると、相続手続きがやり直しになってしまう可能性もあります。
不動産の評価方法や分割方法で揉めるケース
相続財産に不動産が含まれる場合、その評価方法や分割方法をめぐってトラブルが発生する可能性があります。
不動産は財産の中でも高額であり、評価額の違いが相続分に大きく影響するためです。
たとえば、路線価と実勢価格の差が大きい場合や、各相続人が異なる評価方法を主張する場合などにトラブルが起こりやすくなります。
また、共有財産とするのか現金に換えて分割するかといった分割方法の選択でも、相続人同士で揉めるケースがあります。
多額の生前贈与が行われていたケース
被相続人から多額の生前贈与が行われていた場合、相続トラブルに発展するケースがあります。
生前贈与とは、存命中に自らの意思で財産を他者に無償で与えることです。
生前贈与が行われていると、相続時の遺産総額に影響を与えるため、不公平と感じる相続人もいるでしょう。
このようなケースでは、生前贈与も相続財産とみなして遺産分割で調整する「特別受益の持ち戻し」ができます。
しかし、生前贈与を受けた相続人が特別受益の持ち戻しに応じるとは限らないため、相続人間で意見の相違が生じやすいです。
寄与分を主張する人がいるケース
相続時に寄与分を主張する人がいる場合も、トラブルになりやすいケースといえます。
寄与分とは、被相続人の財産形成や維持に特別な貢献をしたと認められる場合に、その貢献度に応じて遺産を分配する制度です。
たとえば、被相続人の介護をしていた場合や、被相続人の事業を手伝っていた場合などに寄与分が認められる可能性があります。
しかし、寄与分が認められるのは簡単ではなく、客観的な証拠を揃えて主張しなければなりません。
遺産の取り分が減ってしまうのをよく思わない相続人から理解が得られず、トラブルに発展するケースもあるでしょう。
相続トラブルを未然に防ぐためのポイント
相続トラブルを未然に防ぐために押さえておくべきポイントは、主に次の3つです。
・適切な内容の遺言書を作成する
・財産調査の際は財産目録を作成する
・法定相続人と法定相続分を把握しておく
相続トラブルは、事前の準備や適切な対応によって防げる可能性があります。
スムーズな相続を実現するために、相続トラブルを防ぐポイントを以下で一つずつ確認していきましょう。
適切な内容の遺言書を作成する
遺言書の作成は、相続トラブルを防ぐ効果的な方法の一つです。
適切な内容の遺言書を作成しておけば、被相続人の意思を明確に示せるため、相続人間の争いを防げます。
遺言書は法的に有効な形式で作成する必要があるため、自筆証書遺言や公正証書遺言など適切な形式を選択しましょう。
また、特定の相続人だけを優遇するとトラブルの原因となりかねないため、公平性や遺留分を考慮した内容にする必要があります。
遺言書の作成に不安があれば、弁護士や司法書士といった専門家に依頼するのもおすすめです。
財産調査の際は財産目録を作成する
財産調査を行う際は、財産目録を作成しましょう。
財産目録とは、被相続人の保有財産を一覧でわかるようにまとめたものです。
相続財産の全体像が明確になれば、公平な遺産分割の基礎となるため、相続人間のトラブル防止につながります。
財産目録には、不動産・預貯金・有価証券・貴金属・車両などの財産のほか、借金などの債務も含めて記載します。
作成した財産目録は、相続人全員で共有し、内容について合意を得ておくのが望ましいです。
法定相続人と法定相続分を把握しておく
相続トラブルを防ぐために、民法で定められた法定相続人と法定相続分は正確に把握しておく必要があります。
法定相続人とは、被相続人の遺産を受け取る権利をもつ人です。
配偶者は常に相続人となり、配偶者以外は子ども・直系尊属(父母や祖父母)・兄弟姉妹の順で相続人となります。
法定相続分は、各相続人が遺産相続できる割合を指し、誰が法定相続人となるかによって異なります。
たとえば、配偶者と子どもが相続人である場合は、配偶者が2分の1・子どもが2分の1です。
必ず法定相続分のとおりに配分しなければならないわけではありませんが、公平な遺産分割の基準として押さえておきましょう。
遺産相続のトラブルで悩んだら弁護士に相談しよう
遺産相続のトラブルは複雑で感情的な側面も絡むため、当事者だけで解決するのは困難なケースもあります。
相続人間で意見が食い違っている場合や、揉め事になりそうな場合は、専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は遺言書の作成支援や財産調査のアドバイス、相続手続きの代行など、幅広いサポートを提供してくれます。
また、相続人との交渉の代理も可能なため、相続問題をスムーズに解決できる可能性が高まります。
相続に関する不安があれば、早めに弁護士への相談を検討してみてください。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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