相続預金の引き出し方|必要な書類は?
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分44秒です。
銀行の預金口座は、ほとんどのケースで相続財産に含まれます。
しかし、相続時にどのような手続きをすれば預金を引き出せるのか、詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、相続開始後の預金口座の扱いや、凍結を解除する手続きの流れについて解説していきます。
事前に預金を引き出す方法と、生前にできる口座凍結の対策についても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続開始後の預金口座の扱いはどうなる?
預金口座の名義人が亡くなり銀行がその旨を把握すると、財産保護の観点から預金口座は凍結されます。
凍結された口座の預金は、家族や親族であっても勝手に引き出すことはできません。
しかし、銀行で所定の手続きを行えば、口座の預金を引き出せるようになります。
口座が凍結された状態を長引かせないためにも、早めに相続手続きを進めるようにしましょう。
相続預金の口座凍結から引き出しまでの流れ
相続開始後、凍結された預金口座からお金を引き出す際は、次の流れで手続きを進めていきます。
・1 銀行に連絡する
・2 手続きに必要な書類を準備する
・3 銀行に書類を提出し解約または名義変更を行う
とくに必要書類の準備には時間がかかるため、事前にしっかり押さえておきましょう。
各工程の手続きについて、以下で詳しく解説していきます。
1 銀行に連絡する
まずは、被相続人の預金口座がある銀行に連絡して、相続の開始を知らせましょう。
窓口に出向いて報告することも可能ですが、手間のかからない電話連絡がおすすめです。
銀行への連絡によって、凍結解除手続きの案内が受けられます。
凍結解除に必要となる書類は相続状況や銀行によって異なる可能性があるため、事前に確認しておくようにしましょう。
2 手続きに必要な書類を準備する
銀行への連絡が済んだら、凍結解除の手続きに必要な書類を準備します。
・遺言書がある場合の必要書類
・遺産分割協議書がある場合の必要書類
・遺言書と遺産分割協議書がない場合の必要書類
以下では、相続のケース別に主な必要書類を解説していきます。
なお、提出する書類は相続状況などによって異なるため、実際に準備する際は手続き先の銀行に確認するようにしてください。
遺言書がある場合の必要書類
被相続人の遺言書がある場合、一般的に以下の書類の提出を求められます。
・通帳
・遺言書
・家庭裁判所の検認済証明書
・被相続人の戸籍謄本
・相続人を確認できるすべての戸籍謄本
・預金を相続する人の印鑑証明書
遺言執行者がいる場合は、上記に加えて遺言執行者の印鑑証明書も必要です。
遺言書は基本的に原本の提出となるため、提出時に返却希望の旨を伝えるようにしましょう。
遺産分割協議書がある場合の必要書類
遺言書がなく遺産分割協議書がある場合の主な必要書類は、以下のとおりです。
・通帳
・遺産分割協議書
・被相続人の戸籍謄本
・相続人を確認できるすべての戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・預金を相続する人の印鑑証明書
遺言書が残されていない場合は、相続人全員が参加する遺産分割協議で財産の分け方を話し合います。
遺産分割協議が成立した際は、合意に至った内容を記載した「遺産分割協議書」を作成し、提出書類として準備しましょう。
遺言書と遺産分割協議書がない場合の必要書類
遺言書も遺産分割協議書もない場合は、複数の相続人で相続する「共同相続」となります。
共同相続する際に必要となる主な書類は、以下のとおりです。
・通帳
・被相続人の戸籍謄本
・相続人を確認できるすべての戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
共同相続を希望しない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が預金を相続するのか決定する必要があります。
3 銀行に書類を提出し解約または名義変更を行う
必要な書類をすべて揃えたら、銀行窓口に提出しましょう。
不備や不足がなければ、10日から2週間程度で凍結解除されるのが一般的です。
口座を解約する場合は、別の口座を指定することで預金が振り込まれます。
名義変更する場合は、新しい名義人の口座として継続利用できるため、いつでも預金の引き出しができるようになります。
凍結解除手続き以外で相続預金の引き出しを行う3つの方法
相続が開始して銀行が把握すると被相続人の口座は凍結されますが、次のような方法であれば預金を引き出せます。
・生前に本人の同意により引き出す
・亡くなった後にほかの相続人の同意を得て引き出す
・相続預金の払戻し制度を使用して引き出す
凍結解除の手続きを行う前に預金を引き出したい事情がある場合は、これらの方法を検討しましょう。
具体的な方法について、以下で一つずつ解説していきます。
生前に本人の同意により引き出す
口座名義人の同意があれば、生前に家族などの代理人が預金を引き出せます。
委任状や本人確認書類を持参して銀行窓口に提出すると、名義人の同意を得ていると証明した上で出金が可能です。
キャッシュカードを預かってATMで預金を引き出すことも可能ですが、名義人の同意の証明が難しいという注意点があります。
相続開始後のトラブルを防ぐためには、委任状の写しを残せる窓口での出金が推奨されます。
亡くなった後にほかの相続人の同意を得て引き出す
口座名義人が亡くなった後でも、暗証番号がわかる場合はATMで預金を引き出せます。
しかし、本来であれば遺産分割前に相続財産となる預金に手を付けるのは望ましい行為ではありません。
どうしても引き出す必要がある場合は、ほかの相続人全員の同意を得た上で引き出し、通帳への記帳も行っておきましょう。
なお、被相続人に借金がある場合、預金を引き出した時点で借金も含めて相続するとみなされる可能性があるため注意が必要です。
相続預金の払戻し制度を使用して引き出す
遺産分割前であっても、相続預金の払戻し制度を利用することで預金を引き出せます。
相続預金の払戻し制度とは、相続人が生活費や葬儀費用などの支払いでお金が必要な際に、一定額の預金を引き出せる制度です。
家庭裁判所を経由せずに銀行窓口で直接払戻しが受けられるのは、以下の計算式で求められる金額までとなります。
相続開始時の預金額(口座・明細基準) × 3分の1 × 払戻しを行う相続人の法定相続分 |
ただし、同じ金融機関からの払戻しは150万円までが上限です。
相続開始後、遺産分割前に一部の預金を引き出したい場合は銀行窓口で相談してみましょう。
相続預金の口座凍結に備えた生前にできる対策
相続預金の口座凍結に備えて生前にできる対策として、以下のような内容が挙げられます。
・遺言書を作成する
・管理している預金口座の一覧表を作成する
・できるだけ少ない口座で預金を管理する
相続により口座が凍結され、相続人はすぐに預金を引き出せなくなってしまいます。
遺言書で預金を相続させたい人を指定したり口座の一覧表を作成したりすることで、相続人の手続きの負担を軽減できるでしょう。
また、管理する預金口座の数をできるだけ少なくしておけば、相続手続きを最小限に抑えられます。
相続預金の引き出しに関する疑問やトラブルは弁護士に相談しよう
相続預金の引き出しに関する手続きでは、状況に応じた適切な対応が求められます。
相続人同士での意見の対立や財産の使い込みなど、個別のケースによって異なる問題が発生する可能性があるためです。
相続預金の取り扱いや相続トラブルで悩んだら、専門家である弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は問題解決のためのアドバイスを提供するだけでなく、相続手続き全般のサポートも可能です。
相続手続きをスムーズに進めるためにも、早い段階で弁護士への相談を検討してみてください。
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