相続の財産調査の対象は?自分で行える?
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分30秒です。
相続における財産調査は、亡くなった人の財産を把握し、適切な遺産分割を行うために欠かせない手続きです。
しかし、財産調査とはそもそもどのようなものなのか、またどのように調査すればいいのかわからず悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、財産調査の対象となる相続財産や、具体的な調査方法を解説していきます。
相続で財産調査が重要とされる理由についても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続の財産調査とは
相続の財産調査とは、亡くなった人が残した財産のすべてを調査し、確定させる手続きです。
身内が亡くなり相続が発生すると、遺産分割や相続税の申告を行うために、相続財産を調査する必要があります。
相続人が把握していなかった財産が隠されているケースもあるため、すべてを洗い出すのは簡単ではありません。
しかし、財産を確定させなければその後の相続手続きを進められないため、財産調査は入念に行う必要があります。
財産調査の対象となる相続財産
財産調査の対象となる相続財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。
・プラスの相続財産
・マイナスの相続財産
財産調査を行う際は、故人が残したすべての資産と負債を把握するようにしましょう。
具体的な財産の種類について、以下で解説していきます。
プラスの相続財産
プラスの相続財産とは、亡くなった人が所有していた資産を指します。
主な財産の種類は、以下のとおりです。
・現金
・預貯金
・有価証券
・不動産
・自動車
・貴金属
・骨董品
これらの金銭的価値があるものはすべてプラスの相続財産となり、金額に応じて相続税が課税されます。
また亡くなった人が所有していた借家権・借地権・商標権などの権利自体も、相続財産の一つです。
なにがプラスの財産となるのかわからない場合には、専門家に相談して確認してもらうのが確実でしょう。
マイナスの相続財産
マイナスの相続財産とは、亡くなった人が負っていた負債を指します。
よくあるマイナスの相続財産の種類として、以下のようなものが挙げられます。
・借金
・連帯保証人としての債務
・住宅ローン
・未払いの税金
・未払いの治療費
プラスの相続財産の総額を、マイナスの相続財産の総額が上回るケースも考えられるため、必ず確認するようにしましょう。
なお、マイナスの相続財産には含まれませんが、葬儀費用は基本的に相続税の課税対象の財産から控除できます。
葬儀にかかった費用の領収書は、保管しておくのがおすすめです。
相続において財産調査が重要となる理由
相続において財産調査が重要となる理由には、主に次の3つが挙げられます。
・相続人が遺産を分割するため
・相続放棄が必要か判断するため
・相続税申告と納税を正確に行うため
正確な財産調査を行うと、相続人間のトラブルや税務上の問題が発生するのを防げます。
財産調査が重要となる3つの理由について、以下で一つずつ見ていきましょう。
相続人が遺産を分割するため
相続人が複数いる場合、各相続人の取り分を決定するためには、相続財産を正確に把握する必要があります。
財産調査を正しく行えば、相続財産の内容と価値が明確になり、遺産分割をスムーズに進められます。
後から隠れていた財産が発覚すると、その財産をどのようにわけるかを再度相続人全員で話し合わなくてはなりません。
遺産分割で余計な手間や時間をかけないために、財産調査が重要となるのです。
相続放棄が必要か判断するため
財産調査を行ってすべての財産が明確になると、相続放棄が必要かどうかを適切に判断できます。
相続放棄とは、相続人が財産を相続する権利を放棄する手続きです。
相続財産には、プラスとなる財産だけでなく借金などのマイナスの財産も含まれます。
マイナスの財産の割合が多い場合は、相続放棄を検討する必要があるでしょう。
相続放棄の熟慮期限は相続開始を知ったときから3ヶ月以内となっているため、早い段階で財産調査を進めておく必要があります。
相続税申告と納税を正確に行うため
財産調査は、相続税の申告と納税を正しく行う上で非常に重要です。
相続税は相続財産の総額にもとづいて算出されるため、すべての財産が確定していなければ正しい計算ができません。
また申告後に新たな財産が見つかると、申告漏れとして追徴税が課される恐れがあります。
本来納める必要のない税金が課されるリスクを避けるためにも、相続時の財産調査は怠らないようにしましょう。
相続財産調査を自分で行う方法
相続財産調査を自分で行う方法について、次の財産別で解説します。
・預貯金の調査方法
・有価証券の調査方法
・不動産の調査方法
・借金の調査方法
財産調査は手間がかかるため専門家に依頼するのも一つの手段ですが、自分で行うことも可能です。
それぞれの財産をどのように調査するのか、以下で詳しく確認していきましょう。
預貯金の調査方法
預貯金の調査では、まず亡くなった人の所有物に金融機関の通帳やキャッシュカードがないかを確認します。
遺品整理時に知らない銀行口座が発見されるケースは多く、金融機関からの郵便物が届いていないかも含めて入念なチェックが必要です。
通帳やキャッシュカードが見つからなかった場合でも、直接金融機関に問い合わせれば口座情報や残高を開示してくれる可能性があります。
また、近年ではインターネット口座で預金を管理している場合もあるため、亡くなった人のスマートフォンやパソコンから資産に関する情報を探すのも大切です。
有価証券の調査方法
株式などの有価証券を調査する際は、まず取引のある証券会社・信託銀行からの郵便物の有無を確認します。
株式を保有している場合、口座のある金融機関から定期的に取引関連の報告書が送付されます。
郵便物が見つかったら該当の金融機関に連絡し、亡くなった人の死亡日の残高証明書を発行してもらいましょう。
なお郵便物が見つからない場合でも、証券保管振替機構に開示請求を行えば、亡くなった人が取引していた証券会社を特定できます。
不動産の調査方法
不動産の調査では、まず亡くなった人の自宅に固定資産税の納税通知書や課税明細書、権利証など不動産に関する資料があるかを確認します。
すべての不動産を明らかにするには所有不動産を一覧にした「名寄帳」を取り寄せるのが確実です。
名寄帳は不動産がある市区町村の役場で確認できますが、不動産が各地に点在している場合は各自治体でそれぞれ申請する必要があります。
借金の調査方法
借金を調査する際は、まず借用書や借入残高を示す書類、消費者金融からの郵便物などがあるかを確認します。
銀行口座から毎月定額が引き落とされている履歴があれば、借金やローンの返済である可能性が高いです。
借金の借入先がわからない場合、全国銀行個人信用情報センター・JICC・CICなどの信用情報登録機関に問い合わせることで確認できるケースもあります。
後から借金が発覚すると返済義務を負うリスクがあるため、借金の有無は徹底的に調べておくようにしましょう。
相続財産調査で悩んだら専門家に相談しよう
財産調査は相続において重要な手続きの一つですが、すべての財産を自分で調べるには相応の手間と時間がかかります。
「財産調査にかける時間がない」「どこまでが相続財産に含まれるのかわからない」などの悩みがあれば、専門家に相談するのをおすすめします。
弁護士や税理士などの専門家に依頼すれば、財産調査やその後の相続手続きを効率的に進めるためのサポートを受けられるでしょう。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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