相続登記の登録免許税とは?計算方法や納付方法について解説
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分41秒です。
不動産の所有者が亡くなった際は、相続人に名義変更する「相続登記」という手続きを行います。
相続登記をする際は「登録免許税」がかかりますが、この登録免許税がどのような税金なのか、またどのように計算すればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、相続登記の登録免許税の概要や計算方法、納付方法などについてわかりやすく解説します。
登録免許税が免除されるケースについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続登記の登録免許税とは
相続登記における登録免許税とは、相続によって不動産の所有権を変更する際に支払う税金です。
相続登記は法改正によって令和6年4月1日から義務化されているため、不動産を相続する際は忘れずに行う必要があります。
税率はケースによって異なりますが、相続人が相続登記を行う際にかかる税率は、固定資産税評価額の0.4%です。
遺言書によって相続人以外の人が不動産を相続する場合の税率は、固定資産税評価額の2%となります。
なお、登録免許税は相続税とは異なるため、相続税の申告・納付をした人であっても相続登記時に登録免許税がかかります。
相続登記の登録免許税の計算方法
相続登記の登録免許税の計算は、次の流れで行います。
・相続した不動産の評価額を調べる
・課税標準額を算出する
・課税標準額に登録免許税の税率をかける
・100円未満を切り捨てる
登録免許税の税額は自動で算出されるものではないため、必要書類を準備して自分で計算しなければなりません。
計算方法の各工程について、以下で具体的に解説していきます。
相続した不動産の評価額を調べる
登録免許税を計算するには、不動産の評価額(固定資産税評価額)を調べる必要があります。
まずは不動産の評価額を確認できる書類として、「固定資産税課税明細書」もしくは「固定資産評価証明書」を準備しましょう。
固定資産税課税明細書は、毎年4〜6月頃に送られてきます。
固定資産税の納税通知書に同封されているため、被相続人の郵便物を確認し、最新のものを探してみてください。
もし課税証明書が見つからない場合には、役所で固定資産評価証明書を取得します。
書類上に「評価額」もしくは「価格」として記載されている数字が、不動産の評価額となります。
課税標準額を算出する
不動産の評価額が確認できたら、課税標準額を計算します。
課税標準額は、相続登記を行うすべての不動産の評価額を合計し、1,000円未満を切り捨てた金額です。
たとえば、評価額1,217万5,621円の建物と、評価額2,310万1,078円の土地の相続登記を行うとします。
この場合、合計した評価額は3,527万6,699円となり、1,000円未満を切り捨てた3,527万6,000円が課税標準額となります。
課税標準額に登録免許税の税率をかける
課税標準額が算出できたら、次はその額に登録免許税の税率をかけます。
相続人が相続登記を行う場合、登録免許税に適用される税率は0.4%です。
課税標準額が3,527万6,000円の場合、「3,527万6,000円×0.4%=14万1,104円」が登録免許税の金額となります。
なお、相続人以外の人が遺贈によって不動産を取得した場合、税率は2%となるため注意が必要です。
100円未満を切り捨てる
登録免許税額が計算できたら、納税額の調整として、最後に100円未満の金額を切り捨てます。
先ほど挙げた例であれば、最終的な登録免許税の納税額は「14万1,100円」です。
100円未満の端数がなければ、切り捨ての計算は必要ありません。
相続登記の登録免許税が免除されるケース
相続登記を行う際、特定の条件を満たしていれば登録免許税が免除される可能性があります。
登録免許税が免除されるのは、次の2つのケースです。
・相続登記前に相続人が亡くなった場合
・相続する土地の評価額が100万円以下の場合
以下では、登録免許税が免除される2つのケースについて、それぞれ解説していきます。
相続登記前に相続人が亡くなった場合
一次相続で土地を相続したものの、相続登記が完了する前に亡くなり、その相続人が二次相続で土地を取得した場合、一次相続の登録免許税が免除されます。
この免税措置を受けられるのは、以下の要件を満たしているケースです。
・相続または相続人が遺贈によって土地の所有権を取得したこと
・当該土地を取得した者が相続登記を行う前に死亡し、死亡した者の相続人が当該土地を取得したこと
・平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までに相続登記を行うこと
なお、免税措置を受けるためには、申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載する必要があるので注意しましょう。
相続する土地の評価額が100万円以下の場合
相続する土地の評価額(固定資産税評価額)が100万円以下の場合、相続登記にかかる登録免許税が免除されます。
この免税措置においても、令和7年3月31日までに行われる相続登記が対象となります。
100万円以下の土地を相続した際は、期限内に相続登記手続きを行っておくようにしましょう。
なお、免税措置を受けるには、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と申請書に記載が必要ですので注意してください。
相続登記の登録免許税の納付方法
相続登記の登録免許税を納付する方法には、主に次の3種類があります。
・現金で納付
・収入印紙で納付
・オンラインで納付
書面申請であれば現金もしくは収入印紙、電子申請であればオンラインでの納付が可能です。
それぞれの納付方法について、以下で詳しく確認していきましょう。
現金で納付
現金による登録免許税の納付方法は、以下のとおりです。
1.金融機関もしくは郵便局の窓口で納付書をもらう
2.必要事項を記載し、金融機関・郵便局の窓口で納税する
3.申請書に領収証書の原本を貼り付け、法務局へ提出する
法務局の窓口では直接現金での納税ができないため、金融機関を通して納税します。
納付書に記入する税目番号は、登録免許税の場合「221」と記載しましょう。
税務署番号は、管轄の税務署に問い合わせて確認するようにしてください。
収入印紙で納付
登録免許税の納税額は、収入印紙による納付も可能です。
所定の金額の収入印紙を、申請書の左上に貼り付け、収入印紙の下に納付金額を記載します。
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストア、法務局などで購入できます。
高額な収入印紙を購入したい場合、売り場によっては用意できない可能性もあるため、郵便局で購入するのが確実です。
オンラインで納付
相続登記の手続きを電子申請で行った場合、インターネットバンキングやモバイルバンキング、ATMを利用したオンライン納付が可能です。
電子申請が完了した際は、収納機関番号・納付番号・納付期限といった納付情報が発行されます。
これらの納付情報を忘れないよう手元に控えておき、画面上の指示に従ってオンライン納付を行いましょう。
電子申請・納付の詳しい操作方法は法務局のホームページで案内されているため、オンライン上で手続きを進めたい人は確認してみてください。
不動産を相続した際の登録免許税で悩んだら専門家に相談しよう
不動産を相続した際は、相続登記時に登録免許税がかかります。
もし計算方法に疑問がある場合や、免税措置の対象となるのか悩んだ場合は、税理士、司法書士等の専門家に相談するのがおすすめです。
専門家の助言を得られれば、適切な書類の準備と税額計算ができるほか、免税措置の適用要件に該当しているかどうかも正確に判断できます。
相続手続きをスムーズに進めるためにも、困ったことがあれば一度専門家に相談してみてください。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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