相続における遺言書の作成方法|どのような効果がある?

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分24秒です。

遺言書は、亡くなった人が自分の財産を、誰にどれだけ相続させるかの意思表示をするために作成される書面です。

しかし、遺言書によって何を指定できるのか、具体的にどのような効力があるのかわからないという人も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、相続における遺言書の効力について詳しく解説します。

遺言書が無効となってしまうケースや、有効な遺言書を作成するポイントについても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続における遺言書の効力

遺言書の主な効力は、以下のとおりです。
・特定の相続人に渡す財産の指定
・相続人ではない人に財産を遺贈
・遺産分割方法の指定や遺産分割の禁止
・特定の相続人の廃除
・非嫡出子の認知
・未成年後見人の指定
・遺言執行者の指定
・財産の遺贈寄付

有効な遺言書がある場合は、原則としてその内容に従わなければならないため、相続が発生した際は、まず遺言書が残されているかどうかを確認しましょう。

具体的にどのような効力があるのか、以下で詳しく解説していきます。

特定の相続人に渡す財産の指定

遺言書では、特定の相続人に渡す財産を指定できます。

複数の相続人がいる場合でも、一人の相続人にすべての財産を渡すといった内容にすることも可能です。

しかし、相続人には「遺留分」という最低限の遺産取得分が保障されており、遺留分の侵害があった場合は遺留分侵害額請求による取り戻しができます。

不平等な遺言は相続人間のトラブルを引き起こす原因にもなりうるため、遺言書で相続分を指定する際は遺留分にも配慮しましょう。

相続人ではない人に財産を遺贈

遺言書を作成すると、相続人ではない人に財産を遺贈できます。

たとえば、孫・友人・内縁の妻などは通常であれば相続人に含まれませんが、遺言書で指定すれば遺贈が可能です。

相続人以外の人に財産を遺したい場合には、遺言書への記載を検討しましょう。

なお、遺贈を検討する際も、相続人の遺留分を侵害しないよう気をつける必要があります。

遺産分割方法の指定や遺産分割の禁止

遺言書によって、遺産分割方法の指定や遺産分割の禁止ができます。

たとえば「現金は均等に分割し、不動産は売却して分配する」といった、具体的な方法の指定が可能です。

また、相続開始から5年を超えない期間に限り、遺産分割の禁止ができます。

遺産分割の禁止については、相続人間でのトラブルが予測できる場合などに、冷却期間を設けられるメリットがあります。

特定の相続人の廃除

遺言書には、特定の相続人を廃除する旨を記載できます。

相続人の廃除は、相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行などがあった場合に適用されます。

廃除事由が認められ相続権を失った人は、被相続人の財産を一切相続できません。

非嫡出子の認知

遺言書では財産に関する処分だけでなく、非嫡出子の認知も可能です。

非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを指します。

非嫡出子は相続人に含まれないため財産を相続する権利は基本的にありませんが、認知をすると相続人として財産を取得する権利を与えられます。

生前に認知すると揉めごとになりそうな場合は、遺言書による認知を検討しましょう。

未成年後見人の指定

遺言書により、子どもの未成年後見人を指定できます。

未成年後見人とは、未成年者の法律行為や財産管理を代理で行う法定代理人です。

未成年の子どもがいて、自分が亡くなった後に親権者が不在になってしまう場合などに遺言による指定を行います。

遺言執行者の指定

遺言書では、遺言執行者の指定が可能です。

遺言執行者は遺言内容を実行する権利と義務をもち、遺言書に沿って財産目録を作成したり、財産の名義変更手続きを行ったりします。

未成年者や破産者でなければ誰でも遺言執行者に指定できますが、スムーズに遺産分割を行うためには弁護士や司法書士といった専門家に依頼するのが推奨されます。

財産の遺贈寄付

遺言書の作成によって、財産の一部またはすべてを遺贈寄付できます。

遺贈寄付とは、遺言でNPO法人・公益法人・学校法人などの法人や団体に財産を譲ることです。

財産を渡す相手がいない場合や、社会貢献したいと考えている場合は、遺贈寄付を検討してみるといいでしょう。

 

遺言書が無効となるケース

遺言書を作成しても、いくつかの要因によって無効となってしまうケースがあります。

まず、遺言書には、主に自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言を作成する場合、全文が遺言者本人の自筆でなければなりません。

パソコンで作成したり、日付の記載や押印がなかったりすると無効になってしまうため注意が必要です。

また、公正証書遺言の場合に、無効になるのは認知症等により遺言能力が無いまま公正証書遺言が作成された場合等です。

秘密証書遺言は内容を公開しないまま公証役場で認証してもらう遺言書で、実務上あまり利用されませんが、無効になるケースは自筆の氏名がない・押印がない場合です。

遺言書の記載内容に不備や不足がないか不安な場合は、専門家への相談を検討しましょう。

 

相続で有効な遺言書を作成するポイント

相続で有効な遺言書を作成するためのポイントは、以下のとおりです。
・自筆証書遺言の要件に注意する
・遺留分の侵害を避ける
・公正証書遺言を作成する

これらのポイントを押さえておけば、無効になるリスクを軽減し、遺言者の意思を反映できる可能性が高まります。

各ポイントについて、以下で一つずつ見ていきましょう。

自筆証書遺言の要件に注意する

自筆証書遺言を作成する際は、以下の要件を満たしていないと無効となってしまうため注意しましょう。
・遺言者本人が全文および氏名を自筆で書く
・作成した日付を特定できるように自筆で正確に記載する
・印鑑を押す

財産目録は自筆ではなくパソコンで作成しても問題ありませんが、パソコンで作成した場合はすべてのページに署名と押印が必要です。

また、書き間違った場合は訂正印を押し、欄外に訂正した箇所と内容を記載して署名するようにしてください。

遺留分の侵害を避ける

遺言書を作成する際は、各相続人の遺留分を考慮し、侵害しないように配分を決定しましょう。

遺留分は、相続人が取得できる相続財産の最低限の割合です。

遺言書で遺留分を侵害してしまうと、相続人間で遺留分トラブルが生じる可能性が高くなります。

なお、遺留分は相続人以外への遺贈や、生前の贈与に対しても適用されるため注意が必要です。

公正証書遺言を作成する

有効な遺言書を作成するためには、公正証書遺言を利用するのもおすすめです。

公正証書遺言は法律知識と実務経験をもつ公証人が作成するため、形式的な不備や記載漏れが生じにくくなります。

また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や隠匿・改ざんなどのおそれもありません。

費用はかかりますが、確実な遺言書を残すためには、公正証書遺言を検討しましょう。

 

相続の遺言書に不安があれば専門家に相談しよう

相続における遺言書には多くの効力がありますが、効力を発揮するためには法律的な要件を満たして作成しなければなりません。

個人で不備なく作成するのは困難なケースもあるため、少しでも不安があれば弁護士や司法書士といった専門家に相談するのがおすすめです。

専門家のサポートによって、不安を解消し、安心して遺言書を作成できます。

希望する遺産分割を実現するためにも、早めの相談を検討しましょう。

 

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