配偶者の法定相続分について|配偶者控除とは?
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分38秒です。
亡くなった人と婚姻関係にあった配偶者は、財産を相続する権利をもちます。
しかし、実際にどのくらい相続できるのか、また相続税の負担はどうなるのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、配偶者の相続分や、相続税に適用できる配偶者控除について詳しく解説します。
配偶者控除を利用する際の注意点や、配偶者の相続でよくある質問も紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続では配偶者がいる場合は常に法定相続人になる
相続において、法律婚をしている配偶者は常に法定相続人になります。
法定相続人とは、民法で定められた相続人の範囲です。
配偶者以外の親族は、子ども(孫)・直系尊属(父母や祖父母)・兄弟姉妹(甥姪)の順で法定相続人になります。
具体的に配偶者が相続できる財産の割合について、以下で詳しくみていきましょう。
配偶者の法定相続分
配偶者の法定相続分は、ほかの法定相続人との組み合わせによって異なります。
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者のみ | 配偶者が全額相続 |
配偶者と子ども | 配偶者:2分の1
子ども:2分の1 |
配偶者と直系尊属 | 配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1 |
法定相続分は、民法で定められた相続割合です。
遺言書や遺産分割協議で相続割合を決める場合、上記とは異なる配分になる可能性もあります。
相続人同士での話し合いがまとまらない場合は、法定相続分に沿って財産を分割するケースが多いため、目安として押さえておきましょう。
配偶者控除を利用すると相続税負担を軽減できる
一定額以上の財産を相続する際は相続税を支払う必要がありますが、配偶者控除を利用すると税負担を大幅に軽減できます。
配偶者控除は「配偶者の税額軽減の特例」ともいわれており、亡くなった人の配偶者が遺産を相続する場合に、相続税の非課税枠を設ける制度です。
・1億6,000万円まで非課税
・配偶者控除の要件
配偶者控除の具体的な内容について、以下で詳しく解説していきます。
1億6,000万円まで非課税
配偶者控除では、配偶者が相続した財産のうち、次のどちらか大きい金額までにかかる相続税が非課税となります。
・1億6,000万円
・配偶者の法定相続分相当額
したがって、配偶者が相続した財産の総額が1億6,000万円以内であれば、配偶者控除を適用すれば相続税はかかりません。
また、1億6,000万円を超える財産を相続した場合も、法定相続分までであれば非課税です。
配偶者控除の要件
配偶者控除を適用するためには、以下3つの要件を満たす必要があります。
・被相続人の法律上の配偶者である
・期限内に遺産分割方法が確定している
・相続税の申告をしている
相続税の配偶者控除が適用されるのは、法律上の婚姻関係が成立している配偶者のみです。
また、原則として相続税の申告期限までに、遺産分割方法の確定と相続税申告を行わなければなりません。
相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
相続税の配偶者控除で注意すべきポイント
相続税の配偶者控除を適用する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
・相続税がゼロ円になる場合も申告が必要
・内縁の配偶者や元配偶者は対象外
・二次相続も考慮した上で活用する
配偶者控除を最大限に活用し、適切な手続きを行うためにも、これらのポイントをしっかり押さえておきましょう。
それぞれの注意点について、以下で具体的に解説していきます。
相続税がゼロ円になる場合も申告が必要
配偶者控除を利用して、結果的に相続税がゼロ円になる場合であっても、相続税申告は忘れずに行いましょう。
配偶者控除の要件には相続税申告が含まれており、申告を行わなければ控除が適用されません。
また、相続税を申告しないままでいると控除が適用できないだけでなく、延滞税や無申告加算税などのペナルティを課される恐れもあります。
財産調査や遺産分割など必要な相続手続きは早めに進めて、期限内に管轄の税務署に申告するよう心がけてください。
なお、遺産総額が基礎控除額以内であれば、相続税は非課税となり配偶者控除を適用する必要がなくなるため、相続税申告は不要となります。
内縁の配偶者や元配偶者は対象外
配偶者控除は法律上の婚姻関係にある配偶者のみが対象であるため、内縁の配偶者や元配偶者は対象外となります。
内縁関係(事実婚)の妻や夫に関しては、法律婚の配偶者と同等の保護が受けられる制度も一部存在します。
しかし、相続においては内縁の配偶者に権利がないため、注意が必要です。
内縁の配偶者や元配偶者に財産を残したいと考えている場合は、生前贈与や遺言書での指定を検討しましょう。
二次相続も考慮した上で活用する
配偶者控除は、二次相続も考慮した上で活用するようにしましょう。
二次相続とは、一次相続で相続人となった配偶者の死亡によって発生する二度目の相続です。
一次相続で配偶者に多くの財産を移すと、配偶者控除によって相続税の負担を大幅に軽減できます。
しかし、その結果、二次相続で子どもに財産を移す際に高額な相続税がかかる可能性があります。
二次相続では配偶者控除が適用されないため、トータルでみたときの相続税負担を考慮して遺産分割を行うようにしましょう。
配偶者の相続に関するよくある質問
配偶者の相続に関するよくある質問を、ふたつピックアップして紹介します。
・子どもがいない場合は配偶者が全額相続できる?
・配偶者控除と基礎控除は併用可能?
相続における配偶者の権利や控除制度に関しては、さまざまな疑問が生じるものです。
各質問について、以下で詳しく回答していきます。
子どもがいない場合は配偶者が全額相続できる?
子どもがいない場合であっても、配偶者が全額相続できるとは限りません。
被相続人の父母・祖父母などの直系尊属、または兄弟姉妹・甥姪がいる場合は、配偶者と一緒に法定相続人になります。
この場合、配偶者の法定相続分は全体の3分の2から4分の3です。
法定相続人となる親族がいなければ、配偶者が全額相続できます。
保有している財産を配偶者に多く残したいと考えている場合は、生前に遺言書を作成しておくのをおすすめします。
配偶者控除と基礎控除は併用可能?
相続税の配偶者控除と基礎控除は、併用できます。
基礎控除は課税遺産総額から差し引ける控除額で、計算式は以下のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
配偶者控除は、配偶者個人の相続分に適用できる控除です。
対して、基礎控除は、相続税を計算するにあたって必ず考慮され、すべての法定相続人に適用されます。
そのため、配偶者控除を適用した配偶者の場合には、基礎控除が当然に併用されます。
配偶者の相続割合や相続税対策で悩んだら専門家に相談しよう
被相続人の配偶者は常に相続人となり、直系尊属や兄弟姉妹などと比べて多くの財産を相続できる可能性があります。
また、配偶者控除の制度があるため、相続税負担の大幅な軽減も可能です。
しかし、配偶者控除があるからといって、単純に配偶者への相続割合を多くしてしまうと、二次相続で子どもが支払う相続税が高額になる場合があります。
配偶者の相続割合や相続税対策に不安がある場合は、弁護士や税理士といった専門家に相談するのがおすすめです。
専門家は個々の状況や最新の法制度にもとづいたアドバイスを提供してくれるため、早めに相談しておくことで適切な相続計画を立てられるでしょう。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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