財産目録とは?記載内容と作成時のポイント
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分26秒です。
相続手続きにおいて、財産目録は被相続人の財産を明確にする重要な書類です。
しかし、財産目録とはどのようなものなのか、また何を記載すればいいのか迷っている人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、財産目録の目的や記載内容・作成が推奨される相続のケースなどについて解説します。
財産目録作成時の注意点も解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続手続きで作成する財産目録とは?
相続手続きで作成する財産目録とは、被相続人が所有していたすべての財産を一覧化した書類です。
被相続人が生前に作成するケースのほか、相続人が相続発生後に作成するケースがあります。
基本的には、相続発生後に行う財産調査と並行して財産目録の作成・修正をしていくのが一般的です。
財産目録を作成すると遺産の全容が明らかになり、相続手続きの負担を軽減できるメリットがあります。
財産目録を作成する目的
財産目録を作成する目的として、以下のようなものが挙げられます。
・遺言書に添付するため
・財産調査の漏れや誤りによるトラブルを避けるため
・相続手続きをスムーズに進めるため
遺言書の作成や相続手続きにおいて、財産目録は必ず作成しなければならない書類ではありません。
しかし、多数の相続財産がある場合などでは、上記のような目的によって作成されるケースが多くあります。
とくに相続トラブルを避けたい場合や、手間のかかる相続手続きを簡略化したい場合は財産目録の作成が有効です。
相続の財産目録に記載すべき内容
財産目録を作成する際は、以下の内容を記載する必要があります。
・作成日と作成者の署名・押印
・被相続人の財産情報
情報が不足していると、遺産分割協議や相続税申告で問題になる可能性があるため注意しましょう。
財産目録に記載すべき内容について、以下で詳しく解説していきます。
作成日と作成者の署名・押印
まず、財産目録には作成日と作成者の署名・押印が必要です。
不動産や有価証券などは評価時期によって価額が変動するため、作成日の記載が重要となります。
また、誰が財産目録を作成したのかを明確にするために、作成者の署名と押印も忘れずに行いましょう。
押印について特段の決まりはないため、遺言書と異なる印鑑を使用しても問題ありません。
被相続人の財産情報
財産目録には、被相続人が所有していたすべての財産に関する情報を記載します。
相続財産には預貯金や不動産などプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
財産目録に記載する主な財産の種類は、以下のとおりです。
・現金・預貯金
・土地や建物などの不動産
・有価証券
・自動車・貴金属・宝石・骨董品
・生命保険
・借金
・未納の家賃・税金・医療費・クレジットカード使用費など
・葬儀費用
財産目録を見ただけで全体の財産状況が把握できるよう、漏れなく詳細に記載するようにしましょう。
財産目録を作成した方がいい相続のケース
財産目録の作成は義務ではありませんが、以下のようなケースでは作成すべきといえます。
・遺産分割協議の前提資料とする場合
・相続税申告で使用する場合
・限定承認を行う場合
被相続人の財産情報をまとめた財産目録は、相続手続きをスムーズに進める上で重要な役割を果たします。
財産目録を作成した方がいい相続のケースについて、以下で一つずつ確認していきましょう。
遺産分割協議の前提資料とする場合
遺産分割協議の前提資料として活用したい場合は、財産目録を作成しておきましょう。
遺産分割協議とは、誰がどの遺産をどのくらい相続するかを相続人全員で話し合う手続きです。
遺言書がない場合や法定相続分以外の割合で財産を分割する場合は、遺産分割協議を行う必要があります。
財産目録があれば、相続人全員が相続財産の全容を把握した上で協議できるため、スムーズに進められるでしょう。
相続税申告で使用する場合
財産目録を作成しておけば、相続税申告の手続きの簡略化が可能です。
財産目録には財産の金額も記載するため、各相続人の相続額が明確になり、相続税計算がしやすくなります。
また、相続税の申告書には財産の内容を記載しなければなりませんが、財産目録があれば書き写すだけで完了します。
相続税申告は手間のかかる手続きのため、相続税がかかる場合は早めに財産目録を作成しておくのが望ましいです。
限定承認を行う場合
限定承認を行う場合は、限定承認の申述書とあわせて財産目録の提出が必要となります。
限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き継ぐ相続方法です。
原則として、限定承認を行う際は相続開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きしなければなりません。
財産目録のほかにも必要な提出書類があるため、限定承認を検討している場合は早めに準備を進めるようにしましょう。
相続の財産目録を作成する際のポイント
財産目録を作成する際に意識しておきたいポイントは、次の3つです。
・生前に作成した場合は相続開始時点で見直す
・漏れがないように財産を調査する
・財産が特定できる詳細な情報を記載する
これらのポイントは、正確で包括的な財産目録を作成するため重要となります。
各ポイントを、以下で具体的に見ていきましょう。
生前に作成した場合は相続開始時点で見直す
被相続人が生前に財産目録を作成していた場合でも、相続開始時点の情報に更新する必要があります。
預貯金残高の変動・不動産の売却・借入などによって、生前の財産状況と相続開始時点の財産状況が異なる可能性があるためです。
不要な相続トラブルを防ぐためにも、必ず最新の情報にもとづいて財産目録を作成するようにしましょう。
漏れがないように財産を調査する
財産目録を作成する際は、財産や負債の有無を徹底的に調査して漏れなく記載することが重要です。
具体的には、以下のような情報を確認してしらみつぶしに探していく必要があります。
・預貯金通帳
・キャッシュカード
・金融機関や証券会社からの郵便物
・被相続人のパソコンやスマホ
・借入先からの請求書や督促状
・固定資産税の納税通知書
・登記済権利証
財産の調査を相続人だけで行うと、見落としが発生する可能性もあるため注意が必要です。
財産状況がわからない場合や財産の種類が多い場合など、状況によっては専門家への依頼も検討しましょう。
財産が特定できる詳細な情報を記載する
財産目録には、財産の名称だけでなく特定できる詳細な情報を記載しましょう。
詳細な情報が記載されていないと、追加で資料を準備する必要が生じたり、相続手続きが遅延したりする可能性があります。
たとえば、預貯金であれば銀行名・支店名・普通(定期・当座)預金・口座番号・金額を記載します。
不動産であれば、正確な所在地のほか建物の種類・面積・構造・評価額などの細かな情報を記載しておくのが望ましいです。
相続の財産目録作成で悩んだら専門家に相談しよう
相続の財産目録を作成するためには、被相続人の財産を正確に把握する必要があります。
しかし、評価の難しい財産やマイナスの財産が多く含まれている場合など、個人での判断が難しいケースも少なくありません。
このような場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談するのがおすすめです。
専門家は、相続手続きや財産評価に関する知識と経験をもっており、複雑なケースにも対応できます。
専門家のサポートによって正確な財産目録が作成できれば、その後の遺産分割や相続手続きをスムーズに進められるでしょう。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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