特別受益とは?計算方法や該当ケースを解説

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分26秒です。

特定の相続人が生前の被相続人から贈与や遺贈などの特別な利益を受けた場合、その利益を「特別受益」と呼びます。

特別受益に該当する利益とはなにか、また相続にどのような影響を与えるのかわからないという人も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、特別受益の概要や遺産分割時の計算方法、特別受益に該当する具体的なケースなどについて詳しく解説します。

相続手続き全体を円滑に進めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続における「特別受益」とは?

相続における特別受益とはどのような仕組みなのか、以下の項目で解説します。
・特別受益とは
・遺産分割時に特別受益の持ち戻しを行う
・特別受益の持ち戻しは免除されるケースもある

とくに持ち戻しについては相続時に問題となりやすいため、しっかり押さえておく必要があります。

各項目について、以下で具体的に確認していきましょう。

特別受益とは

特別受益とは、特定の相続人が被相続人からの贈与や遺贈(遺言による財産の譲渡)によって得た利益です。

被相続人の生前に特定の相続人にのみ財産が渡されていた場合、遺産分割を行う際にほかの相続人が不平等と感じるかもしれません。

しかし、生前に受けた贈与や遺贈を特別受益として扱い、相続財産に含まれるものとして計算を行えば公平に財産を分配できます。

特別受益は複数の相続人がいる場合にのみ適用される、相続財産を公平に分けるための制度です。

遺産分割時に特別受益の持ち戻しを行う

特別受益がある場合は、遺産分割を行う際に「特別受益の持ち戻し」といわれる計算を行います。

特別受益の持ち戻しとは、相続開始時点での相続財産と特別受益の金額を合算した上で、各相続人の相続分を決める計算方法です。

持ち戻しの計算によって、特別受益を受けた相続人だけが過度な利益を受けないように調整できます。

ただし、特別受益の持ち戻し請求は相続開始後10年以内に行わなければならない点に注意が必要です。

特別受益の持ち戻しは免除されるケースもある

被相続人が生前に贈与・遺贈した財産の持ち戻しをしない意思表示をしていた場合、特別受益を含めずに遺産分割を行えます。

意思表示の方法について明確な決まりはありませんが、遺言書に記載しておくのが一般的です。

なお、特別受益の持ち戻し免除の意思表示を行ったとしても、各相続人に最低限保証されている遺留分の侵害はできません。

遺留分は被相続人と相続人の関係性によって割合が決められているため、遺留分に配慮して遺言書を作成するようにしましょう。

 

特別受益がある場合の相続分の計算方法

特別受益がある場合は、遺産分割時に「特別受益を受けた相続人」と「受けていない相続人」それぞれの相続分を計算します。

相続分の計算式は以下のとおりです。

 

【特別受益を受けた相続人】

(相続開始時の財産+特別受益にあたる贈与額)×法定相続分-特別受益の財産額

 

【特別受益を受けていない相続人】

(相続開始時の財産+特別受益にあたる贈与額)×法定相続分

 

かっこ内の計算は遺産分割の対象となる相続財産の計算です。

特別受益は「みなし相続財産」という扱いになり、相続財産の一部を先に受け取ったものとみなして相続分を計算します。

 

計算を間違えるとトラブルの要因となるため、不明瞭な点がある場合は弁護士や税理士など専門家への相談を検討しましょう。

 

相続で特別受益に該当するケース

相続で特別受益に該当する代表的なケースは、相続人に対する次のような贈与・遺贈です。
・遺言書による遺贈
・婚姻・養子縁組・生計資本のための贈与
・死因贈与

特別受益があると相続財産の割合に影響する可能性があるため、どのような贈与・遺贈が該当するのか理解しておく必要があります。

各ケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。

遺言書による遺贈

遺言書による遺贈で特定の相続人に財産を与えた場合は、特別受益に該当します。

たとえば、被相続人が遺言書で「長男に株式1,000万円分を与える」と指定した場合、この株式は長男の特別受益となります。

特別受益の持ち戻しを望まない場合は、遺贈の意思とともに持ち戻し免除の意思を記載することが重要です。

婚姻・養子縁組・生計資本のための贈与

相続人に対する婚姻や養子縁組に伴う資金援助、また生活の基盤を整えるための生前贈与は特別受益に該当する可能性があります。

たとえば結婚の持参金として多額の資金が贈与されたり、養子縁組に際して支援金が贈与されたりした場合などです。

一方で挙式費用や結納金に関しては、儀礼的な側面が大きく遺産の前渡しとはいえないため、特別受益には含めないのが一般的です。

どこまで特別受益に含めるべきかは判断が難しいケースも多いため、迷ったら弁護士などの専門家に相談するのをおすすめします。

死因贈与

相続人に対する死因贈与は、原則として特別受益とみなされます。

死因贈与とは、贈与者が死亡した際に指定した財産を特定の人に渡すことを約束する贈与契約です。

たとえば、「私が死亡したときにあなたに〇〇を贈与します」といった内容の契約が死因贈与にあたります。

生前に契約されたものでありながら、実際の贈与は被相続人の死後に行われるため、特別受益として扱われます。

 

相続で特別受益に該当しないケース

相続において、すべての贈与や遺贈が特別受益として扱われるわけではありません。

特別受益に該当しない主なケースは、次のとおりです。
・相続人以外への贈与・遺贈
・生命保険金
・死亡退職金

それぞれのケースについて、以下で一つずつ解説していきます。

相続人以外への贈与・遺贈

相続人以外の個人または団体への贈与や遺贈は、特別受益に該当しません。

たとえば孫に対して多額の財産を贈与した場合、子どもが死亡していない限り孫は相続人ではないため、特別受益の対象外です。

ただし、孫への贈与が実際には子どもへの贈与とみなされる場合など、状況によっては特別受益と判断される可能性もあります。

生命保険金

生命保険金は、原則として特別受益にはなりません。

保険契約にもとづき受取人に対して直接支給されるため、相続財産ではなく受取人固有の権利として扱われます。

ただし、保険金の金額や特段の事情などによって、生命保険金を特別受益に含めると判断されるケースもゼロではありません。

生命保険金を受け取る際は、相続全体で著しく不平等を生じさせるような契約になっていないかはよく確認する必要があります。

死亡退職金

死亡退職金も、通常は特別受益に該当しません。

死亡退職金とは、労働者が在職中に死亡した場合に、労働者の遺族などに対して支払われるお金です。

法令や就業規則にもとづいて勤務先から支給されるものであるため、被相続人からの贈与とはみなされません。

ただし生命保険金と同様に、相続において著しい不平等が生じる場合は例外として特別受益に含まれる可能性もあります。

 

相続の特別受益に不安があれば専門家に相談しよう

相続における特別受益は、相続人間の公平性を確保するために適用される制度です。

しかし、特別受益の判断や計算方法は複雑で、誤った対応をすると相続トラブルに発展する可能性もあります。

特別受益について少しでも疑問や不安を感じた場合は、弁護士や税理士といった専門家への相談をおすすめします。

相続問題に関する経験や知識が豊富な専門家のサポートがあれば、相続手続きをスムーズに進められるでしょう。

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