相続人から訴えられたときの流れと注意点

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分42秒です。

故人の財産を引き継ぐ遺産相続は、相続人の間でトラブルが生じやすい手続きです。

遺産分割方法について合意できなかったとしても、通常であれば裁判を起こされることはありません。

しかし、遺言書の有効性や相続人の範囲・財産の分割方法などで争いが生じると訴えられる可能性があります。

今回の記事では、裁判となる相続のケースや訴えられた場合の流れ・対処法などについて解説していきます。

相続トラブルに直面した際の備えとして、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続人から訴えられた?裁判になる相続のケースとは

通常の遺産相続であれば、相続人間でもめた場合は遺産分割調停や審判の手続きを進めるのが一般的です。

しかし、以下のようなケースでは、ほかの相続人から訴えられ裁判に発展する可能性があります。
・遺言書の有効性が争点となるケース
・相続人の範囲が争点となるケース
・相続財産の範囲が争点となるケース
・遺産分割協議の有効性が争点となるケース
・遺産の使い込みが疑われるケース
・遺留分の侵害があったケース

相続に関する裁判の代表的なケースについて、以下で一つずつ確認していきましょう。

遺言書の有効性が争点となるケース

遺言書の内容や形式が、法的に有効かどうかが問題となるケースがあります。

被相続人が作成した遺言書がある場合、遺言書の内容に従って相続を進めていくのが原則です。

しかし、遺言書の形式や内容などに不備があれば、遺言書は無効となり認められません。

形式不備のほか遺言者が認知症であった場合や、偽造や改ざんが疑われる場合も遺言書の無効を求めて裁判となる可能性があります。

相続人の範囲が争点となるケース

誰が相続人となり被相続人の財産を相続するのかに関しても、争われるケースがあります。

相続では基本的に民法で定められた法定相続人、もしくは遺言書で指定された人が相続人となります。

しかし、相続人であったとしても「相続欠格事由」に該当する人は相続権を失い、財産を受け取れません。

被相続人を故意に死亡させようとしたり、詐欺や脅迫で遺言を操作したりした場合、相続人の地位について裁判となる可能性があるでしょう。

相続財産の範囲が争点となるケース

相続財産の範囲も、相続トラブルになりやすい問題の一つです。

相続財産には預貯金や不動産・株式など被相続人の財産すべてが含まれます。

しかし、相続人名義の預貯金が実質的に被相続人の財産であった場合など、相続財産の対象となるのかが争われるケースがあります。

実質的な保有者があいまいな財産がある場合、遺産確認の訴えを起こされる可能性があるでしょう。

遺産分割協議の有効性が争点となるケース

遺産分割協議に関して、相続人の合意について問題となるケースも見られます。

相続財産の分け方を決める遺産分割協議には、原則として相続人全員が参加しなければなりません。

そのため、一部の相続人が参加していない状況で遺産分割協議を行うと、取り消しを求めて訴えられる場合があります。

また、遺産分割協議に認知症や未成年の相続人が含まれていた場合も、合意内容が無効であると主張される可能性があります。

遺産の使い込みが疑われるケース

被相続人の財産を無断で使用または処分した疑いがある場合、訴訟に発展するケースがあります。

たとえば、特定の相続人が被相続人の預金を無断で引き出したり、価値の高い物品を売却したりする行為などです。

遺産の使い込みが疑われれば、ほかの相続人が遺産の返還を求めて裁判を起こす可能性があります。

遺留分の侵害があったケース

遺留分の侵害があったケースも、裁判に発展しやすい問題の一つです。

遺留分とは、特定の相続人に法律で保障された最低限の遺産の取り分です。

生前贈与や遺言書などによって遺留分が侵害された相続人は、遺留分侵害額請求によって遺産を取り戻す権利があります。

しかし、遺留分侵害について相続人間で解決できない場合は、まず遺留分侵害額請求調停を申し立てるのが原則です。

調停が不成立となった場合、裁判を起こされるケースがあります。

 

相続人から訴えられたときの対応の流れ

相続問題で訴えられた場合の基本的な対応方法の流れは、以下のとおりです。
・裁判所からの通知を確認する
・弁護士に相談する
・裁判期日に裁判所へ出頭する

裁判は複雑で時間がかかることが多いため、専門家のサポートを受けながら早めに対応していきましょう。

以下では、訴えられた際の流れを具体的に解説していきます。

裁判所からの通知を確認する

相続人から訴えられたら、まず裁判所からの通知内容を確認しましょう。

裁判が提起されると、裁判所から訴状や口頭弁論期日呼出状といった書類が届きます。

これらの書類には、訴えの内容・出頭すべき日時・答弁書の提出期限などが記載されています。

通知を無視すると裁判を起こした側の主張がすべて認められてしまう可能性があるため、忘れずに確認が必要です。

弁護士に相談する

裁判所からの通知を確認したら、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。

法律の専門家である弁護士に依頼すると、以下のような手続きを任せられます。
・答弁書の作成
・裁判手続きに必要な書類の作成
・裁判所への代理出頭
・相手方との和解交渉

弁護士に相談すれば、どのように手続きを進めるべきかアドバイスが受けられます。

法的な知識が必要とされる場面の多い裁判では、弁護士のサポートが不可欠です。

裁判期日に裁判所へ出頭する

訴状や呼出状で指定された期日には、裁判所へ出頭しなければなりません。

弁護士に依頼している場合、本人が出頭しなくても弁護士が代理人として対応してくれます。

裁判所では当事者双方の主張の確認や証拠の提示、和解の提案などが行われます。

自分で出頭する場合は、事前に弁護士とシミュレーションを行い、進行を把握しておくと安心です。

 

相続問題で訴えられた場合に注意すべきポイント

相続問題で訴えられた場合に注意すべきポイントは、次の2点です。
・裁判所からの通知を無視しない
・感情的にならず落ち着いて対応する

裁判を起こされると多くの人が不安や混乱を覚えますが、適切に対処することで事態の悪化を防げます。

訴えられたときの注意点について、以下で詳しく見ていきましょう。

裁判所からの通知を無視しない

裁判が起こされた場合、裁判所から通知が届きますが、無視はしないように気をつけましょう。

裁判所からの通知を無視すると欠席扱いとなり、相手の主張がそのまま認められ判決が下されてしまいます。

不利な判決が下されるだけでなく、判決にもとづいた強制執行によって財産や給与を差し押さえられるリスクもあります。

裁判に納得ができない場合であっても、通知を受け取ったら必ず内容を確認して今後の対応を検討しましょう。

感情的にならず落ち着いて対応する

相続は親族間の感情が絡みやすい問題であり、訴えられたとなると冷静さを失いがちです。

しかし、感情的な対応は裁判を不利に進める原因となるため注意しましょう。

とくに、相手方と直接やり取りする際の発言には慎重になるべきです。

冷静さを保つためには、弁護士に相談して自分の主張を整理することが効果的です。

裁判は長期化するケースもあるため、負担が大きいと感じたら弁護士に裁判手続きの依頼を検討するようにしましょう。

 

遺産相続で訴えられたらすぐに弁護士に相談しよう

遺産相続トラブルが裁判に発展し訴えられた場合、不当な判決を避けるには適切に対応する必要があります。

裁判所からの通知内容を正確に理解し、自分の主張や証拠を整理しましょう。

そのためには早めに弁護士に相談し、サポートを受けることが望ましいです。

弁護士に相談すれば相手方との交渉や裁判所出頭の代理も依頼できるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。

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