相続手続の後に出てきた財産の対応方法
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分48秒です。
相続手続きが終わった後に、新たな財産が見つかるケースは少なくありません。
後から現金や不動産・借金などが発覚した場合、どのように対応すればいいのか不安に感じる人も多いでしょう。
今回の記事では、相続で後から財産が出てきた場合の対応方法や手続き・注意点などを具体的に解説します。
事前に把握しておけば慌てず適切に対応できるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続で後から新たな財産が出てきたらどうすればいい?
相続手続きが終わった後に新たな財産が見つかった場合は、発見された財産について適切な対応を行う必要があります。
・新たな財産に対してのみ遺産分割協議を行う
・相続人全員の合意があれば遺産分割協議のやり直しが可能
それぞれの対応方法について、以下で詳しく見ていきましょう。
新たな財産に対してのみ遺産分割協議を行う
後から財産が発見された場合は、その財産のみを対象にあらためて遺産分割協議を行うのが一般的です。
この方法には、すでに決定した遺産分割内容を変更することなく、新たな財産を公平に分けられるメリットがあります。
遺産分割協議では、相続人全員で話し合い、誰がどの割合で新たな財産を受け取るかを決定しましょう。
遺産分割をやり直す必要がなく比較的スムーズに解決できる方法のため、最初に検討すべき選択肢といえます。
相続人全員の合意があれば遺産分割協議のやり直しが可能
新たな財産とあわせてすでに決定した遺産分割内容を見直したい場合は、相続人全員の合意があれば協議のやり直しが可能です。
ただし、一度成立した協議を覆すことになるため、全員が納得するまで慎重に話し合う必要があります。
遺産分割協議のやり直しには時間や手間がかかりますが、不公平感を解消し円満に解決しやすくする方法です。
なお、新たに発見された財産を一部の相続人が隠していた場合などでは、遺産分割協議が無効になるためやり直しが必要となります。
【種類別】相続財産が後から出てきたときの手続き方法
相続財産が後から判明した場合、その財産の種類によって手続き方法が異なります。
・現金の場合の手続き
・不動産の場合の手続き
・借金の場合の手続き
財産ごとの正しい手続きを知っておくことでスムーズに処理でき、相続人間のトラブルを避けられるでしょう。
以下では、種類別に具体的な手続きを解説していきます。
現金の場合の手続き
後から現金が見つかった場合は、法定相続割合のとおりに分割するのが一般的です。
法定相続割合とは、民法で定められた各相続人の相続割合を指します。
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人である場合、法定相続割合は配偶者が2分の1・子どもが4分の1ずつとなります。
法定相続割合以外の割合で分割したい場合には、新たに見つかった現金に対してのみ遺産分割協議を行いましょう。
現金は名義変更などの特別な手続きが必要ないため、比較的簡単に対応できます。
なお、一定額を超える場合は相続税の申告が必要となる点は忘れないようにしましょう。
不動産の場合の手続き
不動産が後から判明した際は、まず遺産分割協議を行い、誰がその不動産を相続するか決定します。
その後、不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記を行いましょう。
相続登記に必要となる主な書類は、以下のとおりです。
・登記申請書
・遺産分割協議書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人と不動産を相続する相続人の住民票(除票)
・固定資産評価証明書
・相続人全員の印鑑証明書
相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、不動産の所有権の取得を知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく申請期限を過ぎた場合、ペナルティを科される可能性があるため手続きは早めに進めましょう。
借金の場合の手続き
後から借金が判明した場合は、その内容を確認し、相続人全員で対応方法を話し合いましょう。
相続の開始を知ってから3ヶ月以内の熟慮期間を過ぎていなければ、「相続放棄」や「限定承認」をする選択肢があります。
相続放棄は財産や負債などの権利義務の一切を放棄する方法で、限定承認はプラスの財産の範囲でのみ負債を引き継ぐ方法です。
ただし、すでに熟慮期間を経過している場合は相続放棄や限定承認は選択できず、相続人が返済義務を負うことになります。
借金の全容がわからない場合には、早めに弁護士や税理士などの専門家に相談して対処しましょう。
後から財産が出てきたときの相続税申告方法と注意点
相続税の申告後に新たな財産が判明した場合は、税務署に訂正(修正)の申告が必要です。
相続税申告の期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内となっており、申告するタイミングによって手続きが異なります。
・【申告期限前】訂正申告をして追加で納税する
・【申告期限後】修正申告をして延滞税を支払う
・相続税申告のペナルティに注意が必要
以下では、申告期限前後の手続き方法と、相続税申告における注意点について詳しく解説していきます。
【申告期限前】訂正申告をして追加で納税する
相続税の申告期限前に新たな財産が見つかり申告のやり直しが必要な場合は、「訂正申告」を行います。
訂正申告とは、申告後に遺産分割を行った場合や申告内容にミスがあった場合に、相続税額を訂正して申告しなおす手続きです。
申告をした際には、不足している納税額を追加で納税しましょう。
申告期限前の訂正申告であれば、期限に遅れているわけではないため延滞税などのペナルティは発生しません。
【申告期限後】修正申告をして延滞税を支払う
相続税の申告期限を過ぎてから新たな財産が判明した場合は、「修正申告」を行います。
修正申告を行う際は、不足していた相続税の納税額とあわせて「延滞税」を支払う必要があります。
延滞税とは、相続税の納付が遅れた場合に課される附帯税です。
申告が遅れるほど支払う延滞税も増えていくため、気づいた時点で早めに税務署に申し出るようにしましょう。
相続税申告のペナルティに注意が必要
税務調査を受けてから申告をした場合や故意に申告をしなかった場合には、過少申告加算税や重加算税が課される可能性があります。
過少申告加算税は、期限内に申告した金額が少なかったことに対するペナルティです。
税務調査の通知を受ける前に自主的に申告を行えば、過少申告加算税が課されることはありません。
重加算税は、意図的に財産を隠して脱税するなど悪質な場合に課される税金です。
重いペナルティを受けないためにも、新たな財産が出てきた際はできるだけ早く対応し、正しく修正申告を行いましょう。
後から相続財産が出てきた場合に備えてできること
後から相続財産が出てきた場合に備えるためには、遺産分割協議書を作成する際の工夫が重要です。
遺産分割協議が成立し、遺産分割協議書を作成する際は「後から財産が出てきた場合の取り扱い」について記載しておきましょう。
たとえば、以下のような内容が挙げられます。
・相続人全員であらためて協議する
・相続人ごとの相続割合を決めておく
・特定の相続人が取得する
これらの内容を決めて記載しておけば、万が一新たな相続財産が発覚した場合も落ち着いて対応できるでしょう。
相続で後から財産が出てきたときが不安なら専門家に相談しよう
相続で後から財産が出てきたときには、対象の財産に対してのみ遺産分割協議を行い、必要に応じて相続税申告をしましょう。
しかし、相続では思わぬトラブルや複雑な手続きが重なる可能性があり、個人だけで対応するのが難しい場面もあります。
少しでも不安を感じたら、専門家への相談を検討してみてください。
相続税に関する悩みであれば税理士、相続手続き全般や遺産分割に関する悩みであれば弁護士に相談するのが適しています。
安心して手続きを進めるためにも、専門家のサポートをうまく活用しましょう。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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