養子に相続権はある?注意点は?
〇この記事を読むのに必要な時間は約7分37秒です。
養子縁組を行うと、養親と養子の間に法律上の親子関係が成立します。
養子縁組は相続にどのような影響を与えるのか、また相続対策として有効なのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、相続における養子縁組の扱いやメリット・注意点などについて詳しく解説します。
相続人の中に養子がいる人や、養子縁組を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
目次
相続における養子縁組の扱い
養子縁組は原則として実子と同じ相続権をもつため、相続割合や相続税に影響を与える可能性があります。
まずは相続における基本的な養子縁組の扱いとして、次の項目を確認していきましょう。
・養子は実子と同等の相続権をもつ
・養子縁組の種類によって相続の権利が異なる
以下で具体的に解説していきます。
養子は実子と同等の相続権をもつ
養子縁組をすると養親と養子は法律上の親子関係になるため、養子は実子と同等の相続権をもちます。
法律で定められた法定相続人の順位は、以下のとおりです。
第一順位 | 子ども |
第二順位 | 父母(祖父母) |
第三順位 | 兄弟姉妹 |
常に法定相続人となる配偶者以外でもっとも優先度が高いのは「子ども」であり、実子と養子はどちらも第一順位となります。
同じ相続順位の法定相続人は、相続できる割合(法定相続分)も同じです。
たとえば、子どもの法定相続分が2分の1で実子と養子が1人ずついる場合、それぞれ4分の1ずつ相続することになります。
養子縁組の種類によって相続の権利が異なる
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、相続による権利が異なります。
普通養子縁組は、実親との親子関係を残したまま、新たに養親との法的親子関係をもつ手続きです。
相続が発生した際は、実親と養親の両方の法定相続人となります。
対して特別養子縁組は、実親との血縁関係を解消させた上で、養親との法的親子関係をもつ手続きです。
そのため、養親側の法定相続人にはなりますが、実親からは相続できなくなります。
特別養子縁組の成立の要件は厳しいため、相続対策の一環として養子縁組をする場合は、普通養子縁組で行われるのが通常です。
相続対策で養子縁組をするメリット
養子縁組は家族関係の構築だけでなく、相続対策の一環として活用される場合があります。
相続対策で養子縁組をする主なメリットは、次のとおりです。
・相続税の基礎控除額が増える
・死亡保険金の非課税枠が増える
・法定相続人ではない人にも財産を渡せる
各メリットについて、以下で詳しく解説していきます。
相続税の基礎控除額が増える
相続税の基礎控除額が増えるのは、養子を迎える際のメリットの一つです。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
養子が法定相続人に含まれると、法定相続人の数が増えて基礎控除額が増加します。
具体的には養子が1人増えるごとに控除額が600万円加算されるため、適切に活用することで相続税の負担を抑えられるでしょう。
ただし、養子の控除対象には上限があり、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人までしかカウントされません。
死亡保険金の非課税枠が増える
養子を迎えることで、死亡保険金の非課税枠が増えるメリットもあります。
生命保険金や死亡保険金は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象です。
しかし、生死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、それぞれから控除できます。
養子縁組によって法定相続人の数が増えれば、その分相続税のかからない非課税枠が増加します。
なお、非課税枠の対象人数にも相続税法上の上限があるため注意しましょう。
上限は基礎控除と同様に、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人までです。
法定相続人ではない人にも財産を渡せる
養子縁組をすることで、もともとは法定相続人でなかった人にも相続権を与えられます。
たとえば、孫や再婚した配偶者の連れ子などを養子にすると、法定相続人として財産を承継できるようになります。
血縁関係が薄い人に相続財産を確実に残したい場合や、家業を継ぐ後継者として迎える場合には有効な手段となるでしょう。
養子縁組を活用すれば、遺言書だけでは実現が難しい柔軟な資産承継が可能です。
相続で養子がいる場合に注意すべきポイント
相続で養子がいる場合に注意すべきポイントは、次の3つです。
・養子の子どもは代襲相続人になれない可能性がある
・ほかの相続人と揉めるリスクがある
養子縁組は相続対策として有効な一面がある一方で、安易に取り入れると思わぬトラブルや課税の増加につながるおそれがあります。
それぞれの注意点について、以下で具体的に確認していきましょう。
養子の子どもは代襲相続人になれない可能性がある
養子に子どもがいる場合でも、相続の状況によっては代襲相続人になれない可能性があります。
代襲相続人とは、相続人となる人が相続開始時点ですでに亡くなっている場合に、代わりに相続権を受け継ぐ人です。
被相続人が亡くなる前に養子が亡くなっている場合、養子の子どもが代襲相続人として遺産を相続できます。
しかし、代襲相続人になれるのは養子縁組後に生まれた子どものみです。
養子縁組前に生まれた子どもは、被相続人との血縁関係がないものとされるため、代襲相続人にはなれません。
養子の連れ子に相続させたい場合には、あらかじめ連れ子とも養子縁組するか、遺言書を作成するなどの対策が必要です。
ほかの相続人と揉めるリスクがある
養子縁組を行うと、ほかの相続人と揉めるリスクが生じます。
養子が相続人となることで、ほかの相続人の相続分が減ったり、相続人になれなかったりする可能性があるためです。
とくに、生前に被相続人から十分な説明がなかった場合は、遺産分割で揉める可能性が高くなります。
相続争いを避けるためには、家族や関係者に対して養子縁組の理由や目的をしっかりと説明しておく必要があります。
また、必要に応じて遺言書などで意思を明確に示しておくことも有効です。
相続での養子の扱いや節税で悩んだら専門家に相談しよう
養子縁組をすると、相続人以外の人に財産を相続させたり、相続税の控除額を増やしたりできるメリットがあります。
ただし、ほかの相続人とのトラブルや税負担の増加につながるリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
養子縁組すべきか、また相続税の負担を抑えるにはどうすべきか悩んだら、弁護士や税理士などの専門家への相談をおすすめします。
相続問題を得意とする専門家であれば、知識や経験にもとづいた適切なアドバイスを受けられるでしょう。
安心して相続を迎えるためにも、できるだけ早めの相談を検討してみてください。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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