相続の限定承認とは?内容や手続きを分かりやすく解説

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分38秒です。

被相続人から相続する財産には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。

このような状況で、相続人が考慮すべき選択肢の一つとなるのが「限定承認」です。

しかし、具体的にどのケースで限定承認を選ぶべきなのか、どのような手続きが必要なのかわからないという人も多いでしょう。

今回の記事では、限定承認の概要やメリット・デメリット、限定承認が有効となるケースについて解説していきます。

実際の手続きの流れも紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続における限定承認とは

相続における限定承認とは、相続人が被相続人の財産を相続する際の選択肢の一つです。

相続財産には預貯金や不動産などプラスの財産のほかに、借金やローンなどマイナスの財産も含まれます。

プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を相続する方法が限定承認です。

限定承認を行えば、相続によって自身の財産が減少するリスクを回避できます。

限定承認と相続放棄の違い

限定承認と相続放棄はどちらも相続人が選択できる相続方法の一つですが、その内容は大きく異なります。

限定承認は先述のとおり、相続するプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。

一方、相続放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて受け取らず放棄する選択です。

相続放棄を行うと最初から相続人でなかったとみなされるため、相続財産の取得は一切できません。

また、相続放棄は相続人単独で申述できるのに対して、限定承認は相続人全員で申述しなければならない点も異なります。

 

限定承認を選ぶメリットとデメリット

限定承認には、メリットだけでなくデメリットも存在します。

限定承認を選択する際は、メリット・デメリットをしっかりと理解しておきましょう。

以下で具体的なメリットとデメリットを紹介します。
・限定承認のメリット
・限定承認のデメリット

限定承認のメリット

限定承認の主なメリットは、以下のとおりです。
・プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を弁済できる
・自宅など手放したくない財産を相続できる

限定承認を行うと、被相続人の債務の全容がわからない場合でも、財産以上の負債を背負うリスクを避けられます。

プラスの財産の範囲内でのみ負債を引き受けるため、たとえ負債が多額でも相続人自身の資産を失う心配はありません。

また、相続人には「先買権」という優先的に購入できる権利があり、自宅など必要な財産だけ取得できるメリットがあります。

限定承認のデメリット

限定承認には、以下のようなデメリットも存在します。
・相続人全員で申述しなければならない
・譲渡所得税がかかる場合がある
・手続きが複雑で時間がかかる

限定承認は相続人全員で申述しなければならないため、相続人間で意見の相違があると利用するのが難しいです。

また、不動産や株式などの財産に対して、譲渡所得税がかかる可能性がある点も注意しておきましょう。

相続放棄などと比べて手続きが複雑であるため、相続人だけで対応するのが困難であるのもデメリットといえます。

 

限定承認を検討すべき相続のケース

限定承認を検討すべきなのは、主に以下のようなケースです。
・相続財産が把握できない場合
・マイナスの財産があるかどうか不安な場合
・借金があるものの相続したい財産がある場合

限定承認は、すべての相続のケースで有効というわけではありません。

限定承認がとくに有効となる典型的なケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。

相続財産が把握できない場合

被相続人の相続財産が不明確な場合、限定承認を選択した方がよい可能性があります。

後から新たな借金が発覚しても、プラスの財産を限度に弁済すれば負担を最小限に抑えられるためです。

財産調査は予想以上に手間のかかる作業であり、生前になにも知らされていない場合はしらみつぶしに探していく必要があります。

被相続人の財産状況がわからないケースでは、限定承認を選択しておいた方が安心でしょう。

マイナスの財産があるかどうか不安な場合

被相続人にマイナスの財産がどれくらいあるのか不安な場合も、限定承認の選択が有効なケースの一つです。

財産調査をしたものの、「実はほかにも借金があるのではないか」と不安に思う場合もあるでしょう。

限定承認の手続きでは官報公告を行うため、債権者がいるかどうかを公に確認できます。

官報公告によって債権者が現れたとしても、限定承認を選択していれば相続したプラスの財産の範囲でのみ弁済できます。

借金があるものの相続したい財産がある場合

被相続人に借金があると知っているものの相続したい特定の財産がある場合は、限定承認を選択するのがおすすめです。

限定承認の手続きでは相続財産の換価処分が行われますが、相続人の「先買権」を行使すれば特定の財産だけを取得できます。

どうしても手放したくない財産がある場合、先買権を使って優先的に購入する方法を検討してみてください。

負債を弁済した上で自宅などの財産を相続したい場合は、限定承認が有効な手段となるでしょう。

 

限定承認の手続き方法

ここでは、限定承認の手続き方法を解説します。
・申述期間と申述先
・必要書類
・限定承認の手続きの流れ

限定承認は、相続放棄よりも手続きが複雑であるため、大まかな流れは事前に把握しておきましょう。

申述期間・必要書類・手続きの流れについて、以下で詳しく解説していきます。

申述期間と申述先

限定承認を行う場合、相続の開始があったと知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所申述を行う必要があります。

期間内に手続きを行わなければ、自動的にすべての財産を相続するとみなされるため注意が必要です。

申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。

限定承認の手続きは、できるだけ余裕をもって開始しましょう。

必要書類

限定承認に必要となる主な書類は、以下のとおりです。
・限定承認の申述書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人(相続人全員)の戸籍謄本
・800円分の収入印紙
・連絡用の郵便切手

相続人となるはずだった人がすでに亡くなっている場合、対象者の死亡の記載がある戸籍謄本の提出も必要です。

また、申述する相続人と被相続人の関係性によっては、追加の戸籍謄本の提出を求められる可能性もあります。

詳細については、申述先の家庭裁判所に直接確認するようにしてください。

限定承認の手続きの流れ

限定承認の手続きは、基本的に以下のような流れで進めます。

1.相続財産と相続人の調査
2.限定承認に必要な書類の準備
3.相続人全員で家庭裁判所へ申述
4.官報で公告
5.相続財産の換価処分
6.債務の弁済
7.財産が残った場合は遺産分割

限定承認の手続きには手間と時間がかかり、個人で行うのは困難です。

申述から1年〜2年程度かかるケースもあるため、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けながら進めていくのをおすすめします。

 

相続で限定承認を選択する際は専門家への相談がおすすめ

相続における限定承認は、負債を回避した上で特定の財産のみを相続できる有効な手段です。

しかし、限定承認はほかの相続方法と比べて手続きが複雑であり、専門的な知識が必要となる場面も多くあります。

また、期限を過ぎてしまったり、被相続人の財産に手を付けたりすると、借金を相続しなければならなくなるリスクもあります。

限定承認を検討する際は、まず弁護士や司法書士などの専門家へ相談するのがおすすめです。

相続問題の実績豊富な専門家に依頼すれば、限定承認の判断から実際の手続きまで一括してサポートを受けられます。

 

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