相続人と連絡が取れないリスクと対処法

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分27秒です。

相続手続きのなかで問題となる事例の一つに、「相続人と連絡が取れない」という状況があります。

連絡が取れないケースとして、不仲や疎遠といった人間関係の問題だけでなく、生死不明の場合も考えられるでしょう。

相続人と連絡が取れない場合のリスクや対処方法などを、本記事では解説をしていきます。

連絡が取れない相続人がいて困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続人と連絡が取れない!無視する理由は?

相続人と連絡が取れない場合、相手方が無視する主な理由は下記の3つが考えられます。
・不仲
・疎遠
・生死不明

過去のトラブルで関係性が崩れていたり、絶縁状態になっていたりする場合には、連絡を無視されるケースも少なくありません。

連絡をほとんど取っていない状況や、父が認知した子どもなど一度も連絡を取ったことがない相手だと、無視される可能性は高くなるでしょう。

相手方が生きているかの確認ができないような状況では、返信が期待できないため、結果として無視された状態になるケースもあります。

 

一部の相続人と連絡が取れない場合は遺産分割できる?

相続人のうち、連絡の取れない人が一部でもいる場合には、遺産分割は基本的にできません。

遺産分割とは、相続人全員が参加して、相続財産についての分け方を決める手続きです。

連絡が取れない相続人がいる場合、まずは下記2つのポイントを押さえたうえでほかの相続人と連携するようにしましょう。
・勝手に遺産分割を進めることはできない
・リスクを伝えて説得する必要がある

それぞれ詳しく解説をしていきます。

勝手に遺産分割を進めることはできない

相続人のなかで連絡が取れない人がいる場合、勝手に遺産分割を進めることはできません。

相続の遺産分割に関しての協議は、すべての相続人の同意を前提としているため、一人でも参加していなければ原則として無効になるからです。

連絡が取れないからといって、一部の相続人を除外して協議を進めてしまうと、手続きのやり直しにつながる可能性があることは知っておきましょう。

リスクを伝えて説得する必要がある

連絡が取れない相続人がいる場合のリスクをほかの相続人に伝えて、協力するように説得していきましょう。

自分だけでは対応できない場合でも、ほかの相続人と協力することで連絡が取れる可能性が出てくるからです。

具体的には、連絡を取る方法について知恵を出し合ったり、ほかの相続人からも催促をするようにしたりしてください。

周りが積極的に協力してくれる体制をつくるために、リスクを明確に伝えて、問題意識を共有するようにしましょう。

 

連絡が取れないまま相続手続きを進めたときのリスク

連絡が取れないまま相続手続きを進めてしまうと、正式に遺産分割ができないため下記のようなリスクが生じます。
・預貯金を払い戻すのが難しい
・不動産が共有財産として扱われる
・相続財産の無断売却
・相続税を軽減する特例が受けられない

それぞれのリスクを明確に理解しておかないと、思わぬトラブルにつながる可能性があるため、それぞれ確認をしていきましょう。

預貯金を払い戻すのが難しい

相続があった事実を銀行が把握すると、遺産分割が完了するまでは、原則として被相続人の預貯金の払い戻しができなくなります。

遺産分割が完了していない状況で払い戻しを受けるためには、別途手続きが必要になってしまいます。

その際、必要な手続きをした場合でも、法定相続分の範囲内の一部の払い戻ししか受けられない点には注意をしてください。

連絡が取れない相続人がいる場合には、簡単には払い戻しが受けられなくなります。

不動産が共有財産として扱われる

遺産分割が完了するまでは、不動産はすべての相続人の共有財産として扱われます。

共有財産の状態では、ほかの相続人の同意がなければ売却や賃貸などができないため、不動産の自由な活用ができなくなります。

とくに、連絡が取れないような相続人と不動産を共有するケースでは、良好な関係で不動産を管理するのは難しいでしょう。

不動産を共有する相続人と意見が対立した場合には、裁判に発展する危険性もあるので注意が必要です。

相続財産の無断売却

相続人と連絡が取れない場合、無断で相続財産を売却されてしまうリスクがあります。

遺産分割前でも、法定相続分の範囲内であれば相続人は持分割合をほかの人に売ることができてしまいます。

勝手に売却などをされてしまうと、買い取った相手とトラブルになったりする可能性があるため注意しましょう。

相続税を軽減する特例が受けられない

相続人に連絡が取れないままの状態が続くと、相続財産の税金を軽減する特例が受けられなくなります。

遺産分割協議が成立していない場合には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの相続税を軽減する制度の利用ができないからです。

相続税の特例が受けられない状況になった場合、余計な税負担を強いられることになるため、すべての相続人が不利益を受けることになります。

 

相続人と連絡が取れないときの対処方法

相続人と連絡が取れないときの対処方法は、状況に応じて下記の4つがあります。
・相続人の住所地を調べる
・不在者財産管理人の選任を申し立てる
・遺産分割調停を申し立てる
・失踪宣言を行う

それぞれの対処法を詳しく解説をしていきます。

相続人の住所地を調べる

連絡が取れない相続人がいるときには、まずは相続人の住所地を調べる方法がないかを確認しましょう。

たとえば「戸籍附票」で住所地を確認したり、住所地を知っている知人がいないかなどを検討したりしてみてください。

住所地がわかれば、経緯を詳しく書いた手紙を送付したり、直接住所地に訪問したりするなどの対応ができます。

不在者財産管理人の選任を申し立てる

相続人が行方不明で連絡が取れない場合、不在者財産管理人の選任を申し立てましょう。

不在者財産管理人は、行方不明の相続人の代わりとして、遺産分割協議に参加できます。

そのため、不在者財産管理人を選任すれば、遺産分割協議を有効に成立させることが可能です。

ただし不在者財産管理人の選任には3ヶ月以上の時間を要する場合もあるため、早めに申し立てるようにしてください。

遺産分割調停を申し立てる

連絡が取れない相続人がいる場合には、遺産分割調停の申し立ても検討しましょう。

遺産分割調停を申し立てた場合、連絡が取れなかった相続人も含めて裁判所から呼出状が送付されます。

個人からの連絡を無視していた相続人でも、裁判所からの書面が届くことによって、連絡を無視するのは難しくなるでしょう。

失踪宣告を行う

連絡が取れない相続人の生死が不明の場合、失踪宣言を家庭裁判所に申し立てを検討しましょう。

行方不明になってから7年が満了したあとに失踪宣告がされると、死亡したものとみなされるため、相続手続きを進められます。

また特別な状況であれば、1年で認められる場合もあるため、制度が利用できそうであれば専門家に相談をするようにしましょう。

 

相続人と連絡が取れない場合にも放置をしない

相続人と連絡が取れない場合には、原則として遺産分割協議ができなくなるため、さまざまなリスクが生じます。

連絡が取れない場合にそのまま放置するのではなく、周りの相続人や裁判所なども巻き込んで対応するようにしましょう。

不在者財産管理人の選任や遺産分割調停などの手続きなどは、専門家の助けを借りないと難しい手段であるため、必要であれば弁護士に相談をするようにしてください。

感情的になりがちな相続人とのやり取りについても、弁護士を通すことで負担なく対応ができるようになります。

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