相続をきっかけに財産を取り戻す返還請求(不当利得返還請求)とは?

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分24秒です。

相続では、一部の相続人が相続財産を使い込んだり、被相続人の預金を勝手に引き出したりしてしまうケースがあります。

このような場合は、「不当利得返還請求」をすることで財産を取り戻せます。

しかし、不当利得返還請求とはなにか、またどのように請求すればいいのかわからない人も多いでしょう。

今回の記事では、不当利得返還請求の概要や具体的な事例・請求方法などについて解説します。

請求期限などの注意点も解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続における不当利得返還請求とは

不当利得返還請求とは、不当に利益を取得または使用した人に対して、損失を受けた人が利益の返還を求める請求です。

相続においては、相続財産を勝手に使い込んだ相続人に対して返還請求を行うケースなどがあります。

不当利得返還請求の要件は、以下のとおりです。
・請求される側が利益を得ていること
・請求する側が損失を被ったこと
・利益と損失の間に因果関係があること
・請求される側の利益に法律上の原因がないこと

上記の4つの要件をすべて満たしていれば、不当利得返還請求ができます。

財産の使い込みが疑われる場合は、不当利得返還請求が可能かどうかを確認しましょう。

 

不当利得返還請求できる相続のケース

不当利得返還請求できる可能性がある主な相続のケースは、次のとおりです。
・相続財産を使い込む
・被相続人の預金を勝手に引き出す
・被相続人の生命保険を無断で解約する

これらの行為が行われると、ほかの相続人の財産を受け取る権利が侵害されます。

それぞれのケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。

相続財産を使い込む

不当利得返還請求ができる代表的なケースとして、相続財産の使い込みが挙げられます。

相続人の一人が相続財産を独占し、ほかの相続人の同意を得ずに使い込んでしまった場合は不当利得返還請求が可能です。

たとえば、被相続人の自宅にあった現金を無断で使ったり、賃貸物件の賃料を横領して使ったりするケースがあります。

とくに自宅保管の現金の使い込みは、証拠を集めるのが困難な場合も多いため注意が必要です。

被相続人の預金を勝手に引き出す

被相続人の預金を私的な目的で勝手に引き出す行為も、不当利得返還請求の対象です。

相続手続きが正式に始まる前に預金が引き出されてしまうと、ほかの相続人にとって不利益となります。

とくに被相続人と同居している親族は、被相続人から通帳やキャッシュカードを預けられている場合もあるでしょう。

勝手な預金引き出しが発覚したら、どの目的で引き出したのか、なにに使ったのかをしっかり調査する必要があります。

被相続人の生命保険を無断で解約する

被相続人の生命保険を無断で解約し、解約返戻金を受け取る行為も不当利得に該当します。

基本的に生命保険を契約者以外が解約する際には、委任状が必要です。

そのため、生命保険が無断で解約されている場合は委任状を偽造して手続きを行った可能性が考えられます。

解約返戻金は本来なら受取人に渡るべき財産であるため、不正な解約が発覚した場合は不当利得返還請求による取り戻しが可能です。

 

相続で不当利得返還請求を行う流れ

相続において不当利得返還請求を行う基本的な流れは、以下のとおりです。
・不当利得の証拠を集め金額を計算する
・内容証明郵便で請求する
・請求相手と協議し合意を目指す
・合意に至らない場合は訴訟を提起する

証拠の収集から協議・訴訟まで段階的に進めることで権利の主張を明確にし、トラブルの解決を目指します。

各手順について、以下で具体的に確認していきましょう。

不当利得の証拠を集め金額を計算する

不当利得返還請求を行う際は、まず不当利得が発生した事実を証明できる証拠を集めます。

必要な証拠は使い込みが疑われる相続財産によって異なるため、状況に応じたものを収集しましょう。

たとえば、預金の使い込みであれば入出金履歴や取引明細、不動産の無断売却であれば売却契約書などが有効な証拠です。

証拠が集まったら、不当に得られている金額を計算します。

多額の財産や複数の財産が対象になる場合など、証拠集めが困難なケースでは弁護士への相談をおすすめします。

内容証明郵便で請求する

証拠集めと不当利得の計算ができたら、内容証明郵便で不当利得返還請求を行います。

内容証明郵便とは、いつ誰が誰に対してどのような内容の書面を送付したかを証明してくれる郵便サービスです。

不当利得に関しては、請求した事実を証拠に残せる内容証明郵便で返還請求を行うのが一般的です。

内容証明郵便に対する返答があれば、請求相手との協議に移行しましょう。

請求相手と協議し合意をする

内容証明郵便になんらかの返答があった場合は、請求相手と協議を行って合意を目指します。

協議では事前に集めた証拠をもとに不当利得の内容や金額を示し、返還金額や支払い方法を決定しましょう。

合意ができたら決定事項を記載した合意書を作成し、合意書の内容に沿って使い込まれた相続財産を返還してもらいます。

合意に至らない場合は訴訟を提起する

相手が請求に応じなかった場合や協議で合意に至らなかった場合は、不当利得返還請求訴訟を提起しましょう。

訴訟では集めた証拠やこれまで交渉した記録を提出し、法定で主張や反論を行います。

訴訟手続きでは最終的な判決が下されるまで時間がかかり、何度も裁判所に出廷しなければなりません。

証拠をもとに不当利得の事実を適切に主張し、有利な判決を得るためには、弁護士のサポートを得ることが望ましいです。

 

不当利得返還請求で相続財産を取り戻す際の注意点

相続において不当利得返還請求を行う場合、いくつかの注意点があります。
・不当利得返還請求権には時効がある
・相続税申告の期限に注意する

スムーズに財産を取り戻すためにも、注意点を正しく理解し対処しましょう。

各注意点について、以下で一つずつ解説していきます。

不当利得返還請求権には時効がある

不当利得返還請求権には、法律で定められた時効があります。

原則として、不当利得を知ったときから5年、もしくは不当利得が発生してから10年が経過すると時効が成立します。

時効が成立すると請求権が消滅し、返還請求が認められなくなってしまう可能性があるため早めの対応が重要です。

時効に間に合わない場合には、内容証明郵便による請求や訴訟の提起などによって成立を阻止することもできます。

相続税申告の期限に注意する

不当利得返還請求を行う際は、相続税申告の期限に注意しましょう。

相続税の申告は、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合や、特定の控除・特例を受ける場合に必要です。

相続税申告が必要な場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に手続きしなければなりません。

不当利得についての調査や交渉が長引くと、相続税申告に間に合わないというリスクが発生します。

遺産分割が間に合わない場合は暫定的に申告を行う、税理士に相談するなどの対策を講じましょう。

 

相続で不当利得返還請求を行う場合は弁護士に相談しよう

相続財産を無断で取得・使用された場合、不当利得として返還請求ができます。

しかし、不当利得返還請求には要件や取り戻せる範囲が規定されているため、すべての財産を取り戻せるとは限りません。

不当利得にあたるのか、どこまで請求ができるのかなど、疑問があれば一度専門家である弁護士へ相談してみてください。

弁護士のサポートを受けることで、請求準備や交渉・訴訟に発展した場合の手続きなどを一任できます。

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