相続登記の義務化についての改正【具体的な内容について】

 

この記事を読むのに必要な時間は約9分27秒です。

亡くなった人が保有していた不動産を相続した場合、相続人は所有者の名義を変更する手続きを行う必要があります。

不動産の名義変更手続きである「相続登記」は、2024年4月1日から義務化されました。

今回の記事では、相続登記の概要や義務化による罰則・具体的な対応方法などを詳しく解説します。

相続登記の義務化に関する不安がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続登記の義務化とは?概要や罰則を解説

相続によって土地や建物などの不動産を取得した場合、その登記が義務となるルールが適用されました。

従来は任意だった相続登記ですが、義務化後は手続きを怠ると罰則が科されるようになっています。
・そもそも相続登記とは?
・相続登記は2024年4月1日から義務化
・相続登記しない場合には罰則が課される

以下では基本的な情報として、相続登記義務化の概要や罰則の内容などについて確認していきましょう。

そもそも相続登記とは?

相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、登記簿上の名義を相続人の名義に変更する手続きです。

被相続人(亡くなった人)の名義から相続人の名義に変更すると、法的に所有権を証明できるようになります。

相続登記を行わないと、不動産を売却したり担保にしたりすることができず、将来的にトラブルの原因となる可能性があります。

相続登記は2024年4月1日から義務化

相続登記は、2024年4月1日から義務化されました。

以前まで相続登記は任意で行われていましたが、義務化以降は不動産を取得した相続人は期限内に相続登記を行う必要があります。

相続登記の期限は、相続が開始し不動産の所有権の取得を知った日から3年以内です。

正当な理由なく期限内に相続登記をしなかった場合、罰則が科される可能性もあるため注意しましょう。

なお、2024年4月1日より前の相続分に関しても義務化が適用されます。

2027年3月末まで猶予期間が設けられていますが、早めの対応が必要です。

相続登記しない場合には過料が課される

相続登記の義務化によって、登記申請をしない場合には罰則が科される可能性があります。

しかし、申告期限を過ぎた時点ですぐに罰則となるわけではありません。

正当な理由なく申告期限を過ぎた場合、まず法務局から登記を求める旨の「催告」が行われます。

催告を無視したり応じなかったりした場合には、「10万円以下の過料」が科されます。

過料とは、行政法規違反者に対して、国や地方公共団体が金銭の支払いを命じる罰則です。

相続登記をしていないとほかの相続人とのトラブルや権利関係の争いが起きるリスクもあるため、早めの対応を心がけましょう。

 

相続登記義務化の要因|放置する相続人が多い理由

相続登記が義務化された要因として、「所有者不明の土地」が全国的に増加している問題があります。

登記がされないまま何代にもわたって放置された土地は、所有者が誰かわからず、公共事業や開発が進められません。

では、なぜこれまで相続登記を放置する相続人が多かったのでしょうか。

考えられる主な理由は、以下のとおりです。
・手続きが複雑で難しいため
・相続登記に費用がかかるため
・相続人全員で手続きを行う必要があるため

それぞれの理由について、以下で詳しく解説していきます。

手続きが複雑で難しいため

相続登記の手続きは、専門的な知識が求められる場面も多く、一般の人には難しく感じられる場合があります。

たとえば、被相続人の戸籍謄本をすべて集めたり登記申請書を作成したりなど、必要書類の準備には手間がかかります。

また、市区町村の役所や法務局に何度か出向かなければならないため、時間を確保するのが難しいケースもあるでしょう。

相続登記に費用がかかるため

相続登記を行う際には、登録免許税や必要書類の取得費用を支払う必要があります。

また、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するとなると、依頼費用も用意しなければなりません。

用途が決まっていない不動産を取得した場合、「使い道のない土地にお金をかけたくない」と考える相続人も多いでしょう。

とくに資産価値が低く売却が難しい不動産は、相続登記にかかる費用の方が高額になってしまうおそれもあります。

相続人全員で手続きを行う必要があるため

被相続人の遺言が残されていない場合、相続登記を行う前に相続人全員が参加する「遺産分割協議」で遺産の分け方を決定します。

遺産分割協議とは、だれがどの財産をどのくらい相続するかを決める話し合いです。

協議を成立させるためには相続人全員の合意が必要ですが、相続人の数が多いと連絡をとるだけでも難しい場合があります。

また、話し合いがまとまらず、手続きが長期化あるいは完全に止まってしまうケースもあるでしょう。

相続登記は単独では進められないため、手続きが進まないまま年月が経ってしまうことも少なくありません。

 

相続登記の義務化に対応する具体的な方法

相続登記が義務化された今、相続人は期限内に適切な手続きを行う必要があります。

具体的な対応方法は、次の4つです。
・3年以内に相続登記を行う
・3年以内に共有登記を行う
・3年以内に相続人申告登記を行う
・相続放棄を選択する

事前に対応策を知っておけば罰則が科されるリスクを避けられ、相続トラブルも未然に防げるでしょう。

以下で一つずつ解説していきます。

3年以内に相続登記を行う

もっとも基本的かつ確実な対応方法は、相続が発生し不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を済ませることです。

相続登記を行うためには、遺言書または遺産分割協議によって遺産分割を成立させておく必要があります。

相続手続きがスムーズに進んでいれば問題ありませんが、相続人間で合意が得られず手続きが止まってしまうケースもあるでしょう。

期限に間に合うか不安なときは、弁護士や司法書士などの専門家に相談するか、共有登記・相続申告登記を検討する必要があります。

3年以内に共有登記を行う

申告期限内に「共有登記」を行うのも、相続登記の義務化に対応する手段の一つです。

共有登記とは、相続人全員の共有名義で登記を行う方法で、遺産分割がまとまっていない状況でも登記義務を履行できます。

共有登記を行う場合も、相続が発生し不動産の取得を知った日から3年以内に申告する必要があります。

後日、正式に遺産分割が成立したら、遺産分割成立日から3年以内にあらためて単独名義への変更を行いましょう。

なお、共有登記の手続きでは相続人の範囲や相続分の確定が必須となります。

事前に被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し確認しておく必要がある点には、注意が必要です。

3年以内に相続人申告登記を行う

相続登記の義務化に簡易的に対応できる手段として、「相続人申告登記」という新たな登記方法があります。

相続人申告登記とは、申告期限内に自身が相続人である旨を申し出ることで登記義務を履行したとみなす手続きです。

相続人申告登記をするにあたって、相続人の範囲や遺産分割の内容を確定させる必要はありません。

また、相続人が複数いる場合であっても単独で申請できるため、とりあえず期限に間に合わせたいときの方法として有効です。

相続人申告登記後に遺産分割が成立した際は、遺産分割成立日から3年以内に相続登記の申請を行いましょう。

相続放棄を選択する

不動産を含む相続財産を引き継がないと決めた場合は、「相続放棄」を選択する方法もあります。

相続放棄とは、被相続人の財産や負債などの権利義務の一切を放棄する手続きです。

相続放棄をすると最初から相続人ではなかったとみなされるため、相続登記の義務そのものがなくなります。

相続放棄は家庭裁判所での申述手続きが必要で、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に行わなければなりません。

また、一部の財産だけを放棄することはできないため、相続財産の全体を把握した上で慎重に判断する必要があります。

 

相続登記は義務化されたため期限内に忘れず手続きを行おう

相続によって不動産を取得した相続人は、相続登記を行う義務を負います。

対応が遅れると将来的な手続きがより複雑になる可能性や、罰則の対象になるおそれがあるため注意が必要です。

自身での判断が難しい場合は、弁護士や司法書士といった専門家への相談を検討してみてください。

早い段階で相談しておけば、リスクを避けてスムーズに手続きを進められるようになります。

不明点や疑問点は放置せず、専門家のサポートも活用しながら対応

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