遺産分割調停の流れ
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遺産分割は繊細な問題であり、相続人間での対立を引き起こしてしまうケースも少なくありません。
協議が難航した場合には、法的な手続きが必要となる可能性もあるでしょう。
今回の記事では、遺産分割調停という手続きに焦点を当て、その基本的な流れや注意点を解説していきます。
遺産分割調停とは何か、どのように進めればいいのか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
遺産分割調停とは?
遺産分割調停とは、家庭裁判所の裁判官と調停委員による仲介のもと、遺産の分割方法について話し合う手続きです。
裁判官と調停委員は中立的な立場で双方の意見を聞き、合意に至るよう調整するため、法律的に妥当な内容での解決を目指せます。
遺産分割協議を行うタイミングとかかる期間について、以下で詳しく見ていきましょう。
遺産分割調停のタイミング
遺産分割調停を行うタイミングとして、以下のようなケースが挙げられます。
・遺産分割協議が決裂した
・意見が対立していて長期間協議が進まない
・遺産分割協議に不参加の相続人がいる
基本的には、相続人間での話し合いによる解決が難しい場合に、遺産分割調停の手続きを進めるケースが多いです。
また、遺産の分け方を決める遺産分割協議には相続人全員が参加しなければならないため、参加しない相続人がいると協議をはじめられません。
協議が難航している場合は、対立がエスカレートする前に裁判所の介入を求め、スムーズな解決を目指しましょう。
遺産分割調停にかかる期間
遺産分割調停にかかる期間は一般的に半年から1年程度とされています。
滞りなく話し合いが進めば数ヶ月で終了しますが、遺産構成が複雑であったり意見の対立が深刻だったりする場合には、1年以上の期間を要する可能性もあります。
早期解決を望むのであれば、事前にしっかりと準備をして調停に臨む必要があるでしょう。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停の基本的な流れを、次の段階別で解説していきます。
・~調停前まで
・調停当日|調停室入室前
・調停当日|調停室入室後
・調停後
・調停不成立の場合
各段階には、必要な手続きとやるべき準備があります。
事前に大まかな流れを理解しておくことで、迷わずに遺産分割調停を進められるでしょう。
~調停前まで
遺産分割調停を申し立てる場合、まず必要書類を集めて家庭裁判所へ提出します。
調停申し立てに必要となる主な書類は、以下のとおりです。
・申立書
・事情説明書
・送達場所等の届出書
・進行に関する照会回答書
・戸籍謄本(戸籍附票)と住民票
・相続関係図
・遺産を証明する資料
申し立てが受理されると、家庭裁判所で調停期日(調停が行われる日時)が決定され、申立人と相続人全員へ通知が送られます。
通知がきたら裁判所の指示に従い、調停期日へ向けて「答弁書」や「進行に関する照会回答書」の準備を進めましょう。
調停当日|調停室入室前
調停当日は、必要な持ち物を準備し、指定された時間より少し早く家庭裁判所に到着するようにしましょう。
遺産分割調停当日には、以下のようなものが必要となります。
・裁判所から送られてきた書類
・裁判所へ提出した書類の控え
・身分証明書
・認印
・筆記用具
・調停で見せる資料や、話す内容をまとめたメモ
一回目の調停期日には、調停室へ入る前に遺産分割調停の内容や手続きに関する説明が行われるのが一般的です。
調停当日|調停室入室後
調停がはじまり自分の番がきたら、調停委員の案内に従って調停室へ入室しましょう。
基本的には申立人と相手方の相続人が交互に、2回ずつ調停室で調停委員と話をします。
調停委員との話が終了すると、その日に合意できた内容と、次回の調停期日以降に解決する議題が取りまとめられます。
一回目の調停で終わるケースは少なく、1〜2ヶ月に1回のペースで、3〜8回程度調停を行うのが一般的です。
調停後
遺産分割調停によって合意できた場合には、家庭裁判所が合意した内容を調停調書にまとめます。
遺産分割協議で合意した場合は遺産分割協議書を作成しますが、調停証書は遺産分割協議書と同様の効力をもつ書面であるため、別途書面を作成する必要はありません。
その後の相続人間での遺産分割は、調停証書の内容に沿って手続きを進めていきましょう。
調停不成立の場合
遺産分割調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続きへ移行します。
審判とは、当事者から提出された書類や調査員が行った調査結果をもとに、裁判官が判断を下す手続きです。
審判内容に対して異議を唱える相続人がいなければ、審判が確定し、その内容に従って相続手続きを進める必要があります。
遺産分割調停を有利に進めるためのポイント
遺産分割調停を有利に進めるために意識すべきポイントは、次の5つです。
・主張したい内容を事前に準備しておく
・相手を理解する姿勢
・客観的な資料を用意する
・感情的な言動を控える
・弁護士に依頼する
上記のポイントを押さえておくと、遺産分割調停を有利に進められる可能性が高まります。
それぞれどのような点を意識しておくべきなのか、以下で具体的に確認していきましょう。
主張したい内容を事前に準備しておく
調停は事実にもとづいた合理的な話し合いが行われる場であるため、主張したい内容は事前にしっかりと準備をしておく必要があります。
なにも準備をせず出席すると、感情に流された主張をしてしまう可能性があり、調停委員に悪い印象を与える原因となります。
また、緊張してうまく話せないケースも考えられるため、調停の場で話しておきたい内容はメモにまとめて持参するといいでしょう。
相手を理解する姿勢
調停では、自分の主張を話すだけでなく、相手方の意見や立場への理解も大切です。
相手の要望や主張を聞き、その上で自分の意見を述べると、相手も自分の意見に耳を傾けやすくなるでしょう。
調停で解決するためには、しっかりと話し合い、双方が納得する形で合意する必要があります。
客観的な資料を用意する
遺産分割調停では、意見が対立するケースも珍しくないため、客観的な証拠となる資料の用意も重要です。
証拠となる資料は話し合っている内容によって異なりますが、遺言書の筆跡鑑定・財産の評価書・預金通帳の取引履歴などが挙げられます。
自分の主張が正当であると示すのは、相手からの反論を防ぎ、調停委員を納得させる上で効果的な手段となります。
感情的な言動を控える
調停は公平な立場から問題解決を図る場であるため、感情的な言動や行動をすると不利にはたらく可能性があります。
無礼な態度や強引な主張をしてしまうと、相手方だけでなく調停委員にも悪い印象を与えかねません。
できる限り冷静に、事実にもとづいて話すように心がけましょう。
弁護士に依頼する
遺産分割には、相続問題に関する法律知識も必要となります。
個人的な要望があったとしても、法律にもとづいていない内容であれば、調停委員の同意を得るのは難しいでしょう。
弁護士に依頼すると、自分の考えを適切に主張・立証できるため、調停手続きにおいても有利に進められる可能性が高まります。
遺産分割調停の流れや手続きで悩んだら弁護士に相談しよう
遺産分割調停は、相続人間での遺産の配分に問題が生じた際の解決手段の一つです。
調停に挑む際は事前に自分の主張をしっかりと準備し、感情的にならず、相手の意見も尊重する姿勢をもつようにしましょう。
調停では当事者双方の言い分があるため、自分の主張を100%とおすのは難しいケースが多いです。
しかし、対策次第では自分に有利な方向に進めていける可能性もあるため、必要に応じて専門家である弁護士への相談を検討してみてください。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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