相続の遺産分割協議書とは?作成の流れや書き方
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分23秒です。
相続人が遺産の分割方法について話し合う遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議書という書面を作成するのが一般的です。
遺産分割協議書について、具体的にどのような書面なのか、どうやって作成すればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、遺産分割協議書を作成する際の流れや書き方について詳しく解説します。
作成時に注意すべきポイントも解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続の遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で相続人が合意した内容をまとめた書面です。
相続人全員が参加する遺産分割の方法や相続割合を決めるための話し合いを、遺産分割協議といいます。
遺産分割協議で相続人全員の合意を得たら、合意した相続内容を記載した遺産分割協議書を作成しましょう。
作成する義務はありませんが、相続内容を証明する書面として、遺産の名義変更手続きや相続税申告などの手続きに必要となります。
また相続人同士のトラブルを防止するためにも、遺産分割協議を行ったら遺産分割協議書は作成しておくのが望ましいです。
遺産分割協議書を作成する流れ
遺産分割協議書を作成するまでの基本的な流れは、次のとおりです。
・相続人を確定させる
・被相続人の財産を調査する
・遺産分割協議を行う
・遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議書は遺産分割協議で合意した内容を記載した書類であり、遺産分割協議を行うためには相続人や財産を調査し確定させる必要があります。
それぞれの工程で行うべき具体的な内容について、以下で確認していきましょう。
相続人を確定させる
遺産分割協議書の作成前に行うべきなのは、相続人の確定です。
遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があるため、まず協議に参加する相続人を確定させなければなりません。
亡くなった人の相続人が誰になるのかは、戸籍謄本などを取り寄せれば確認できます。
後から相続人の見落としが発覚すると、遺産分割協議が無効となりやり直しが必要となってしまうため、調査は怠らないようにしましょう。
被相続人の財産を調査する
相続人の確定のほかに行うべきなのは、被相続人(亡くなった人)の財産の調査です。
相続財産には、預貯金や株式・不動産のようなプラスの財産だけでなく、借入金などマイナスの財産も含まれます。
確認方法としては、被相続人の自宅にある書類や通帳を確認するほか、取引していた金融機関や保険会社への問い合わせなどが挙げられます。
漏れがないようにしっかり確認し、確定した財産については財産目録を作成して記録しておくといいでしょう。
遺産分割協議を行う
相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議では、誰がどの財産を相続するのか、分割方法を相続人全員で話し合って決定します。
相続人の居住地や状況によって全員が同じ場所に集まれない場合は、電話やメール・手紙などのやり取りでも問題ありません。
なお相続人間でもめていて話し合いが進められないときには、専門家である弁護士への相談を検討しましょう。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で分割方法が決まったら、合意した内容をもとに遺産分割協議書を作成します。
署名には、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
不明瞭な内容だと相続手続きで提出後に修正を求められる可能性もあるため、記載漏れや不備がないかよく確認するようにしましょう。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書を自分で作成する際の書き方について、次の項目別で解説します。
・パソコンでも手書きでも作成可能
・遺産分割協議書に記載する内容
遺産分割協議書は相続内容の証明として、その後の相続手続きでも利用する可能性があるため、書き方のポイントはしっかり押さえておきましょう。
パソコンでも手書きでも作成可能
遺産分割協議書の書式に決まりはなく、パソコンと手書きどちらでも作成できます。
しかし相続人全員分作成する必要があるため、パソコンで作成した方が手間を軽減できるでしょう。
遺産分割協議書の作成で重要なのは、文書の内容が明確に記載されており、読みやすく理解しやすい形式であることです。
なおパソコンと手書きどちらで作成したとしても、すべての書面に相続人全員の署名と押印が必要となります。
遺産分割協議書に記載する内容
遺産分割協議書を作成する際は、主に以下の情報を記載します。
・被相続人の名前と死亡日
・相続人全員の合意を示す内容
・分割する相続財産の詳細
・相続人全員の住所
・相続人全員の署名と実印の押印
遺産分割協議書には、誰がどの財産を相続するかを明確に記すようにしましょう。
できるだけ漏れのないように確認すべきですが、発見できないまま後から追加の財産が見つかるケースもあります。
対策として後日判明した財産の取り扱い(誰が相続するか)も記載しておくと、遺産分割協議のやり直しを防げます。
遺産分割協議書の作成で注意すべきポイント
遺産分割協議書の作成で注意すべき点は、主に次の3つです。
・遺産分割協議は早めに行っておく
・相続人の数だけ用意し全員で保管する
・作成後の変更は難しいため慎重に判断する
注意点を事前に知っておけば、適切に遺産分割協議書を作成できます。
各注意点について、以下で一つひとつ見ていきましょう。
遺産分割協議は早めに行っておく
遺産分割協議書の作成に期限はありませんが、遺産分割協議は相続開始後できるだけ早めに行っておくのが望ましいです。
一部の相続手続きには期限があり、たとえば相続放棄の手続きは相続開始を知ってから3ヶ月以内、相続税の申告は10ヶ月以内に行わなければなりません。
遺産分割協議によって相続財産の分割方法を確定しておくと、その後の相続手続きがスムーズに進められます。
後回しにしていると予期していなかったトラブルが発生する可能性もあるため、早い段階で協議の準備を進めましょう。
相続人の数だけ用意し全員で保管する
遺産分割協議書は1通だけではなく、相続人の数だけ用意して全員で保管しておく必要があります。
全員がそれぞれ保管しておけば、将来的に相続に関する問題が生じた場合にも、相続した財産の内訳を容易に証明できるようになります。
印鑑証明書も添付し、同じ内容の遺産分割協議書を各相続人が1通ずつ所持しておくようにしましょう。
作成後の変更は難しいため慎重に判断する
遺産分割協議書は、一度作成するとその後の変更が難しいため、慎重に判断する必要があります。
後から変更したい箇所が見つかった場合でも、一人の相続人が勝手に修正を加えることはできません。
遺産分割協議書の内容を変更する際は再度相続人全員による合意が必要となり、相続財産の名義変更手続きや相続税申告の遅れにもつながります。
不安がある場合には、必要に応じて専門家のアドバイスを求めるのも有効です。
相続時の遺産分割協議書作成で悩んだら専門家に相談しよう
遺産分割協議書の作成に際しては、明確な決まりはないものの、記載しておかなければならない情報があります。
また相続財産の証拠として有効な遺産分割協議書を作成するためには、相続人の確定と財産の調査が不可欠です。
すべての手続きを自分で行うのは負担が大きくなりやすいため、少しでも不安な点や疑問があれば、弁護士に相談しましょう。
とくに分割方法で相続人同士がもめている場合には、大きなトラブルに発展しないよう早めに弁護士へ相談し介入してもらうのが望ましいです。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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