相続税で気を付けておきたいペナルティ
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分54秒です。
相続が発生すると、相続財産の金額に応じた相続税の申告・納付が必要になる場合があります。
相続税の申告期限はいつなのか、申告しなかった場合はどのようなペナルティがあるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、相続税の申告・納付期限と、無申告によって科されるペナルティについて詳しく解説します。
ペナルティを回避するためのポイントや、相続税申告が不要なケースについても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続税の申告・納付には期限がある
相続税の申告・納付には期限が定められており、被相続人が死亡したと知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。
10ヶ月という期間は、一見長く感じるかもしれません。
しかし、相続手続きには相続人の確定・財産調査・遺産分割協議など、多くの時間と労力を要する手続きが伴います。
そのため、相続が発生したら期限内に手続きを終えられるよう、早めに行動することが大切です。
なお、自然災害や新型コロナウイルス感染など、特殊な事情があれば例外的に申告期限の延長が認められる場合もあります。
相続税の無申告で科されるペナルティ
相続税の申告を期限内に行わなかった場合、以下のようなペナルティが科される可能性があります。
・延滞税|納付までの日数に応じて課される延滞税
・無申告加算税|無申告に対する加算税
・過少申告加算税|申告した相続税の不足に対する加算税
・重加算税|悪質な不正行為に対する加算税
これらのペナルティは、経済的な負担となるだけでなく、手続きが複雑化する要因にもなるため注意が必要です。
4つのペナルティについて、以下で詳しく確認していきましょう。
延滞税|納付までの日数に応じて課される延滞税
相続税を期限内に納付できなかった場合、原則として期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税が課されます。
令和3年1月1日以降の延滞税の割合は、以下のとおりです。
納付する日 | 延滞税の割合 |
納期限の翌日から2ヶ月目まで | 以下いずれかの低い割合
・年7.3% ・延滞税特例基準割合+1% |
納期限の翌日から2ヶ月目以後 | 以下いずれかの低い割合
・年14.6% ・延滞税特例基準割合+7.3% |
延滞税特例基準割合とは、銀行の短期貸出約定平均金利から算出される割合で、毎年変動します。
納期限の翌日から2ヶ月以上経過すると、延滞税の税率が高くなるため注意が必要です。
無申告加算税|無申告に対する加算税
無申告加算税は、申告期限を過ぎても正当な理由なく相続税の申告をしなかった場合に課される税金です。
たとえば、税務調査を受けてから期限後申告した場合、相続税額に以下の割合を乗じた金額を納付する必要があります。
相続税額 | 無申告加算税の割合 |
50万円までの部分 | 15% |
50万円超えから300万円までの部分 | 20% |
300万円を超える部分 | 30% |
納税者に責められるべき理由がなければ、300万円を超える割合の無申告加算税の課税対象になりません。
また、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合は、税務調査後よりも低い税率となります。
申告するタイミングによって税率が異なるため、無申告に気づいたら速やかに申告手続きを行うようにしましょう。
過少申告加算税|申告した相続税の不足に対する加算税
過少申告加算税は、相続税の申告を行ったものの、申告した金額が実際の納税額よりも少なかった場合に課されます。
税務署から指摘を受けた場合の過少申告加算税の割合は、以下のとおりです。
追加で納付する相続税額 | 税務調査の事前通知を受け、税務調査前に修正申告した場合 | 税務調査後に修正申告した場合 |
50万円までの部分 | 5% | 10% |
50万円を超える部分 | 10% | 15% |
税務調査の事前通知前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は課税されません。
なお、修正申告時点で本来納付するべき期限を過ぎている場合は、過少申告加算税と延滞税の両方を支払う必要があります。
重加算税|悪質な不正行為に対する加算税
相続財産を意図的に隠したり偽ったりした場合は、無申告加算税や過少申告加算税の代わりに重加算税が課税されます。
課税時の状況 | 重加算税の割合 |
無申告 | 40% |
過少申告 | 35% |
重加算税は意図的な不正行為が認められた際の厳しいペナルティであるため、ほかの加算税と比べて高い税率です。
なお、過去5年以内に相続税の無申告加算税もしくは重加算税を課されていた場合には、上記の割合に10%加算されます。
相続税のペナルティを回避するためのポイント
相続税のペナルティを回避するために意識すべきポイントは、次のとおりです。
・相続開始後は速やかに手続きを進める
・相続財産を正確に把握する
・専門家に手続きを依頼する
相続税の申告・納付には期限があるため、相続が開始したらできるだけ早く手続きを開始する必要があります。
とくに相続財産の把握や評価には時間がかかるケースが多いため、余裕をもって早めに対応しましょう。
なお、以下のようなケースに当てはまる場合は、スムーズに手続きを進めるためにも専門家に相談・依頼するのをおすすめします。
・相続手続きをする時間がない
・相続財産が多く相続税の計算が困難
・分割の難しい不動産が相続財産に含まれている
・遺産分割で相続人ともめている
相続税の申告が不要なケース
通常、相続が発生した場合は相続税の申告が必要となりますが、場合によっては申告が不要となるケースもあります。
・相続財産の総額が基礎控除額以下の場合
・控除の適用によって税額が0円になる場合
相続税の申告を行う前に、まずは自身のケースで申告が必要かどうかを確認するようにしましょう。
申告不要となる主なケースについて、以下で詳しく解説していきます。
相続財産の総額が基礎控除額以下の場合
相続財産の総額が基礎控除額を下回っている場合、相続税の申告は必要ありません。
相続税には基礎控除と呼ばれる制度があり、相続財産の総額が一定額以下であれば相続税は課税されないためです。
基礎控除額の計算式は、以下のように決められています。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども1人の場合、基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)となります。
このケースでは、相続財産の総額が基礎控除額の4,200万円以下の場合であれば、相続税の申告は不要です。
控除の適用によって税額が0円になる場合
税額控除の適用によって相続税額が0円になる場合、相続税の申告は必要ありません。
適用によって相続税が0円になる可能性のある控除は、たとえば以下のようなものがあります。
・障害者控除
・未成年者控除
・相次相続控除
控除にはそれぞれ適用条件が定められているため、対象となるかどうかは事前に調べるようにしてください。
なお、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、相続税申告をしなければ適用できない控除もあるため注意しましょう。
相続税のペナルティに不安があれば専門家に相談しよう
相続手続きは複雑で手間のかかる作業が多く、気づかないまま申告期限が過ぎてしまったというケースも少なくありません。
延滞税や加算税などの思わぬペナルティを科される事態を防ぐために、少しでも不安があれば専門家への相談を検討しましょう。
相続手続き全般の悩みやトラブル解決であれば弁護士、相続税申告や節税対策であれば税理士に相談するのがおすすめです。
専門家は豊富な知識と経験をもとに、相続手続きをスムーズに進めるためのサポートをしてくれます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら手続きを進めていきましょう。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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