相続問題における裁判費用はどの位?
〇この記事を読むのに必要な時間は約9分5秒です。
相続トラブルを当事者間の話し合いで解決できない場合は、裁判所を介した手続きを検討する必要があります。
しかし、裁判手続きでどのくらい費用がかかるのかわからず不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
相続に関する調停・審判・裁判ではさまざまな費用がかかるため、事前に把握しておくことが重要です。
今回の記事では、相続問題で裁判所に支払う費用や準備に必要な費用、弁護士に依頼する場合の費用などを詳しく解説します。
目次
相続問題を解決するために裁判所に支払う費用
相続に関するトラブルが話し合いで解決しない場合は、裁判所を利用して解決を目指します。
裁判所を利用する際には、申し立て費用や手数料などの支払いが必要です。
・遺産分割調停や審判の申し立て費用
・裁判で発生する手数料
それぞれの費用について、以下で詳しく見ていきましょう。
遺産分割調停や審判の申し立て費用
遺産分割に関する話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てができます。
調停で合意に至らなかった場合は、「審判」に移行します。
これらの申し立てには、以下の費用が必要です。
・被相続人一人につき1,200円分の収入印紙
・郵便切手代数千円
郵便切手代は、裁判所が関係者に通知を送るために必要な費用です。関係者が多い場合は、当然、費用も増えます。
裁判所によって金額が異なるため、事前に申し立てを行う裁判所に確認しましょう。
裁判で発生する手数料
遺産分割の問題については、通常裁判で争うことはできません。
しかし、相続財産や相続人の範囲・遺言書の有効性・遺産の使い込みなどの問題が生じている場合、裁判を行うケースがあります。
裁判を提起する際に裁判所に支払う手数料(訴状に貼る収入印紙額)の一例は、以下のとおりです。
訴額(訴訟の目的の価額) | 手数料 |
10万円 | 1,000円 |
50万円 | 5,000円 |
100万円 | 1万円 |
300万円 | 2万円 |
500万円 | 3万円 |
そのほか数千円分の郵便切手代や、証人の日当・鑑定料・訴訟記録のコピー代などの費用がかかります。
費用は訴えの内容や裁判所によって異なるため、実際にかかる金額は訴状を提出する裁判所に確認しましょう。
相続問題の調停・審判・裁判の準備にかかる費用
相続問題を裁判手続きで解決するためには、事前の準備が欠かせません。
その中でも、下記の3つの事前準備にかかる費用は、相続問題の関係者にはとくに重要なポイントです。
・相続人調査に必要な費用
・相続財産調査に必要な費用
・不動産の価値を鑑定する費用
それぞれの費用について、以下で具体的に解説していきます。
相続人調査に必要な費用
相続人の調査は、遺産分割を進める上で基本となる手続きです。
遺産分割調停や審判を行う際にも相続人全員が参加しなければならないため、しっかり調査しておく必要があります。
相続人調査に必要な書類を集めるときは、以下のような費用がかかります。
取得する書類 | 費用 |
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 1通あたり450円から750円 |
住民票 | 1通あたり200円から400円程度 |
相続人の数が多いと、書類を複数取得する必要があるため取得費用も高くなります。
住民票の取得費用は自治体によって異なるため、取得する自治体で確認するようにしてください。
相続財産調査に必要な費用
遺産分割を進める際は、相続人のほかに相続財産も正確に把握する必要があります。
預貯金や有価証券・不動産・借金などすべての財産を漏れなく調査しましょう。
相続財産調査に必要となる主な費用は、以下のとおりです。
取得する書類 | 費用 |
銀行や証券会社の残高証明書 | 1通あたり550円から1,100円程度 |
固定資産税評価証明書 | 1通あたり300円から400円程度 |
金融機関や自治体によっても異なるため、具体的な費用が知りたい場合は個別に確認が必要となります。
なお、弁護士や司法書士・税理士などの専門家に財産調査を依頼した場合の相場は、 10万円から30万円程度が目安です。
不動産の価値を鑑定する費用
不動産を相続する場合、その価値は相続税の計算や遺産分割の基準となります。
正確に把握するためには、専門的な鑑定が必要になるケースもあるでしょう。
不動産の鑑定を依頼する場合、不動産の種類や鑑定評価額によって異なりますが1つの不動産について、20万円から60万円程度が相場です。
相続人が直接鑑定を依頼した場合は、原則として鑑定依頼した相続人が費用を負担します。
裁判所を通じて依頼した場合は当事者同士で折半になります。
相続問題の調停・審判・裁判を弁護士に依頼する場合の費用
相続問題が複雑化し、調停・審判・裁判へ進む場合、弁護士に依頼すると手続きをスムーズに進められます。
しかし、弁護士に依頼するには費用がかかるため、事前に相場を把握しておくことが重要です。
・相談料の相場
・着手金の相場
・報酬金の相場
・実費・日当の相場
それぞれどのような費用なのか、また相場はどれくらいなのかを以下で一つずつ確認していきましょう。
相談料の相場
相談料は、弁護士に法律相談をする際にかかる費用です。
時間ごとに料金を設定しているのが一般的で、相場が30分5,000円から10,000円程度となります。
初回の相談は無料としている法律事務所もあるため、事前に確認した上で相談先を検討しましょう。
最近では対面だけでなく電話やメールによる相談が可能な事務所も増えており、気軽に法律相談を利用できるようになっています。
着手金の相場
着手金は、弁護士に具体的なサポートを依頼したタイミングで支払う費用です。
着手金の金額は、依頼内容の難易度や相続財産の総額などによって異なります。
一般的な相続問題であれば20万円から50万円程度が相場ですが、状況によってはさらに高額になるケースもあるでしょう。
後払いや分割払いに対応している法律事務所もあるため、一括で支払うのが難しい場合は一度相談してみることをおすすめします。
なお、着手金は結果にかかわらず支払う費用であり、希望通りの結果にならなかったとしても返金はされません。
報酬金の相場
報酬金は、弁護士が案件を解決した際に支払う成功報酬のような費用です。
報酬金の金額は、基本的には調停・審判・裁判などで得られた金額(経済的利益)によって変動します。
法律事務所によっても料金設定は異なりますが、下記のような金額を採用しているケースが多いです。
経済的利益 | 報酬金 |
300万円以下 | 16% |
300万円超え3,000万円以下 | 10%+18万円 |
3,000万円超え3億円以下 | 6%+138万円 |
3億円超え | 4%+738万円 |
必ず上記の金額が設定されているわけではないため、実際にかかる費用は依頼する弁護士に確認するようにしてください。
実費・日当の相場
実費とは、裁判所への提出書類の作成費用・交通費など、案件を進める上で実際にかかる経費です。
実費の相場は1万円から5万円程度ですが、遠方の裁判所へ出向く場合は交通費がかかるため10万円以上となる可能性もあります。
日当は、弁護士が事務所の外に出向く必要がある場合に発生する費用です。
半日拘束で3万円から5万円、1日拘束で5万円から10万円が相場ですが、具体的な料金設定は法律事務所によって異なります。
相続問題の裁判費用が気になる場合には弁護士に相談しよう
相続トラブルがこじれた際は、調停や裁判といった法的な手続きを検討しなければなりません。
しかし、裁判所で手続きを行うためには申し立て費用や手数料・書類準備に必要な費用が発生します。
法的な手続きは時間もかかりますし、費用の算出が難しいケースも少なくないため、不安がある場合は早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
費用面も含めて事前にしっかりと情報収集を行い、納得のいく形で相続問題を解決できるよう準備を整えましょう。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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