相続人と連絡がとれない場合の問題と対策

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分44秒です。

相続が発生した際、相続人の一人と連絡が取れないと、遺産分割協議が進まず手続きが滞ってしまいます。

相続人が音信不通であったり、意図的に連絡を無視されたりすると、どのように対処すればいいのか悩むケースもあるでしょう。

今回の記事では、相続人と連絡が取れない場合の対応策や、行方不明時の対処法について詳しく解説します。

スムーズに相続手続きを進める具体的な方法を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続人と連絡が取れない場合はどうすればいい?

相続が発生した際、遺言書が残されていない場合は遺産分割協議を行う必要があります。

しかし、遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があるため、連絡が取れない相続人がいると手続きを進められません。
・連絡が取れない相続人がいると遺産分割協議を進められない
・遺言書があればそのまま相続手続きを進められる可能性がある

以下では、連絡が取れない相続人がいる場合の影響と、その対処法について解説していきます。

連絡が取れない相続人がいると遺産分割協議を進められない

連絡が取れない相続人がいる場合、遺産分割協議を進められません。

遺産分割協議とは、遺産の分け方や取り分について相続人全員で話し合う手続きです。

遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しないため、一人でも欠けると手続きがストップしてしまいます。

預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続手続きも、相続人が欠けている状態で勝手に進めることは基本的にできません。

そのため、一部の相続人と連絡が取れない場合には、住所を調べて手紙を送るなどの対策を講じる必要があります。

遺言書があればそのまま相続手続きを進められる可能性がある

遺言書が残されている場合、連絡が取れない相続人がいても、遺産分割協議をせずに相続手続きを進められる可能性があります。

たとえば、連絡が取れる相続人だけに財産を渡す旨が記載されていた場合です。

遺言書が残されている場合は原則として遺言の内容に従って相続するため、遺産分割協議なしで相続手続きを行えます。

ただし、遺言書の形式には決まりがあるため、法的に有効なものかどうかはよく確認しておく必要があります。

 

相続人と連絡が取れない・無視されるときの手続きの進め方

相続人の一部と連絡が取れない、あるいは意図的に無視される場合、遺産分割協議が進まず、相続手続きが滞ってしまいます。

こうした状況で相続を進めるためには、以下のような流れで手続きを行う必要があります。
・戸籍謄本を取得して相続人を調査する
・戸籍附票を取得して相続人の住所を確認する
・さまざまな方法で相続人に連絡を取る
・弁護士に依頼して代理人から連絡してもらう
・非協力的な場合は遺産分割調停を申し立てる

それぞれの手続きについて、以下で具体的に確認していきましょう。

戸籍謄本を取得して相続人を調査する

まず、相続人の正確な範囲を確認するために、被相続人・相続人らの関係者の戸籍謄本・除籍謄本を取得しましょう。

戸籍謄本には、個人の身分事項が記載されており、誰が被相続人の相続人に該当するのかを把握できます。

相続人が兄弟姉妹や甥姪にまで及ぶ場合などは、複数の戸籍をたどる必要があるため、手間がかかる可能性もあります。

しかし、正確に相続人が誰であるかを把握しなければ、遺産分割の手続きを取ることもできません。

戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得できますが、遠方の場合は郵送での請求も可能です。

なお、2024年3月1日に戸籍法が改正され、新たに「戸籍謄本等の広域交付制度」が導入されました。この制度により、戸籍謄本の取得が本籍地以外の役所でも可能できます。ただし、この制度で取得できる戸籍は、本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)に限られます。

戸籍附票を取得して相続人の住所を確認する

戸籍謄本を確認したら、相続人の住所を調べるために戸籍附票を取得します。

戸籍附票には戸籍が作られてから現在までの住所が記載されており、住民票上の住所の確認が可能です。

相続人が引っ越しを繰り返している場合でも、過去の住所履歴を追うことで、現在の居住地を特定できる可能性があります。

相続人の住所を特定できれば、手紙を送ったり訪問したりといった手段が取れるようになるでしょう。

さまざまな方法で相続人に連絡を取る

住所が判明したら、相続人に対してさまざまな方法で連絡を試みます。

まずは手紙を送るなどして、連絡が取れるかどうか確認しましょう。

相手が相続放棄を希望している場合は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に本人が手続きを行う必要があります。

遺産を相続をする意思があるかどうかにかかわらず、早めに対応してもらうよう呼びかけましょう。

弁護士に依頼して代理人から連絡をしてもらう

相手が意図的に無視を続けている場合は、弁護士に依頼するのも有効な手段です。

弁護士が代理人として連絡を取ることで、応答してくれる可能性があります。

とくに相続人同士で感情的な対立が生じている場合には、直接連絡を取るよりも弁護士を介した方が冷静に話ができるでしょう。

その後の相続手続きについてもサポートしてもらえるため、相続人と連絡が取れず悩んだら弁護士に相談することをおすすめします。

非協力的な場合は遺産分割調停を申し立てる

相続人が連絡を無視し続ける、あるいは意図的に協議に応じない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。

遺産分割調停を申し立てる際は、申立書のほかに戸籍謄本や遺産に関する資料、収入印紙および郵便切手などが必要です。

調停を申し立てると、家庭裁判所が相手に対して呼び出し状を送付してくれます。

裁判所からの呼び出しであれば、応じてくれる可能性もあるでしょう。

もし調停の場にこなかった場合は、遺産分割審判に移行し、裁判官が遺産分割方法を決定することになります。

 

連絡の取れない相続人が行方不明扱いとなったときの対処法

相続人の住民票記載の住所を調べても住んでいなかった場合、法律上では行方不明者として取り扱われます。

相続人が行方不明となったときの対処法は、次の2つです。
・不在者財産管理人を選任する
・失踪宣告を申し立てる

それぞれどのような手続きなのか、以下で詳しく解説していきます。

不在者財産管理人を選任する

行方不明の相続人がいる場合、遺産分割を行うためには不在者財産管理人の選任が必要となります。

不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産の管理や法的手続きを行う人物です。

選任を申し立てるには、行方不明者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。

この手続きを行うことで、行方不明の相続人がいる状態でも遺産分割協議を進められるようになります。

ただし、手続きには一定の時間と手間がかかるため、早めに対処することが重要です。

失踪宣告を申し立てる

相続人が7年以上行方不明で、すでに死亡している可能性が高いときは、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てができます。

失踪宣告が認められると、行方不明者は法律上死亡したとみなされ、相続手続きが正式に進められるようになります。

万が一、後に生存が確認された場合には、家庭裁判所に失踪宣告の取り消しを求めることが可能です。

相続人が長期間見つからない場合の最終手段として、不在者財産管理人の選任とあわせて検討しましょう。

 

連絡が取れない相続人がいて悩んだら弁護士に相談しよう

相続人と連絡が取れない場合、手続きを進められず、時間が経つほど問題が複雑化する可能性があります。

自力での調査や連絡が難しいと感じたら、早めに弁護士に相談するのが得策です。

弁護士は、相続人の所在調査や連絡の代行だけでなく、調停や裁判所での手続きも適切に進められます。

相続人間でトラブルが発生した際は、専門家のサポートを受けながら円滑な解決を目指しましょう。

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