現金のみの相続はどのように行う?預貯金とは違うの?
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分23秒です。
相続財産が現金のみである場合はどう扱うべきなのか、またどのように相続手続きを進めればいいのか悩む人も多いでしょう。
被相続人がタンス預金などを行っていて、保有していた財産が現金のみというケースは少なくありません。
現金は不動産や株式などの財産に比べて扱いやすい一方で、注意すべきポイントもあります。
今回の記事では、現金のみを相続する場合の基本的な取り扱いやメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。
相続手続きをスムーズに進めるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
相続できる財産が現金のみの場合の取り扱い
相続財産が現金のみの場合でも、ほかの財産と同じく相続の対象です。
現金は分配しやすく手続きも比較的シンプルですが、適切な手順を踏まなければトラブルのもとになるケースもあります。
・現金は相続財産の一つ
・遺産分割の対象となる
・現金と預貯金の違い
以下では、相続における現金の取り扱いに関する基本的なポイントを解説していきます。
現金は相続財産の一つ
現金は、不動産や有価証券などと同様に被相続人が残した「相続財産」の一つです。
現金の保有者である被相続人が亡くなると、相続財産は相続人に引き継がれます。
銀行口座にある預貯金だけでなく、自宅の金庫に保管されていた現金や、タンス預金なども相続財産です。
現金は金額が明確なため分配しやすい財産ではありますが、隠し財産になりやすい点に注意が必要です。
遺産分割の対象となる
現金は、ほかの相続財産と同じように遺産分割の対象です。
相続人が複数いて遺言書が残されていない場合、相続財産の分け方は遺産分割協議で話し合って決定します。
現金は金額が明確で分割も簡単なため、相続人間の意見の食い違いによるトラブルが生じにくい点が特徴です。
なお、遺産分割協議で誰が何を相続するかが決定するまでは、相続財産は相続人全員の共同財産として扱われます。
そのため、原則として相続方法が決定するまでは勝手に現金を使ったり移動させたりすることはできません。
現金と預貯金の違い
現金と預貯金は同じような相続財産と思われがちですが、扱い方が異なります。
現金は通貨としての役割をもちますが、民法上は「物」として扱われる財産です。
一方、預貯金は「権利」として扱われるため、「口座からお金を引き出す権利」を相続するという考え方をします。
預貯金の口座は相続発生後に凍結され、相続手続きを行わないと引き出しができません。
現金は特別な手続きが不要な分、発見されないリスクや管理方法に注意が必要となります。
現金のみを相続するメリットとデメリット
相続財産が現金のみの場合には、手続きの簡便さや分配のしやすさといったメリットがあります。
しかし一方で、現金特有のリスクやデメリットも存在します。
・現金を相続するメリット
・現金を相続するデメリット
ここでは、現金を相続する際に知っておきたいメリットとデメリットについて確認していきましょう。
現金を相続するメリット
現金を相続するメリットは、以下のとおりです。
・公平に分配できる
・名義変更手続きの必要がない
・相続した後すぐに使用できる
・相続税の納付や急な支払いに対応できる
現金を相続する上で大きなメリットは、分配しやすいことです。
金額がタイミングによって左右されず明確であるため、相続人の数に応じて簡単に割り振れます。
また、不動産のように名義変更や評価額の算定が不要なため、相続手続きにかかる手間や時間が少なく済みます。
さらに、相続税の納付や急な支払いが発生した場合でも、現金であればすぐに対応できる点もメリットでしょう。
現金を相続するデメリット
一方で、現金を相続する際のデメリットも理解しておく必要があります。
・隠し財産となりやすい
・相続税の節税が難しい
・使い込みのリスクがある
まず挙げられるのは、相続財産として認識されにくいリスクです。
被相続人がどこにどれだけ現金を保管していたか分からず、相続人同士で不信感を抱くケースもあるでしょう。
また、現金は相続税の計算上節税が難しいため、そのまま全額が課税対象となります。
不動産や株式のように評価減や特例が使いにくい点は、不利といえます。
さらに、使い込まれてしまう可能性や金銭トラブルに発展するリスクもあるため、管理と分配には注意が必要です。
被相続人の現金のみを相続する手続きの流れ
被相続人の財産が現金のみであっても、相続手続きはきちんとした順序で進める必要があります。
・遺言書の有無を確認する
・相続人と相続財産を調査する
・相続人全員で遺産分割協議を行う
・相続税の申告・納付を行う
流れを理解しておくことで、不要なトラブルや手続き漏れを防げるでしょう。
それぞれの手順について、以下で詳しく解説していきます。
遺言書の有無を確認する
相続手続きで最初に行っておくべきなのは、被相続人が遺言書を残しているかどうかの確認です。
有効な遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って遺産分割を進めていく必要があります。
遺言書にはいくつかの種類があり、「自筆証書遺言」の場合は家庭裁判所で検認手続きを行わなければなりません。
公正役場で作成された公正証書遺言であれば、検認手続きをしなくても遺言の効果が発揮されます。
相続人と相続財産を調査する
遺言書の有無を確認できたら、次に相続人と相続財産の調査を行います。
相続人が後から発覚すると相続手続きのやり直しが発生してしまうため、戸籍謄本を取り寄せて相続人全員を明確にしましょう。
また、相続人の確認と並行して相続財産の調査も行います。
相続財産が現金だけだったとしても、どこにどれだけあるかを正確に把握する必要があります。
被相続人の自宅や金庫・家計簿・保管場所の記録などをしっかりと調査し、抜け漏れのないようにしましょう。
相続人全員で遺産分割協議を行う
遺言書が残されておらず相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で相続財産の分け方を決定します。
現金のみの相続は、ほかの財産と比べると意見が相違するリスクが少なく分割しやすいでしょう。
協議が成立した際は合意した内容を「遺産分割協議書」として文書化し、全員の署名と押印を行います。
遺産分割協議書は必須ではありませんが、相続人が複数いる場合は万が一のトラブル回避のために作成しておくのをおすすめします。
相続税の申告・納付を行う
相続税は現金も課税対象となるため、金額が基礎控除額を超える場合は申告と納付が必要です。
まずは基礎控除額を計算し、相続税がかかるかどうかを確認します。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡(相続開始)を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性もあるため、忘れずに申告しましょう。
現金のみの相続で不安があれば専門家に相談しよう
現金のみの相続は一見シンプルに思えても、手続きや税金の計算で迷うケースも多いでしょう。
とくに現金は誤解や見落としが生じやすい側面もあるため、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
手続きに不安を感じた場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
相続税に関する相談であれば税理士、遺産分割や相続人間のトラブルであれば弁護士への相談が適しています。
早めに専門家の力を借りることで、複雑な相続手続きもスムーズに進められるでしょう。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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