相続排除とは?認められる条件や手続きは?

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分46秒です。

過去の深刻なトラブルをきっかけに、「特定の相続人に遺産を渡したくない」と考える人もいるのではないでしょうか。

そのようなときに選択肢の一つとなるのが、「相続廃除」です。

ただし、相続廃除が認められるには法的な条件を満たす必要があり、簡単ではありません。

今回の記事では、相続廃除の概要や条件・手続きの流れを詳しく解説します。

廃除手続きを行う前に押さえておくべきポイントや注意点も解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続廃除とは?

相続廃除とは、被相続人の意思にもとづいて特定の相続人の相続権を失わせる制度です。

被相続人に「この相続人に財産を渡したくない」と思わせるような問題行為が認められた場合に適用されます。
・相続廃除の対象者
・相続廃除ができるのは被相続人のみ
・相続廃除と相続欠格の違い

以下では、対象者や相続欠格との違いなど、相続廃除に関する基礎的な情報を確認していきましょう。

相続廃除の対象者

相続廃除の対象となるのは、「遺留分を有する推定相続人」です。

遺留分とは、特定の相続人にのみ認められた最低限の遺産の取り分を指します。

生前贈与や遺言書によって遺留分が侵害された場合、対象となる相続人は遺留分侵害額請求が可能です。

しかし、相続廃除をすると推定相続人の遺留分も含めて相続権をはく奪できます。

相続廃除の具体的な対象者は、被相続人の配偶者・子ども(孫)・両親または祖父母です。

兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、相続廃除の対象外となります。

相続廃除ができるのは被相続人のみ

相続廃除の申し立てを行えるのは、被相続人本人に限られます。

被相続人以外の親族や第三者が勝手に相続廃除を申し立てることはできません。

相続廃除の意思表示は、被相続人が生前に家庭裁判所へ申し立てを行うか、遺言にその旨を記すかのどちらかです。

遺言に記した場合は、遺言執行者が被相続人の意思を実現するために手続きを行います。

相続廃除と相続欠格の違い

相続廃除と混同されやすい制度として、「相続欠格」があります。

相続欠格とは、推定相続人が被相続人の相続に関して重大な不正行為や犯罪をした場合に、自動的に相続権を失う制度です。

たとえば、被相続人やほかの相続人を殺害しようとしたり、脅迫したりした場合は相続欠格が適用されます。

一方、相続廃除は被相続人の意思にもとづいて行われるもので、認められるためには裁判所の審査が必要です。

相続欠格は客観的事実にもとづき自動的に適用されるのに対し、相続廃除は意思表示と手続きが必要である点が明確な違いとなります。

 

相続廃除が認められる条件

相続廃除が認められるためには、被相続人が以下のいずれかの行為をしていた事実を立証する必要があります。
・被相続人に対する虐待
・被相続人に対する重大な侮辱
・そのほかの著しい非行

たとえば、頻繁に暴力を振るわれていたり、悪口を言いふらされ名誉を著しく傷つけられたりした場合に該当する可能性があります。

ただ単に不仲である、性格が合わないといった理由では廃除は認められません。

相続廃除の申し立てを検討する際には、具体的な証拠の収集や状況の整理が重要です。

 

相続廃除を申し立てる2つの方法と手続きの流れ

相続廃除を行う方法には、次の2種類があります。
・生前廃除
・遺言廃除

どちらの方法も最終的には家庭裁判所の審判が必要となりますが、手続きのタイミングや手順に違いがあります。

各手続きの流れについて、以下で具体的に見ていきましょう。

生前廃除

生前に相続廃除をする場合は、被相続人本人が家庭裁判所に申し立てを行います。

生前廃除の手続きの流れは、以下のとおりです。

1.必要書類を準備する
2.被相続人の住所を管轄する家庭裁判所で申し立てを行う
3.家庭裁判所の審判を受ける
4.審判書謄本と確定証明書の交付を受ける
5.審判確定後に役場へ届け出る

申し立てには家庭裁判所で入手できる審判申立書のほか、被相続人と廃除したい推定相続人の戸籍謄本が必要です。

また、800円分の収入印紙と書類郵送費(裁判所によって費用が異なる)も準備しておきましょう。

審判で相続廃除が認められた後は、審判確定から10日以内に市区町村役場に届け出ることで手続きが完了します。

遺言廃除

遺言廃除は、被相続人の遺言書によって特定の推定相続人を廃除する意思を示す方法です。

手続きは以下のような流れで進めます。

1.被相続人が遺言書に廃除の意思を明記する
2.被相続人が死亡し相続が開始した後、遺言執行者が必要書類を準備する
3.遺言執行者が家庭裁判所で申し立てを行う
4.家庭裁判所の審判を受ける
5.審判書謄本と確定証明書の交付を受ける
6.審判確定後に役場へ届け出る

遺言書には、相続廃除する対象の相続人と廃除する具体的な理由、遺言執行者が誰かを忘れずに記載しましょう。

遺言廃除は、遺言書の書式に不備があったり廃除理由が不明確であったりすると認められません。

確実に手続きを進めたい場合には、弁護士などの専門家のサポートを受けながら準備することが望ましいです。

 

相続廃除で押さえておくべきポイント

相続廃除は法的に相続人の権利を奪う強力な制度である一方、利用するにあたって押さえておくべきポイントも存在します。
・相続廃除が認められないケースもある
・代襲相続の対象になる
・相続廃除は取り消しが可能

不要なトラブルを回避するためにも、これらのポイントは理解しておきましょう。

以下で一つずつ解説していきます。

相続廃除が認められないケースもある

相続廃除を申し立てたとしても、審判で認められないケースもあります。

相続権は相続人がもつ大切な権利で、簡単にはく奪できるものではないため、家庭裁判所では厳正な審査が行われます。

相続廃除が認められるのは、被相続人への虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合です。

感情的な問題や過去のささいなトラブルを理由とした場合、廃除を認めてもらえないケースがほとんどでしょう。

相続廃除できるのか、どのように手続きを進めるべきか悩んだら、弁護士などの専門家への相談を検討してみてください。

代襲相続の対象になる

相続廃除された相続人に子どもがいる場合、その子どもに代襲相続される可能性があります。

代襲相続とは、本来相続人となるはずの人が死亡した場合や欠格・廃除となった場合に、その子どもが相続権を継承する制度です。

たとえば、相続廃除された長男に子どもがいると、その子ども(孫)が代襲相続人となります。

相続廃除によって相続権を失うのは、あくまで対象の相続人のみに限られるため注意が必要です。

廃除手続きを進める際は、家族関係全体を把握した上で検討しましょう。

相続廃除は取り消しが可能

一度認められた相続廃除も、事情が変われば取り消しができます。

たとえば、かつては深刻なトラブルがあった相続人と関係が改善した場合、被相続人が廃除の撤回を望むケースもあるでしょう。

取り消しをする場合は、家庭裁判所に廃除取り消しの申し立てを行います。

生前に被相続人自身で手続きを行うほか、遺言書に記載して死後に遺言執行者が手続きを行うことも可能です。

相続廃除手続きが完了した後に取り消したいと思ったら、どちらかの方法で手続きを進めましょう。

 

相続廃除の条件や手続きで悩んだときは専門家に相談しよう

相続廃除は、被相続人の意思にもとづいて特定の相続人の相続権を失わせる制度です。

しかし、相続廃除が認められるためには一定の条件を満たさなければならず、家庭裁判所での手続きも必要です。

相続廃除すべきか、ほかに選択肢はないのか悩んだときには、専門家である弁護士への相談をおすすめします。

弁護士のアドバイスを受けて生前から対策をとることで、スムーズに相続対策を進められるでしょう。

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