相続手続きに印鑑証明は必要?取得方法は?
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相続手続きに印鑑証明は必要?取得方法は?
相続手続きを進める上で、印鑑証明書の提出を求められるケースがあります。
とくに名義変更や相続税申告では相続人全員の印鑑証明書が必要となる場合が多いため、取得方法を正しく理解することが大切です。
今回の記事では、印鑑証明書の概要や必要となる相続手続き、取得方法をわかりやすく解説します。
印鑑証明書はどの手続きに必要なのか、どうやって取得すればいいか悩んだときはぜひ参考にしてみてください。
目次
相続手続きに必要な印鑑証明書とは?
印鑑証明書とは、自治体に登録した実印であることを証明する公的書類です。
財産に関する手続きや不動産の取引を行う上で、実印を押印した際の証明として印鑑証明書を添付します。
相続手続きにおいては、相続人の「意思確認」や「本人確認」を目的として印鑑証明書の提出を求められるケースがあります。
印鑑証明書によって、相続人が自らの意思で同意していることや印影が本人の実印であることを公的に確認できるためです。
印鑑証明書の有効期限
印鑑証明書そのものには、有効期限は設けられていません。
しかし、実際の手続きでは、「発行から3か月以内」「6か月以内」などと発行日を指定されるケースがよくあります。
印鑑証明書をまとめて取得しておくと手間は省けますが、発行日が古いと受け取りを拒否される可能性もあるため注意が必要です。
相続手続きなどに使用する印鑑証明書は、提出先が指定する条件を事前に確認し、必要に応じて再取得するようにしましょう。
印鑑証明書の提出を求められる主な相続手続き
相続に関する手続きでは、相続人の実印とともに印鑑証明書の提出が求められる場合があります。
一般的に印鑑証明書が必要となる相続手続きは、以下のとおりです。
・遺産分割協議書の作成
・預貯金の払い戻し・株式の名義変更
・不動産の名義変更(相続登記)
・生命保険金などの受け取り
・相続税申告
各手続きについて、以下で詳しく見ていきましょう。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書を作成する際は、実印の押印と相続人全員の印鑑証明書が必要となります。
遺産分割協議とは、相続人全員で財産の分け方を話し合う手続きです。
協議が成立したら、合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。
協議書の作成は義務ではありませんが、その後のトラブルを防ぎ手続きを円滑に進めるために作成しておくことが望ましいです。
なお、相続人が一人である場合は、複数人で財産を分け合う必要がないため遺産分割協議書や印鑑証明書は不要となります。
預貯金の払い戻し・株式の名義変更
金融機関の預貯金や証券会社で保有していた株式などの名義変更を行う際にも、印鑑証明書が必要です。
遺産分割協議をした場合は、相続人全員の印鑑証明書を用意して提出します。
遺言書がある場合、もしくは相続人が一人のみの場合は、預金や株式を相続する人の印鑑証明書のみを提出します。
基本的に3ヶ月~6ヶ月以内に発行した印鑑証明書の提出を求められるため、事前に確認しておくと安心です。
不動産の名義変更(相続登記)
被相続人が所有していた不動産の名義変更(相続登記)を行う際も、基本的に印鑑証明書が必要です。
不動産を相続する人の分だけでなく、相続人全員の印鑑証明書を用意しましょう。
ただし、以下のケースに当てはまる場合は例外的に印鑑証明書の提出が不要になります。
・相続人が一人のみの場合
・遺言書があり遺言の内容に従って相続する場合
・調停調書や審判書がある場合
相続登記の手続きは複雑なため、不明点がある場合は司法書士や弁護士などの専門家への相談を検討しましょう。
生命保険金などの受け取り
生命保険金や自賠責保険金などを受け取る際は、請求書に実印を押印した上で印鑑証明書を添付する必要があります。
添付するのは、保険金を受け取る相続人の印鑑証明書です。
保険会社によって提出書類や印鑑証明書の有効期間が異なる可能性もあるため、事前に確認してから手続きを進めましょう。
相続税申告
税務署に対して行う相続税申告においても、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要となる場合が多いです。
相続税申告には期限があり、被相続人が死亡し相続発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に手続きしなければなりません。
被相続人の遺産総額が基礎控除額を超えている場合は相続税申告が必須なため、期限に間に合うように準備を進めましょう。
なお、遺言書の内容に沿って相続を進める場合や、相続人が一人のみの場合は印鑑証明書の提出は不要となります。
相続手続きに使用する印鑑証明書の取得方法
相続に必要な印鑑証明書を用意するには、まず印鑑登録を済ませておく必要があります。
印鑑証明書は登録済みの実印に対して発行される公的書類であり、登録していない場合は取得できないためです。
・未登録の場合はまず印鑑登録を行う
・市区町村の役所で取得する手順
・コンビニで取得する手順
以下では、印鑑登録の方法から証明書の取得手順までを解説していきます。
未登録の場合はまず印鑑登録を行う
印鑑証明書を取得するために、まず住民登録のある市区町村の役所で印鑑登録を行いましょう。
印鑑登録は、原則として15歳以上の本人が実印として登録したい印鑑を持参して申請する必要があります。
運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの本人確認書類があれば、即日印鑑登録が可能です。
顔写真付きの証明書がない場合は、後日自宅宛てに届く照会書を持参しなければならず、登録に数日かかる可能性があります。
なお、15歳以上の未成年者が印鑑登録をする場合は、親権者や未成年後見人などの法定代理人の同意が必要になるケースがあるため注意が必要です。
市区町村の役所で取得する手順
印鑑登録が完了していれば、印鑑証明書は住民登録のある市区町村の役所で取得できます。
一般的な取得手順は、以下のとおりです。
1. 印鑑登録時に交付された印鑑登録証(登録カード)を持参する
2. 所定の交付請求書に必要事項を記入して窓口に提出する
3. 1通あたり300円程度の手数料を支払い、証明書を受け取る
必要なものは印鑑登録証(登録カード)と本人確認書類、手数料です。
手続き内容は自治体により異なる場合があるため、不安な場合は事前に確認しておきましょう。
コンビニで取得する手順
近年では、多くの自治体でコンビニ交付サービスが導入されています。
コンビニ交付に対応している市区町村であれば、マイナンバーカードと手数料を持参することでコンビニ発行が可能です。
コンビニで印鑑証明書を取得する際は、以下の流れで手続きを進めましょう。
1. コンビニのマルチコピー機で「行政サービス」を選択する
2. マルチコピー機にマイナンバーカードをかざす
3. 画面の指示に従って印鑑証明書を選択し、発行する
利用する際は、マイナンバーカードに設定している4桁の暗証番号が必要です。
コンビニ交付では役所に出向いて申請書を記入する必要がなく、手軽に取得できるメリットがあります。
相続手続きで必要な印鑑証明書の取得方法を理解し、最新のものを用意しよう
相続の場面では、印鑑証明書は重要な確認書類となります。
発行日が古いと受け取ってもらえない場合もあるため、手続きを進めるタイミングで取得するようにしましょう。
相続の状況に応じた必要枚数を把握して取得しておけば、手続きをスムーズに進められます。
相続手続きの判断に迷ったり、相続人同士のトラブルが発生したりしたときは、弁護士などの専門家に相談してください。
弁護士に相談すると、個々の状況に応じた法的なアドバイスを受けられます。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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