相続手続きの代理人を立てるケースと分類

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分58秒です。

相続手続きは複雑で、専門的な知識が必要となるケースも少なくありません。

こうした場面で頼りになるのが「代理人」の存在です。

代理人を立てることで、煩雑な手続きを代行してもらえるだけでなく、相続トラブルの予防にもつながります。

今回の記事では、相続における代理人の種類や役割、代理人を立てるべきケースなどについて詳しく解説します。

 

相続手続きにおける代理人とは?

相続手続きにおける代理人とは、被相続人の遺産を巡る各種の手続きを、相続人の代わりに行う人です。

代理人は、目的や状況によって次の3つに分類されます。
・法定代理人
・任意代理人
・特別代理人

それぞれの違いや特徴について、以下で詳しく確認していきましょう。

法定代理人

法定代理人とは、法律にもとづいて代理権が与えられている人です。

未成年者や認知症の人など、法律上判断能力が不十分とされる人が相続人となる場合には、法定代理人の選任が必要です。

たとえば、未成年者の場合は親権者もしくは未成年後見人が法定代理人となり、未成年者の代理として手続きを進めます。

また、認知症などで判断能力を欠く人については、家庭裁判所の選任により成年後見人が法定代理人となります。

親権者・未成年後見人・成年後見人以外の人は、法定代理人にはなれません。

任意代理人

任意代理人とは、本人の意思によって代理権を与えられた人です。

とくに資格を必要としないため、信頼のおける家族や友人・弁護士・司法書士など誰にでも依頼できます。

任意代理人には、戸籍の収集・遺産分割協議・各種申請手続きなどの委任が可能です。

たとえば、遠方に住んでいて自分で手続きを行うのが難しい場合や、専門家に任せたい場合などに活用できるでしょう。

なお、任意代理人に代理権を与える際は、どこまでの権限を委ねるかを明確にしておくことが重要です。

特別代理人

特別代理人とは、法定代理人と本人との間に利益相反が生じる場合に、家庭裁判所が選任する代理人です。

たとえば、未成年の子とその親権者の両方が相続人となっていて、遺産の分け方において意見が分かれる場合などが典型例となります。

このような状況では、親権者が子の代理人として遺産分割協議に参加すると、利益相反となるため不適切です。

そこで中立的な立場の第三者を特別代理人として立て、未成年者の利益を守る役割を担わせます。

利益相反が生じる可能性のあるケースでは、家庭裁判所に申し立てをして特別代理人を選任しなければなりません。

 

相続手続きで代理人を立てるべきケース

相続手続きにおいて代理人を立てるべきなのは、主に以下のようなケースです。
・相続手続きを自分で行うのに不安がある場合
・相続トラブルが予想される・もしくは発生している場合
・揉めている相手が弁護士を立てている場合
・未成年者と親権者が相続人である場合
・認知症の方と成年後見人が相続人である場合

代理人が必要かどうかは相続の状況によっても異なるため、それぞれの事情に応じた対応が求められます。

代理人を立てた方がいいケースについて、以下で一つずつ見ていきましょう。

相続手続きを自分で行うのに不安がある場合

相続手続きには、被相続人の財産状況の確認や相続人の確定、各財産の名義変更など、複雑な手続きが多数あります。

法的な判断や期限管理も求められるため、慣れていない人にとっては大きな負担となるでしょう。

このような場合、弁護士などの専門家に任意代理人を依頼することで、手続きを正確かつスムーズに進められます。

相続税申告であれば税理士、不動産の名義変更であれば司法書士、相続手続き全般や相続トラブルであれば弁護士が適任です。

不安を感じた時点で、早めに代理人の活用を検討しましょう。

相続トラブルが予想される・もしくは発生している場合

遺産分割において意見が対立している、または相続人同士の関係が悪化している場合には、トラブルに発展する可能性があります。

このような状況では、弁護士を任意代理人にすることを検討しましょう。

弁護士には相続人との交渉を一任できるため、感情的な対立を避けながら適切に主張を行えます。

トラブルを未然に防ぐためにも、できるだけ早めに弁護士に相談しておくのが望ましいです。

揉めている相手が弁護士を立てている場合

相続人の一部が弁護士を立てている場合、そのまま自分一人で対応すると不利な状況になりやすいです。

法律の専門家と交渉を行うには、対等な立場で臨む必要があります。

このような場合は、自分側も弁護士を任意代理人とすることで、主張の正当性を法的に示せるようになるでしょう。

相手方との書面のやり取りや交渉も任せられるため、不要なリスクを回避できるメリットもあります。

未成年者と親権者が相続人である場合

親子がともに相続人となる場合、遺産分割協議において利益相反が生じるおそれがあります。

たとえば、遺産の配分内容が親にとって有利になるよう調整された場合、未成年の権利が不当に損なわれてしまいます。

このようなケースでは、特別代理人の選任が必要です。

利益相反が生じる場合は親権者は未成年者の代理人になれないため、忘れずに特別代理人の選任手続きを行いましょう。

認知症の方と成年後見人が相続人である場合

認知症などで判断能力が不十分な人が相続人となっている場合には、成年後見制度の利用が必要です。

成年後見人がすでに選任されている場合、その人が本人に代わって相続手続きを進められます。

ただし、成年後見人と本人が同時に相続人である場合には利益相反となるため、特別代理人の選任が必要になります。

相続人の範囲や利益相反となるケースの判断で悩んだら、弁護士などの専門家への相談も検討しましょう。

 

相続手続きで代理人を立てるには委任状が必要

相続手続きで代理人を立てるには、原則として「委任状」の作成が必要となります。

委任状とは、相続人本人の意思によって他者に依頼することを証明する書類です。

誰にどのような手続きを委任するかを具体的に記入し、依頼する相続人が署名・捺印を行います。

金融機関や役所で行う相続手続きでも提出を求められるため、任意代理人を立てる際は忘れずに作成しましょう。

委任状が不要となるケース

相続に関わる手続きでも、状況によっては委任状が不要なケースも存在します。

委任状が不要となる代表的なケースは、以下のとおりです。
・法定代理人(親権者・未成年後見人・成年後見人)が手続きをする場合
・家庭裁判所で選任された特別代理人が手続きをする場合

法定代理人や特別代理人が相続手続きを進める際は、委任状を作成する必要はありません。

また、遺産分割協議書がある場合や、遺言執行者がいる場合も、特定の手続きの委任状提出が不要となる可能性があります。

必要書類は相続手続きごとに異なるため、都度確認しながら準備を進めましょう。

 

相続で特別代理人を選任する手続きの流れ

相続で特別代理人を選任する際の基本的な手続きの流れは、以下のとおりです。

1.特別代理人の選任について相続人全員の合意を得る
2.必要書類を準備する
3.家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる
4.家庭裁判所による審理と決定
5.選任通知と登記手続き

 

申し立てから選任通知までにかかる期間は、1~3ヶ月が目安です。

特別代理人が必要な場合は、相続手続きのスケジュールを考慮して早めに申し立てを行いましょう。

なお、専門家に特別代理人を依頼する際は、申し立て費用のほかに代理人に支払う報酬も必要です。

 

相続の代理人を立てる場合は専門家への相談を検討しよう

遺産分割を含めた相続手続きは、代理人に依頼できます。

委任状があれば家族や友人などにも依頼できますが、相続人間でトラブルが発生している場合は弁護士しか対応ができません。

意見の相違がありトラブルが予測できる状況であれば、早めに弁護士へ相談しましょう。

委任状の作成や代理人の選任に不安がある場合も、専門家に相談しアドバイスを受けることがおすすめです。

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