ペットに遺産を相続できる?

 

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ペットも家族の一員として共に暮らす人が増える中、飼い主が亡くなった後のペットの飼育や遺産との関係に関心が高まっています。

とくに、不自由なく生活できるよう「ペットに遺産を相続させたい」と考える人も多いのではないでしょうか。

ペットへの直接の遺産相続はできませんが、遺産を相続する条件にペットの飼育を含めることは可能です。

今回の記事では、ペットに関する遺産相続の基本と、安心して託すための方法について解説します。

 

遺産相続におけるペットの取り扱い

ペットは大切な家族の一員ですが、民法上は「動産」として扱われます。

動産とは、不動産以外のすべての財産です。
・ペットには直接遺産相続できない
・ペットは被相続人の財産として遺産分割の対象となる

以下では、ペットに直接遺産を残せない理由と、ペットの法的な立場について確認していきましょう。

ペットには直接遺産相続できない

前述のとおり、ペットは民法上、現金や株式・家財などの財産と同様に「動産」として扱われます。

相続は「人」に対して行われる制度であり、ペットのような動物には直接遺産を相続できません。

たとえば、「飼っている犬に100万円を相続させる」と遺言書に記載しても、無効とされてしまいます。

ペットは法的に相続人とは認められないため、ほかの方法でペットの生活費や世話を託す仕組みを考える必要があります。

ペットは被相続人の財産として遺産分割の対象となる

ペットは、被相続人(亡くなった人)の財産の一部とされます。

したがって、遺産分割の際には、ほかの財産と同様に「誰が引き取るか」という話し合いの対象となります。

親族間では、「被相続人のペットの世話をする責任」が問題になるケースも多いです。

誰も引き取り手がいない場合、ペットが行き場を失ってしまうおそれもあるでしょう。

そのため、誰にペットの飼育を任せるか、必要な費用をどう工面するかといった点は、生前に決めておくことが重要です。

 

ペットの世話を条件として遺産を相続する方法

ペットへの遺産相続はできませんが、「ペットの世話」を条件にして遺産を渡すことは可能です。
・負担付遺贈
・負担付死因贈与
・ペット信託

これらの方法により、飼い主が亡くなった後もペットが安心して暮らせる環境を確保できるでしょう。

以下では、それぞれの仕組みと特徴を詳しく解説していきます。

負担付遺贈

負担付遺贈とは、「特定の財産を与える代わりに一定の義務を負担させる遺贈」です。

たとえば「犬の世話を条件に○○に300万円を遺贈する」といった内容の遺言を残せば、世話をする人に遺産を渡せます。

ただし、受け取る側はその義務を受け入れるかどうかを選べるため、場合によっては拒否される可能性があります。

遺言書に負担付遺贈の旨を記載する際は、あらかじめ合意を得ておくようにしましょう。

また、遺言書にはいくつかの種類がありますが、確実性を高めるためには「公正証書遺言」による作成をおすすめします。

公正証書遺言は公証役場の公証人に作成してもらう遺言書で、無効となるリスクが低い点がメリットです。

負担付死因贈与

負担付死因贈与とは、生前に一定の義務を負担させる条件で贈与契約を結び、死亡時に効力が生じる贈与です。

負担付遺贈と似ていますが、生前の契約によって成立する点が異なります。

たとえば「私の死後、猫の世話をすることを条件に財産を贈与する」といった契約を結べば負担付死因贈与となります。

死因贈与は契約であるため、当事者間の合意が必要です。

口頭でも成立はしますが、後のトラブルを防ぐために公正証書で契約書を作成しておくようにしましょう。

ペット信託

ペット信託とは、飼い主が亡くなった場合などに備えて、ペットの世話と飼育費用を託すための仕組みです。

ペット信託を締結する際は、飼い主である委託者が、信頼できる第三者を受託者として信託契約を結びます。

飼い主が健康なうちは本人が世話をし、世話ができなくなった場合に、信託で指定された受益者がペットの世話を行います。

餌の時間やトリミングの頻度など、希望する飼育条件がある場合には信託契約書で指定することも可能です。

きちんとペットの世話が行われるか不安な場合には、別途信託監督人を指定するようにしましょう。

信託監督人がいれば、ペット引き渡し後の世話の状況や信託財産の管理について監督を任せられます。

 

遺産相続後のペットの飼育先の候補

飼い主が亡くなった後、ペットの安全な生活を守るためには、引き取られる先を明確にしておく必要があります。
・親族
・友人や知人
・ペット関連の事業者
・老犬ホーム・老猫ホーム
・保護団体

誰に託すかを決めたら、生前に意向を確認した上で同意を得ておくことが望ましいです。

以下では、遺産相続後にペットを引き取ってもらう可能性のある5つの飼育先候補について解説していきます。

親族

もっとも一般的なペットの引き取り先として考えられるのが、親族です。

飼い主とのつながりやペットに対する愛着があれば、スムーズに引き渡しできるケースも多いでしょう。

ただし、高齢であったりペット不可の賃貸に住んでいたりと、必ずしも飼育を引き受けられる状況にあるとは限りません。

事前に相談し、世話の受け入れが可能かどうかをしっかり話し合っておきましょう。

友人や知人

親族以外で信頼できる人に預けたい場合は、友人や知人に引き取りを依頼する方法もあります。

身近な人が引き取ってくれることになれば、大切なペットも安心して預けられるでしょう。

ただし、ペットの世話が長期的な負担になってしまう可能性もあります。

友人・知人を頼る際は、金銭的支援や必要な物資の提供なども考慮した上で依頼するようにしましょう。

ペット関連の事業者

ペットホテルやトリミングサロン・動物病院といった事業者は、ペットの引き取りや里親探しをサポートしている可能性があります。

専門的な知識や環境が整っており、一時的な預かり先としては安心できる選択肢です。

普段から利用している場所であれば引き受けてくれる可能性があるため、一度相談してみるといいでしょう。

老犬ホーム・老猫ホーム

高齢のペットを安心して預けたい場合は、老犬ホームや老猫ホームを利用する選択肢もあります。

老犬ホーム・老猫ホームとは、高齢ペットの飼育施設で、飼い主の代わりに世話や介護をしてくれるサービスです。

終身で預かってくれる施設もあるため、事前に相談や見学をしておくといいでしょう。

ただし、入所費や月額費用などの費用負担の計画は立てておく必要があります。

保護団体

NPO法人や動物保護団体に相談する方法もあります。

譲渡活動を積極的に行っている保護団体であれば、新しい里親を見つけてもらえる可能性もあるでしょう。

受け入れ条件や活動方針は保護団体によって異なるため、事前に情報収集を行っておく必要があります。

必ず受け入れてもらえるとは限らないため、まずはほかの方法で引き取り先を探し、見つからない場合の候補として検討しましょう。

 

ペットを含む遺産の相続方法に悩んだら専門家に相談しよう

ペットの将来を守るためには、法律や制度を理解した上で備えることが重要です。

どんなに飼い主の想いがあっても、事前準備をしていなければ理想通りに引き継ぐのは難しくなるでしょう。

法的な手続きや信頼できる第三者への委託には、専門的な知識が求められます。

そのため、悩んだときはできるだけ早く弁護士や司法書士といった専門家に相談しましょう。

相続問題や信託契約に詳しい専門家であれば、どの手続きが最適か、またどのように準備を進めるべきかアドバイスが受けられます。

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