連帯債務がある場合の相続への影響は?

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分0秒です。

親族が亡くなった際に、「連帯債務」という聞き慣れない言葉に直面する場合があります。

連帯債務は、被相続人が生前に他者と共同して借金などの債務を負っていた場合に発生するものです。

連帯債務がある場合、相続にどのような影響があるのか、また相続人が支払い義務を負うのかなど不安に感じる人も多いでしょう。

今回の記事では、連帯債務の概要や相続時の取り扱い、負担を軽減する方法について詳しく解説します。

思わぬ債務トラブルを避けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続における連帯債務とは?

連帯債務とは、一つの債務に対して、複数人が連帯して「全額を支払う義務」を負う形式の債務です。

債務者のうち一人が全額を返済した場合、ほかのすべての債務者の返済義務がなくなります。

連帯債務も相続の対象となるため、相続開始時に問題となるケースがあります。
・連帯債務は相続財産に含まれる
・連帯債務の負担割合
・連帯保証との違い

以下では、相続における連帯債務の基本情報として、相続時の取り扱いや連帯保証との違いについて確認していきましょう。

連帯債務は相続財産に含まれる

連帯債務は、相続において「マイナスの財産」として取り扱われ、相続財産に含まれます。

つまり、被相続人が連帯して負っていた債務も、ほかの資産や負債と同様に相続の対象となるのです。

この点を見落とすと、「遺産があると思っていたのに実は多額の借金も引き継いでいた」という事態に陥る可能性があります。

被相続人の債務の存在とその内容は、事前にしっかり把握しておくようにしましょう。

連帯債務の負担割合

相続財産に連帯債務が含まれている場合は、原則として相続人が法定相続分に応じて負担します。

法定相続分とは、民法で定められた各相続人の相続財産の取り分です。

法定相続分は相続人の組み合わせによっても異なりますが、配偶者とほかの相続人がいる場合の割合は以下のとおりです。

 

相続人 法定相続分
配偶者のみ 全額
配偶者と子ども 配偶者:2分の1

子ども:2分の1

配偶者と親(祖父母) 配偶者:3分の2

親(祖父母):3分の1

配偶者と兄弟姉妹 配偶者:4分の3

兄弟姉妹:4分の1

 

たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、配偶者は2分の1、子どもは2分の1を等分してそれぞれ4分の1ずつ相続します。

連帯保証との違い

連帯債務と連帯保証は、一見似ているようですが、意味合いが異なります。

連帯債務は、最初から複数の債務者が「主たる債務者」として同等の責任を負います。

一方、連帯保証は、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する仕組みです。

連帯債務では複数の債務者が同じ立場ですが、連帯保証人は主債務者が返済しないときに代わって返済する立場となります。

ただし、連帯保証人は債権者から保証債務の履行を求められた際、「先に主債務者に請求してほしい」と主張することはできません。

このような催告の抗弁権が主張できない点に関しては、連帯保証人も連帯債務者と同じ扱いとなります。

 

連帯債務の相続を避けたい・負担を軽減したいときの対処法

相続人として連帯債務の支払い義務を負いたくない場合、どのように対処すればいいのでしょうか。

相続を回避する、または負担を軽減するための対処法としては、次のような方法があります。
・相続人全員の合意によって負担割合を調整する
・相続放棄
・限定承認
・免責的債務引受

それぞれの方法の特徴と注意点について、以下で順に解説していきます。

相続人全員の合意によって負担割合を調整する

相続では、遺産分割協議によって各相続人の相続財産の分担を決められます。

たとえば、不動産や預貯金を相続する代わりに、連帯債務を多く引き受けるといった調整も可能です。

ただし、相続人間の合意によって連帯債務の負担割合を決定したとしても、債権者はその合意に関与しません。

したがって、外部的には連帯債務者全員が返済義務を負ったままとなります。

内部的な合意にもとづいて相続人に支払いを請求することは可能ですが、返済リスクがなくなるわけではない点に注意が必要です。

相続放棄

相続放棄は、被相続人の相続財産に関する一切の権利と義務を相続せずに放棄する手続きです。

家庭裁判所に相続放棄を申述し認められれば、連帯債務を含む負債の返済義務が消滅します。

ただし、相続放棄をすると「はじめから相続人でなかった」とみなされ、プラスの財産も相続できなくなります。

一度行うと原則として取り消しができないため、相続放棄をするかどうかは慎重に判断しましょう。

相続放棄する際の注意点

相続放棄を行う場合、相続が開始し自身が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。

この期間を過ぎると、自動的に単純承認となり、連帯債務も含めたすべての相続財産を引き継ぐことになります。

また、相続放棄によって、ほかの相続人に債務が移る可能性がある点にも注意が必要です。

新たなトラブルが発生しないよう、相続放棄する際はあらかじめ親族間で情報を共有しておくことが望ましいです。

限定承認

限定承認は、相続によって得た財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ方法です。

連帯債務に関しても、相続した財産の範囲内でのみ返済義務が生じるため、自らの資産から返済を求められるリスクがなくなります。

「手放したくない財産がある」「相続する財産と借金のどちらが多いかわからない」といった場合に適した方法です。

ただし、限定承認は相続人全員で行う必要があり、申述期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内となっています。

手続きにも手間がかかるため、限定承認を選択する際は弁護士や司法書士などの専門家への相談も検討しましょう。

免責的債務引受

免責的債務引受とは、債務者が負っている債務を、第三者が代わりに引き受ける契約です。

連帯債務を相続した上で免責的債務引受を行うことで、元の債務者は債務から解放されます。

実際には、被相続人の事業を相続した特定の相続人が、連帯債務も引き受けるケースなどで利用されます。

免責的債務引受は債務者と引受人の契約によって行われますが、必ず債権者の合意が必要です。

債権者にとってリスクが高まると判断されれば、合意が得られない可能性もあるため注意しましょう。

引受人となる人に連帯債務を負う正当な理由があり、かつ十分な返済能力があると認められれば成立する可能性は高いといえます。

 

連帯債務の相続について悩んだら専門家に相談しよう

連帯債務の相続には、法律や税務・金融など複数の専門的な知識が必要となります。

個人で調べただけでは判断が難しく、誤った対応をすると将来的に不利益が生じる可能性もあるでしょう。

とくに、ほかの相続人との関係や債権者との調整が必要な場合には、専門家によるアドバイスが有効です。

弁護士や司法書士・税理士といった専門家は、相続制度を正しく把握しており、個別の事情に応じた対処法を提案してくれます。

早めに相談することで、相続手続き全体がスムーズに進み、精神的な負担も軽減されるでしょう。

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