相続税の申告期限はいつまで?遅れた場合は?延長はできる?
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相続税の申告期限はいつまで?遅れた場合は?延長はできる?
相続が発生したとき、見落としてはならないのが「相続税の申告期限」です。
相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。
しかし、さまざまな事情により期限内の申告が難しいケースもあるでしょう。
今回の記事では、相続税の申告期限に遅れた場合のデメリットや、期限に間に合わない場合の具体的な対策を解説します。
相続に関するトラブルを防ぐためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続税の申告は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
申告期限となる日が土日祝日・年末年始である場合は、休み明けの平日に繰り越されます。
10ヶ月という期間は余裕があるように思えますが、期限内に終わらせておくべき相続手続きは多岐にわたるため注意が必要です。
正当な理由なく期限を過ぎた場合はペナルティが課される可能性もあるため、相続手続きは計画的に進めましょう。
なお、やむを得ない事情がある場合には、例外的に申告期限を延長できるケースもあります。
例外的に申告期限を延長できるケース
原則として相続税の申告期限の延長は認められませんが、「災害などのやむを得ない理由」がある場合は最大2ヶ月間延長できます。
期限の延長が認められる可能性があるのは、以下のようなケースです。
・災害や事故によって申告が困難な場合
・申告期限の直前に遺言書が発見された場合
・相続人となる胎児が生まれた場合
新型コロナウイルスの感染症蔓延によって、申告期限を延長する措置が行われたケースもあります。
延長を求める事情がある場合には、税務署に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し申請しましょう。
相続税の申告期限に遅れたときのデメリット
相続税の申告期限に遅れると、さまざまな不利益を受ける可能性があります。
主なデメリットは、次のとおりです。
・一部の特例制度の利用ができない
・加算税や延滞税などのペナルティが課される
・最終的に財産を差し押さえられる
申告期限を守らなかった場合のデメリットについて、以下で具体的に解説していきます。
一部の特例制度の利用ができない
相続税の申告期限に遅れると、一部の特例制度や控除が利用できなくなる可能性があります。
相続税には、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」など、税負担を軽減するための制度が用意されています。
どちらの制度も、一定の条件を満たすことで相続税の大幅な減額が可能です。
しかし、これらの特例を利用するには、原則として期限内に遺産分割を完了させて相続税申告を行うことが前提条件となります。
条件を満たせなければ適用が認められず、本来よりも多くの相続税を納めなければならなくなるため注意が必要です。
加算税や延滞税などのペナルティが課される
相続税の申告期限に遅れると、「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティが課されるおそれがあります。
無申告加算税は、期限内に申告しなかった場合に課税される税金です。
納めるべき税額に応じて15%、もしくは20%加算されますが、自主的に期限後申告した場合は5%の加算で済みます。
また、延滞税は納期限の翌日から支払いまでの期間に応じて発生し、年利換算での利息が課されます。
なんらかの事情で期限を過ぎてしまったときは、できるだけ早く自主申告するようにしましょう。
最終的に財産を差し押さえられる
相続税を滞納したまま放置していると、最終的には国税庁に所有している財産を差し押さえられる可能性があります。
差し押さえの対象となるのは、不動産や預貯金・給与などの財産です。
差し押さえが決定した場合、「不動産は残しておきたい」「勤め先に知られたくない」などの要求はできません。
経済的な損失や社会的信用への悪影響を防ぐには、期限内に相続税申告を済ませる必要があります。
相続税の申告期限に遅れそうなときの5つの対策
相続税の申告期限に遅れそうな場合は、できる限りの対策を講じる必要があります。
主な対策として挙げられるのは、次の5つの方法です。
・未分割申告をする
・遺産分割前の相続預金の払戻し制度を活用する
・一部の財産のみ遺産分割協議を行う
・クレジットカードで納付する
・延納や物納を検討する
それぞれの対策について、以下で詳しく確認していきましょう。
未分割申告をする
遺産分割が期限までに確定できない場合は、未分割申告を行いましょう。
未分割申告とは、民法で定められた法定相続分で遺産分割したと仮定して計算し、相続税申告を行う手続きです。
未分割申告後に遺産分割が確定した場合は、「修正申告」または「更正の請求」によって申告内容を変更する手続きを行います。
期限内に未分割申告を行っておけば、無申告加算税や延滞税といったペナルティは課されません。
遺産分割前の相続預金の払戻し制度を活用する
相続税を支払うためのお金が用意できない場合に検討すべき方法の一つは、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」です。
この制度を活用すれば、遺産分割が未了でも、一定の上限額まで被相続人の預金を引き出せます。
利用する際は戸籍謄本や印鑑証明書などの提出が求められるため、預金のある金融機関に必要書類を確認するようにしましょう。
なお、遺産分割調停・審判を進めている場合は、家庭裁判所への申し出が必要です。
一部の財産のみ遺産分割協議を行う
すべての相続財産について分割協議がまとまらなくても、話し合いが済んでいる部分だけ協議を成立させる方法もあります。
たとえば、不動産の分割に時間がかかっているものの、預金の分割は合意できている場合、預金に対してのみ先に協議を成立させます。
遺産分割が完了した預金は引き出しが可能なため、取り急ぎ相続税の資金に充てられるでしょう。
ただし、遺産分割協議を成立させるには相続人全員の合意が必要なため、話し合いが難航している状況では難しい方法となります。
クレジットカードで納付する
相続税を納付する際に現金がすぐに用意できないときは、クレジットカード納付を検討しましょう。
専用サイトである「国税クレジットカードお支払サイト」を利用すれば、相続税をクレジットカードで納付できます。
クレジットカード納付では納付税額に応じた決済手数料がかかるため、事前に確認した上で利用するようにしてください。
なお、1,000万円を超える相続税や、クレジットカードの利用限度額を超える金額は納付できないため注意が必要です。
延納や物納を検討する
相続税が高額で、現金一括納付やクレジットカード納付が困難な場合には、「延納」または「物納」を利用する方法があります。
延納は担保の提供によって相続税を分割払いできる制度で、最大で20年まで分割が可能です。
物納は、不動産や有価証券などの現物で相続税を納税できる制度です。
これらの制度はいずれも申請にあたって事前の準備が必要で、税務署の審査を受ける必要があります。
無条件で利用できる制度ではないため、どうしても資金が用意できない場合の手段として検討しましょう。
相続税の申告期限に不安がある場合は早めに専門家に相談しよう
相続手続きでは、さまざまな書類の準備や相続人との調整が必要となり、予想以上に時間がかかるケースも多いです。
財産の評価や分割方法の話し合いが長引けば、相続税の申告期限が目前に迫ってしまう場合もあるでしょう。
「申告期限に間に合わないかもしれない」と感じたら、専門家への相談を検討してみてください。
専門家に相談すれば、相続状況に応じたアドバイスや、リスクや損失を最小限に抑えるためのサポートを受けられます。
相続人同士のトラブルや相続手続き全般に関する悩みであれば、まず弁護士に相談してみるのがおすすめです。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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