「相続・贈与・売買」の違い

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分58秒です。
 

不動産や株式などの財産を誰かに渡そうと考えたとき、「相続」「贈与」「売買」のどれにすべきか悩む人は多いでしょう。

いずれも財産の受け渡しに関する制度ですが、意味や手続き・かかる税金などが大きく異なります。

言葉の違いを曖昧にしたまま判断すると、思わぬ税負担やトラブルに発展することもあるため注意が必要です。

今回の記事では、相続・贈与・売買の意味と違い、どれを選ぶべきかなどについてわかりやすく解説します。

大切な財産をスムーズに引き継ぐためにも、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続・贈与・売買とは?概要を解説

「相続」「贈与」「売買」はいずれも財産を他人に移す行為ですが、その目的やタイミング、手続きには違いがあります。

これらの制度を正しく理解できれば、財産を移転させる際に適切な選択ができるようになります。
・相続とは
・贈与とは
・売買とは

それぞれの制度について、以下で詳しく見ていきましょう。

相続とは

相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産や権利・義務を、法律上の決まりにもとづいて相続人が引き継ぐ制度です。

引き継がれる財産には、不動産・預貯金・有価証券などのプラスの財産のほか、基本的に借金などのマイナスの財産も含まれます。

相続人の範囲や財産の相続割合は民法で定められていますが、遺言がある場合は遺言に従って分配するのが原則です。

相続は被相続人の死亡によって自動的に発生するものであるため、生前に意思表示して行うことはできません。

自動的に発生する点が、贈与や売買との大きな違いです。

贈与とは

贈与とは、自分の財産を無償で他人に与える法律行為です。

当事者である「あげる人(贈与者)」と「もらう人(受贈者)」の意思が一致し、合意の上で行うことが前提となります。

贈与には契約が必要ですが、契約書の作成は必須ではありません。

しかし、後々のトラブルを防止するためにも、契約書を交わしておくことが推奨されます。

また、贈与には大きく分けて「生前贈与」と「死因贈与」があり、それぞれ性質や手続きが異なります。

生前贈与と死因贈与の違い

生前贈与は、贈与者が生きているうちに財産を渡す贈与です。

贈与者と受贈者間で契約が成立すれば、すぐに効力が発生し財産を移転できます。

一方で死因贈与は、贈与者の死亡によって効力が発生する贈与です。

贈与契約自体は生前に行いますが、実際に財産を移転するのは贈与者の死後となります。

相続に似た制度のように思えますが、死因贈与はあくまで「契約」によって成立する点が異なります。

なお、両者は税制上の扱いも異なり、生前贈与(暦年贈与)は贈与税、死因贈与は相続税の対象となるため注意が必要です。

遺贈と死因贈与の違い

死因贈与と混同されやすい制度に「遺贈」があります。

遺贈とは、遺言によって財産を特定の人に譲る行為を指し、「一方的な意思表示」のみで効力が発生する点が特徴です。

当事者の片方の意思表示のみで効力が発生する法律行為を、単独行為といいます。

対して、死因贈与は「贈与契約」という形で、贈与者と受贈者の合意が必要になります。

どちらも贈与者側の死亡後に財産が移転しますが、手続きに違いがあるため、目的や状況に応じて選択しましょう。

売買とは

売買とは、財産や権利を有償で他人に移す行為です。

売買によって財産の所有権を移した際は、財産の価値に応じた税金が課されます。

相続や贈与とは異なり、売買は当事者の意思で自由に行える取引であるため、商取引や資産運用の一環として用いられています。

 

【項目別で比較】相続・贈与・売買の違い

相続・贈与・売買は、財産を他者に移すという共通点がありますが、各制度には法律的にも実務的にも明確な違いがあります。

とくに押さえておくべきなのは、次の4つのポイントです。
・課される税金の違い
・遺留分の対象となるかどうかの違い
・特別受益としての扱いの違い
・不動産の登記手続き上の違い

それぞれの項目について、以下で具体的に解説していきます。

課される税金の違い

相続・贈与・売買では、課される税金の種類が異なります。

相続 被相続人の財産を取得した人に対して、基礎控除額を超える部分に相続税が課される
贈与 原則として一人あたり年間110万円を超える贈与に対して贈与税が課される(ケースによっては相続税が課される)
売買 財産を有償で売った場合、得た利益に対して譲渡所得税と住民税が課される

 

税負担の重さはケースによって大きく変動するため、事前の試算が重要です。

課税に対する疑問や不安があれば、税理士などの専門家への相談も検討しましょう。

 

遺留分の対象となるかどうかの違い

相続・贈与・売買における遺留分の扱いは、以下のとおりです。

 

相続 遺留分の対象となる
贈与 相続前10年間の贈与や死因贈与は遺留分の対象となる
売買 遺留分の対象にならないが、対価が不相当な売買は遺留分の対象となる場合もある

 

遺留分とは、特定の相続人が最低限受け取れる遺産の取り分です。

遺贈や贈与などによる遺留分の侵害があった場合、遺留分相当額の取り戻し請求を受ける可能性があります。

財産の受け渡しは相続人の権利にもかかわる問題であるため、贈与や遺贈の内容は慎重に考慮しましょう。

特別受益としての扱いの違い

特別受益とは、相続人となる人物が被相続人から生前に受け取った特別な利益です。

贈与や遺贈が相続時に不公平とされる場合、特別受益を受けた相続人の相続分を減額する「特別受益の持ち戻し」が適用されます。

とくに多額の生前贈与や遺贈を受けた相続人は、持ち戻しによって相続額を調整される可能性が高くなるでしょう。

売買に関しては、相続や贈与と異なり対価があるため、原則として特別受益には該当しません。

ただし、極端に低い価格の売買は贈与とみなされ、特別受益として扱われる可能性があります。

不動産の登記手続き上の違い

土地や建物などの不動産を移転する際には、法務局での登記手続きが必要です。

相続・贈与・売買では手続き内容がそれぞれ異なり、以下のように定められています。

 

相続 相続する人が登記の申請人となり「相続登記」を行う
贈与 贈与者と受贈者が共同で「贈与による登記」を行う
売買 売主と買主が共同で「売買による登記」を行う

 

相続の場合、遺言執行者が指定されていれば遺言執行者が単独で相続登記を行えます。

登記手続きには手間と時間がかかるため、不安な場合は司法書士などの専門家に相談しましょう。

 

財産を渡す方法は相続・贈与・売買のどれを選ぶべき?

財産を渡す方法として、相続・贈与・売買の3つが考えられますが、それぞれの目的や状況に応じて最適な選択肢は異なります。

節税を重視するなら、相続税対策として計画的な生前贈与を活用するのが効果的です。

ただし、非課税枠は年間110万円までとなるため、非課税枠を活用しながら長期的に進める必要があります。

まだ財産を手放したくないが確実に遺産を残したいという場合であれば、遺言書による遺贈が対応策となります。

一方で、売買は、財産を処分して現金化したいときや、第三者に所有権を移したい場合に有効です。

将来のトラブルを避けるためには、早い段階から方向性を考えておく必要があります。

 

「相続」「贈与」「売買」の選択で悩んだら専門家に相談しよう

財産を誰かに引き継ぐことは、その後の人生設計や親族との関係にも大きくかかわる重要な選択です。

相続・贈与・売買のどの方法にすべきかは目的や状況によっても異なるため、慎重に判断しましょう。

財産の移転方法で悩んだときは、税理士や司法書士・弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

リスクを避けるためにも早めに専門家のサポートを受けて、後悔のない選択をしましょう。

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