相続の代償金とは?メリット・デメリット・注意点をわかりやすく解説

 

この記事を読むのに必要な時間は約9分0秒です。

相続が発生したとき、遺産をどう分けるかは相続人の大きな課題です。

不動産など分割が難しい財産が含まれている場合は、「代償金」による清算が選択肢の一つとなります。

代償金という言葉を聞いたものの、具体的にどのような仕組みなのか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、代償金の概要から代表的な利用ケース、そのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

相続の場面で後悔しないためにも、ぜひ参考にしてみてください。

 

相続における代償金とは?

相続における「代償金」とは、一人の相続人が相続財産を取得する代わりに、ほかの相続人に対して支払う金銭です。

この仕組みは「代償分割」と呼ばれ、法定相続分のバランスをとるために活用されます。

相続では、すべての財産を民法で定められた相続分(法定相続分)のとおりに分割することが原則です。

しかし、実際には不動産などの分けにくい財産も存在します。

現物のまま相続した相続人が代償金を支払うことで、相続人全員が納得できる形で分割できるようになります。
・代償分割とは
・代償分割すべき代表的なケース

以下では、代償分割の基本と代表的な活用ケースについて詳しく確認していきましょう。

代償分割とは

代償分割とは、相続財産を現物のまま一部の相続人が取得し、その代わりにほかの相続人へ金銭を支払う方法です。

たとえば、相続財産に自宅や事業用資産が含まれている場合、売却せずにそのまま取得したいという希望があるかもしれません。

しかし、一人だけがその財産を取得しようとすると、ほかの相続人が不公平と感じる場合も多いでしょう。

そのような場合に、ほかの相続人の相続分に見合う金銭(代償金)を支払い、全体のバランスを調整します。

代償分割は柔軟な方法ですが、代償金の支払い能力や金額の算出方法などでトラブルが生じやすいため、慎重な判断が必要です。

代償分割すべき代表的なケース

代償分割を活用すべきなのは、主に次のようなケースです。
・相続財産に不動産しかなく、分割が困難な場合
・家業を継ぐ相続人が事業資産を引き継ぐ場合
・親と同居していた相続人がそのまま自宅に住み続けたい場合
・特定の財産を維持・保全したい希望がある場合

たとえば、遺産の大半が自宅や事業所などの不動産で占められていると、物理的に分割ができません。

また、事業を継承するためには、機械や設備・営業権などの資産を一括して取得する必要があります。

こうした場合に、対象の財産を一人の相続人が取得し、ほかの相続人に代償金を支払えば、相続人間の公平性を保てます。

 

相続で代償金による清算を選択するメリット

相続で代償金による清算を選択する主なメリットは、以下のとおりです。
・相続財産を公平に分割できる
・不動産を現物のまま残せる
・節税につながる可能性がある

代償分割は、相続において柔軟かつ現実的な手段の一つです。

それぞれのメリットについて、以下で具体的に解説していきます。

相続財産を公平に分割できる

代償金による清算を活用すれば、物理的に分割しにくい財産が含まれていても、相続人全員に対する公平な分配が可能になります。

たとえば、相続財産が不動産1件のみであった場合、そのまま相続したいと申し出てもほかの相続人が納得しないケースも多いです。

このような場合に代償分割を選択すれば、その価値に応じた代償金をほかの相続人に支払うことで公平性を保てます。

「不動産を相続したい」「損をしたくない」などの希望がある場合でも、代償分割ならスムーズに遺産分割を進められるでしょう。

不動産を現物のまま残せる

代償金の仕組みを活用すれば、相続財産に含まれる不動産を売却せずに、特定の相続人が現物のまま取得できます。

たとえば、長年親と同居していた子どもがそのまま自宅を引き継ぎたい場合でも、代償金の支払いによって家を手放さずに済みます。

代償分割の選択は、思い出のある実家や継続的に利用したい不動産を守るうえで非常に有効です。

また、事業用の建物や土地を保持したい場合にも有効で、相続後の生活や経営への影響を最小限に抑えられます。

節税につながる可能性がある

代償金による清算を選択すると、条件によっては相続税の節税効果が期待できる場合があります。

不動産の相続では、「小規模宅地等の特例」を適用できるケースがあるためです。

小規模宅地等の特例とは、居住用や事業用の土地を相続する際に、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

不動産は評価額が高くなりやすく税負担も増えがちですが、この特例を活用できれば相続税を大幅に減額できる可能性があります。

特例の適用には一定の条件を満たす必要があるため、まずは相続する不動産が対象となるかを確認しておくようにしましょう。

 

相続で代償金による清算を選択するデメリット・注意点

代償金による清算は、相続財産を公平に分割できる一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。

代償金による相続の主なデメリットは、次のとおりです。
・代償金は相続税の課税対象になる
・代償金は自分の資産から支払う必要がある
・代償金の算出方法でトラブルになる可能性がある

各デメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。

代償金は相続税の課税対象になる

代償金は相続の一環として行われる金銭のやり取りですが、その性質上、相続税の課税対象として扱われます。

代償金を支払う相続人と代償金を受け取った相続人それぞれに課税されるため、申告漏れに注意が必要です。

相続税の課税額を計算する方法は、不動産をどのように評価したかによって異なります。

不動産の評価や相続税の計算は複雑であるため、悩んだときは弁護士や税理士・司法書士といった専門家に相談しましょう。

贈与税や譲渡所得税がかかる可能性もある

代償分割の手続き方法によっては、贈与税や譲渡所得税の課税リスクも発生します。

通常であれば、代償分割の際に課税されるのは相続税のみです。

しかし、遺産分割協議書に代償金支払いの旨を記載していない場合、贈与とみなされて贈与税の課税対象となる可能性があります。

必要以上の代償金を支払ったケースでも、贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。

代償金は自分の資産から支払う必要がある

代償金は、原則としてその相続人が自分の資産から支払う必要があります。

たとえば、不動産を相続した人がほかの相続人に対して代償金を支払う場合、相応の現金や預貯金を用意しなければなりません。

しかし、十分な資金が用意できない場合、不動産を担保に借入を行ったり、資産を売却したりする必要が生じる可能性もあります。

代償分割は資金力がある相続人でなければ実行が難しい点は、事前に把握しておきましょう。

代償金の算出方法でトラブルになる可能性がある

代償金の金額は、代償分割の対象となる不動産などの評価額にもとづいて決定されます。

しかし、財産の「評価方法」が争点になるケースも少なくありません。

たとえば、不動産には路線価・市場価格・固定資産税評価額などの基準があり、それぞれ大きな金額差が出る可能性があります。

どの方法で評価するのか、また財産に付随する負債をどう扱うのかなどで意見が食い違い、トラブルになる場合もあるでしょう。

円満な代償分割を実現するためには、公平かつ妥当な評価が不可欠であり、専門家のサポートが必要となります。

 

相続財産の分割方法や代償金の算出で悩んだときは専門家に相談しよう

相続で代償金を扱う際は、不動産評価や税務知識など専門的な判断が求められる場面が多いです。

とくに代償分割では金銭のやり取りを伴うため、相続人間のトラブルや思わぬ税負担につながってしまうケースもあるでしょう。

代償分割を選択すべきか、また代償金をどのように算出すべきか悩んだときは、早めに専門家に相談することをおすすめします。

弁護士や税理士・司法書士など、内容に応じた専門家に相談すれば、状況に合った最適な選択肢を見つけやすくなります。

後悔のない遺産分割を行うためにも、専門家のサポートをうまく活用しましょう。

The following two tabs change content below.
弁護士法人ふくい総合法律事務所

弁護士法人ふくい総合法律事務所

当事務所のウェブサイトにお越しいただきありがとうございます。当事務所は、地元福井に密着し、地域のインフラになることを目指し、日々運営をしております。高齢化に伴い、ここ福井でも相続に関するご相談を多くいただいております。しかし、「争続」になってからご相談にお越しになる方が非常に多いのが現状です。「争続」にならないように、生前から対策を行う重要性を強く感じております。この度、弁護士に相談する敷居を少しでも下げ、より皆様にご相談していただきやすいよう、当サイトを立ち上げました。相続に不安をお持ちの方、生前対策をお考えの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
 

弁護士コラムの最新記事

初回無料相談

電話でお問い合わせ

0776-28-2824
初回無料相談
まずは電話かメールでお問い合わせください
受付時間:9時30分~20時(土日祝対応)
相談時間:9時30分~17時(夜間・土日祝対応相談)

受付時間:9時30分~20時(土日祝対応)

相談時間:9時30分~17時(夜間・土日祝対応相談)

電話でお問い合わせ LINEでお問い合わせ