相続発生時に確定申告は必要?行わなければいけないケースは?
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分26秒です。
相続が発生した際、多くの人が知っている相続税とは別に、所得税の確定申告についても考慮する必要があります。
一般的には、相続発生時の確定申告は不要ですが、特定の状況では確定申告を行わなければならないケースもあるため注意が必要です。
今回の記事では、相続時の確定申告に関する基本的な情報と、確定申告が必要になる主なケースを詳しく解説します。
相続時の確定申告で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
原則として相続発生時の確定申告は不要
相続財産が一定額を超えた場合、相続税の申告・納付が必要となりますが、所得税の確定申告は原則として必要ありません。
その理由は、相続税と所得税の課税対象の違いにあります。
相続税は、不動産や株式などの財産を受け取った際に課税される税金です。
対して所得税は、事業所得や給与、年金などの収入にかかる税金であり、相続財産には課税されません。
ただし特定の状況下では、相続においても所得税の納付を求められるケースがあり、この場合は確定申告が必要になります。
相続人自身の確定申告が必要なケース
相続において、相続人自身が確定申告を行う必要のある主なケースは次のとおりです。
・収入が生じる賃貸物件を相続した場合
・相続した不動産や株式などを売却した場合
・死亡保険金や未支給年金を受け取った場合
・相続した財産を換価分割した場合
・相続した財産を国などに寄附した場合
それぞれのケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。
収入が生じる賃貸物件を相続した場合
相続により収入が生じる賃貸物件を受け継いだ場合、相続人自身の確定申告が必要になります。
収入が生じる賃貸物件とは、アパートや賃貸マンション・駐車場などです。
賃貸収入は所得税の対象となるため、相続した後に得た収入は所得として申告し、税金を納めなければなりません。
相続した不動産や株式などを売却した場合
相続した不動産や株式を売却し、利益が生じた場合も確定申告が必要です。
売却によって得られる利益は、譲渡所得として課税対象となるため、その金額に応じた税金を納める必要があります。
相続財産を売却して利益が出た場合は、翌年の3月15日までに確定申告を行うようにしましょう。
死亡保険金や未支給年金を受け取った場合
死亡保険金の受け取りに関しては、保険料を誰が支払っていたかによって課税される税金の種類が異なります。
相続人が保険料を負担していた場合、受け取った死亡保険金は一時所得や雑所得として扱われるため、確定申告が必要です。
未支給年金の受け取りについても、基本的に相続人の一時所得とみなされるため、受け取った場合は確定申告が必要となります。
なお一時所得には50万円の特別控除があるので、死亡保険金や未支給年金を含めた一時所得が50万円以内であれば、申告は必要ありません。
相続した財産を換価分割した場合
相続した財産を換価分割した場合、発生した利益に対して確定申告が必要となります。
換価分割とは、相続財産を売却し、現金に換えてから相続人に分配する相続方法です。
相続財産の換価分割が行われた場合、得た売却益は相続人の所得となるため、翌年の3月15日までに確定申告を行いましょう。
相続した財産を国などに寄附した場合
相続した財産を国や公的な機関に寄附した場合、その寄附に対して控除の利益を受けられます。
必ず確定申告が必要というわけではありませんが、節税対策となるので申告しておくといいでしょう。
寄附金控除の対象となる主な寄附先は、以下のとおりです。
・国
・都道府県
・市区町村
・公益財団法人
・公益社団法人
・認定NPO法人
・社会福祉法人
・学校法人
・政党
・政治資金団体
・日本赤十字社の支部 など
被相続人の代わりに確定申告(準確定申告)が必要なケース
被相続人(亡くなった人)の代わりに相続人が確定申告を行うことを、「準確定申告」といいます。
準確定申告が必要となる主なケースは、以下のとおりです。
・不動産所得や事業所得があった場合
・2ヶ所以上から給与を受け取っていた場合
・2,000万円を超える給与所得があった場合
・400万円を超える年金を受給していた場合
・確定申告によって還付金がもらえる場合
どのような状況で被相続人の代わりに確定申告を行うのか、次で具体的に解説していきます。
不動産所得や事業所得があった場合
被相続人が自営業者であった場合や、賃貸マンション・アパートなどの不動産所得があった場合は、その年の所得に関する準確定申告が必要です。
不動産や事業からの所得が被相続人の死亡日までの期間に発生しているので、それらの所得に対する所得税を申告・納付する必要があります。
ただし、不動産所得や事業所得の基礎控除額は48万円であるため、売上から経費を引いた金額が48万円を超える場合にのみ準確定申告を行いましょう。
2ヶ所以上から給与を受け取っていた場合
被相続人が複数の勤務先から給与を受け取っていた場合も、その年の所得に対して準確定申告が必要となる可能性があります。
個人が複数の勤務先から給与を受けている場合、1つの勤務先の年末調整だけでは所得税の正確な計算ができないため、確定申告を行うのが一般的です。
しかし、副業の所得が年間20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。
2,000万円を超える給与所得があった場合
被相続人が亡くなる年に2,000万円を超える給与所得があった場合、準確定申告が必要です。
通常であれば給与所得者は勤務先の年末調整によって所得税が計算されますが、2,000万円を超える高所得者の場合は年末調整の対象外となります。
本来適用されないはずの控除が適用されてしまっている可能性があるため、確定申告を行わなければなりません。
400万円を超える年金を受給していた場合
被相続人が亡くなる年に400万円を超える公的年金を受給していた場合も、準確定申告が必要となります。
また、公的年金の受給額が400万円以下であったとしても、年金以外の所得が20万円を超えている場合は準確定申告が必要です。
公的年金には国が運営している年金全般が含まれ、国民年金・厚生年金・老齢年金・障害年金などが該当します。
確定申告によって還付金がもらえる場合
準確定申告の義務がなくても、還付金をもらえる可能性がある場合は申告しておくのがおすすめです。
たとえば、医療費控除やふるさと納税による寄附金控除が適用されるケースなどが該当します。
過払いの税金があった際は、準確定申告からおよそ1ヶ月以内に還付される場合が多いです。
確定申告が必要な場合の3つの申告方法
確定申告を行う方法には、主に以下の3つがあります。
・税務署の窓口で申告
・国税庁のホームページから申告
・専門家に依頼する
相談しながら申告したい人は、在住地域の税務署窓口で手続きを行うといいでしょう。
国税庁のホームページでも、電子申告システムを活用した確定申告が可能です。
しかし、確定申告の手続きに慣れていない場合、電子申告は難しいと感じる可能性があります。
申告内容が複雑である場合や、時間を節約してスムーズに手続きを進めたい場合には、税理士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
相続時の確定申告で不安なときは専門家に相談しよう
相続手続きには複雑な要素が多く関わるため、不安や疑問を引き起こすケースも多いです。
とくに確定申告は、間違えて申告してしまうと後々問題になる可能性があるため、正確な対応が求められます。
相続時の確定申告に関する不安や疑問がある場合は、ためらわずに税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
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