相続の遺産調停の基本的な流れポイント
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分26秒です。
相続人間で意見が対立し、遺産分割に関する話し合いが進まない場合、「遺産分割調停」の手続きを検討する必要があります。
しかし、そもそも遺産分割調停とはどのようなものなのか、またどのように進めればいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、遺産分割調停の概要やメリットとデメリット、基本的な流れについて詳しく解説します。
調停を有利に進めるためのポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続における遺産分割調停とは
相続における遺産分割調停とは、相続人の遺産の分け方について、家庭裁判所が間に入って話し合う手続きです。
遺産分割調停では、裁判官と調停委員が各相続人の意見や主張を聞き取り、相続人全員の合意による解決を図ります。
相続人同士での話し合いがうまくいかない場合や、遺産分割協議に参加しない非協力的な相続人がいる場合には、遺産分割調停の申し立てを検討しましょう。
以下では、遺産分割調停を行うメリットとデメリットを具体的に紹介します。
遺産分割調停を行うメリット
遺産分割調停を行う主なメリットは、以下のとおりです。
・相続人間の感情的な対立を避けられる
・公平な解決が期待できる
・裁判に比べて費用が安く手続きが簡単
調停ではトラブルになった相手と直接顔を合わせる必要が基本的にないため、感情的な対立を避けながら解決を目指せるメリットがあります。
また、裁判に比べると、申し立てにかかる費用や手間が少なく済むのも利点です。
遺産分割調停を行うデメリット
遺産分割調停にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットも存在します。
・全員が合意に至らなければ成立しない
・平日の日中に家庭裁判所へ行く必要がある
・調停終了まで時間がかかる
調停を成立させるためには、相続人全員の合意が必要となるため、一人でも納得できない相続人がいる場合は不成立となってしまいます。
また、家庭裁判所が開いている平日の日中に時間を作らなければならない点や、調停の成立・不成立までに時間がかかる点もデメリットといえるでしょう。
遺産分割調停の基本的な流れ
遺産分割調停の基本的な流れは、以下のとおりです。
・管轄の家庭裁判所に申し立てる
・調停の場で話し合いを進める
・相続人全員が合意できたら調停成立
・不成立となった場合は審判に移行
基本的な遺産分割調停の流れを理解できれば、手続きをスムーズに進められます。
それぞれの手続きについて、以下で具体的に確認していきましょう。
管轄の家庭裁判所に申し立てる
遺産分割調停を開始するには、まず家庭裁判所に申し立てを行います。
申立先となるのは、調停を行う相手の住所地を管轄する家庭裁判所、もしくは相続人間の合意のもと定めた家庭裁判所です。
申し立てには調停申立書のほか、収入印紙や戸籍謄本、遺産に関する資料など、さまざまな書類を提出する必要があります。
必要書類は相続の状況や各家庭裁判所によっても異なるため、詳細は申し立てを行う裁判所で確認するようにしましょう。
調停の場で話し合いを進める
調停の申し立てが受理されると、裁判所から各相続人に調停期日(調停が行われる日)や必要書類が記載された書面が発送されます。
遺産分割調停では話し合う内容の順番が以下のように決められており、調停委員が各相続人の主張を個別で聞きながら進めていきます。
1.相続人の範囲
2.遺産の範囲
3.遺産の評価
4.特別受益・寄与分
5.各相続人の遺産の取り分
調停が1回で終わるケースは少なく、月1回程度のペースで次回の調停期日が設定されるのが一般的です。
話し合う内容によっても異なりますが、調停が終了するまでの期間は早ければ3ヶ月程で、長期化すると1年~2年程かかる場合もあります。
相続人全員が合意できたら調停成立
話し合いが進み、相続人全員が遺産の分割方法に合意すれば、調停成立です。
調停が成立すると、裁判所は合意内容を記載した調停調書を発行します。
調停調書は裁判における確定判決と同等の効力をもつため、調停調書の内容に従わない相続人がいる場合でも、強制執行によって調停で取り決めた遺産分割を実現できます。
不成立となった場合は審判に移行
調停の場で話し合いがまとまらず、不成立となった場合は、自動的に審判へ移行します。
審判とは、裁判官が各相続人の主張や提出された証拠をもとに遺産分割の方法を決定し、審判を下す手続きです。
審判が確定すると調停調書に代わる審判書が発行され、相続人は審判書に従って遺産分割を行います。
もし審判の内容に納得できない場合は、2週間以内に不服の申し立て(即時抗告)を行うことで、高等裁判所によって再度遺産分割の内容が判断されます。
相続の遺産分割調停を有利に進めるためのポイント
相続の遺産分割調停を有利に進めるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
・自分の主張をあらかじめまとめておく
・隠し事や嘘は避ける
・相手の言い分もきちんと聞く
・主張の裏付けとなる資料を示す
調停では第三者の調停委員を介して話し合いをするため、事前準備と誠実な対応が重要です。
有利に進めるために意識すべきポイントについて、以下で一つずつ解説していきます。
自分の主張をあらかじめまとめておく
調停を有利に進めるためには、自分の主張をあらかじめ整理し、明確にしておく必要があります。
どのような遺産分割を望んでいるのかをうまく伝えられなかったり、感情的になったりすると、希望している遺産分割が実現する可能性は低くなってしまいます。
事前に主張を箇条書き・メモ書きなどでまとめておけば、調停の場でスムーズに説明できるようになるでしょう。
隠し事や嘘は避ける
調停を有利に進めたいからといって、調停委員に対して隠し事をしたり嘘をついたりするのは避けましょう。
調停が進む過程で隠し事や嘘が明らかになると、調停委員やほかの相続人からの信用を損ない、不利になる可能性があります。
話し合いの場では自分が知っている情報はすべて開示し、不利になりうる事実があったとしても正直に伝えるようにしてください。
相手の言い分もきちんと聞く
調停では自分の主張をするだけではなく、相手の言い分もきちんと聞き、理解する姿勢を見せましょう。
遺産分割調停は、相続人全員が合意しなければ成立しないため、自分の希望がすべて通るとは限りません。
調停委員の心象を悪くしないためにも、譲れるものと譲れないものの優先順位をつけ、ほかの人の言い分も尊重しながら話し合いを進める必要があります。
主張の裏付けとなる資料を示す
調停を有利に進めるためには、自分の主張の裏付けとなる資料を用意しておくのも重要です。
たとえばほかの相続人に不動産が贈与されたことを示す不動産の全部事項証明書など、客観的な証拠を提示できれば、主張に信頼性と説得力をもたせられます。
また、一部の相続人が嘘をついている場合でも、その証拠となる資料を示せれば矛盾を的確に指摘でき、交渉を有利に進められるでしょう。
相続で遺産分割調停を検討している場合は弁護士に相談しよう
相続において遺産分割調停をスムーズに進めるためには、客観的な視点を保ち、冷静に主張する必要があります。
しかし、相続は家族や親族など身内間の問題であるため、感情的になり話し合いがまとまらないケースもあるでしょう。
専門家である弁護士に相談すれば、適切なアドバイスを受けながら、自分の権利を守り、円滑な解決を目指せます。
相続人間で意見の食い違いがある場合には、早めに弁護士への相談を検討してみてください。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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