相続人が嘘をつくといどうなる?具体ケースと対処法

 

この記事を読むのに必要な時間は約9分6秒です。

相続手続きにおいて「相続人が嘘をつく」という問題が生じるケースがあります。

自分の利益のために嘘をつくのは、親族間の信頼関係を崩すだけでなく、スムーズな相続手続きの妨げとなる行為です。

嘘の内容によっては、遺産分割の取り消し請求も検討しなければなりません。

今回の記事では、相続人が嘘をつく具体的なケースや対処法・注意点などを解説します。

遺産分割を取り消す際の手順についても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

 

嘘をつく相続人がいたら遺産分割協議の取り消しができる可能性も

相続人がついた嘘が遺産分割の意思表示に影響した場合、遺産分割協議の取り消しができる可能性があります。

遺産分割協議とは、被相続人の遺産の分け方について話し合う手続きです。

遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があり、全員の合意によって成立します。

しかし、一部の相続人が財産などについて嘘をついていると、ほかの相続人が不利益を被る可能性もあるでしょう。

民法では、詐欺や錯誤などによる意思表示は取り消すことができると定められています。

遺産分割協議に関しての意思表示も例外ではないため、嘘で騙されていた場合や重大な勘違いをしていた場合は取り消しの請求が可能です。

 

相続人が嘘をつく具体的なケースとは?

相続手続きにおいて相続人が嘘をつく行為について、具体的には下記のようなケースがあります。
・遺産隠しを黙っていた
・遺産を勝手に使い込んでいた
・遺言書の偽造や変造をしていた

これらの行為は、遺産分割を大きく混乱させます。

相続人の嘘が問題となるケースについて、以下で一つずつ確認していきましょう。

遺産隠しを黙っていた

遺産を管理する立場にある相続人が、自分の利益を増やすために一部の財産を隠すケースがあります。

たとえば、銀行口座や現金・骨董品・土地などの存在を隠し、ほかの相続人に知らせないといった行為です。

このような行為があると遺産分割の対象となる財産を正確に把握できず、公平な遺産分割が行えません。

遺産を勝手に使い込んでいた

相続人が遺産を勝手に使い込み、それを隠すために嘘をつくケースがあります。

遺産分割前の財産は相続人全員の共有財産となるため、一部の相続人が勝手に使ってしまうとほかの相続人に損害が発生します。

使い込んだ相続人を追及しても、「そのような遺産は元からなかった」などと嘘をつく場合もあるでしょう。

遺産の使い込みを証明するのは困難なため、争いに発展しやすいケースです。

遺言書の偽造や変造をしていた

不当に利益を得るために、遺言書の内容について相続人が嘘をつくような場合があります。

具体的には、遺言書が偽造・変造されるケースです。

遺言書の偽造・変造は、有印私文書偽造罪が成立する可能性のある重大な不正行為です。

また、遺言書の偽造・変造・隠匿といった行為は、相続欠格事由にも該当します。

相続欠格事由にあたる行為をした相続人は相続欠格者となり、被相続人の財産を相続することはできません。

偽造や変造が疑われる場合は、根拠となる証拠を集めて遺言書の無効を主張しましょう。

 

嘘をつく相続人がいたときの対処方法

相続人の嘘が疑われる場合の対処方法として挙げられるのは、次の2つです。
・遺言書の内容を確認する
・財産調査を行い遺産の詳細を明らかにする

嘘をついているからといって感情的にならず、適切な手続きを行って事実を明らかにする必要があります。

相続人の嘘に対処する具体的な方法を、以下で見ていきましょう。

遺言書の内容を確認する

被相続人が遺言書を作成していた場合は、まず遺言書の内容を確認しましょう。

遺言書の内容を細かく確認することによって、嘘や不正行為の有無を特定できる可能性があります。

とくに以下のようなケースに当てはまる場合、遺言書の改ざんや偽造が疑われます。
・筆跡が明らかに被相続人のものではない
・遺言者と疎遠な親族が遺言書を発見した
・ページによって用紙・文字の濃淡・文書形式などが異なる
・疎遠な関係の親族に対して多額の財産が遺贈されている

遺言書が不正に作成されていると感じたら、専門家である弁護士への相談を検討してみてください。

財産調査を行い遺産の詳細を明らかにする

被相続人の財産を調査し、遺産の詳細を明らかにすることも重要です。

相続人の嘘が疑われるケースでは、財産の全貌が把握されていない場合が多くあります。

財産隠しや使い込みを隠している状況であれば、財産調査によって嘘をついていた事実が明らかになる場合も多いでしょう。

ただし、すべての財産をもれなく調べるには手間と時間がかかります。

弁護士や税理士などの専門家に依頼して、財産調査を代行してもらうことも検討しましょう。

 

遺産分割協議をやり直す方法

遺産分割協議の意思表示をやり直す方法として挙げられるのは、主に以下の2つです。
・相続人全員の合意のもと再度遺産分割協議をおこなう
・調停を申し立てる
・訴訟を提起する

まずは相続人全員に対して取り消しの意思表示を行い、合意のもと遺産分割協議のやり直しを行います。

相続人にやり直しを主張する際は、証拠を残すために内容証明郵便を活用しましょう。

やり直しに合意しない相続人がいる場合は、調停や訴訟といった法的手続きによる解決を目指します。

法的手続きでは適切な証拠や主張を用意する必要があるため、弁護士に相談しながら進めるのが望ましいです。

 

遺産分割協議をやり直す際に注意すべきポイント

遺産分割協議をやり直す際には、次のようなポイントに注意しましょう。
・遺産分割の取消権には時効がある
・取り消しができるのは特定の理由があるケースのみ
・追認すると取り消しができなくなる

相続手続きにはそれぞれ法的な条件や期限があるため、慎重に対応することが重要です。

注意すべきポイントについて、以下で詳しく解説していきます。

遺産分割の取消権には時効がある

遺産分割の意思表示を取り消す権利には、法律で定められた期限が存在するため注意が必要です。

詐欺や錯誤にもとづいた取消権は、詐欺や錯誤を知ったときから5年間経過すると時効によって消滅します。

また、詐欺や錯誤の事実を知らなかった場合でも、遺産分割を行ってから20年経過すると時効消滅します。

時効が成立すると、たとえ詐欺や錯誤があった場合でも、原則として取り消し請求は認められません。

相続人が嘘をついているとわかったら、早めに対処する必要があります。

取り消しができるのは特定の理由があるケースのみ

遺産分割の取り消し請求ができるのは、以下のようなケースに限られます。
・詐欺や脅迫にもとづいた意思表示があった場合
・錯誤にもとづいた意思表示があった場合

たとえば、相続人が財産隠しをしていた場合(詐欺)や、誤った情報で不利な合意をした場合(錯誤)などが該当します。

「よく確認せずに合意した」「後から納得がいかなくなった」といった理由では、基本的に取り消しの理由として認められません。

遺産分割の取り消しを請求する際は、法的な根拠があるのかを慎重に確認する必要があります。

追認すると取り消しができなくなる

一度「追認」した遺産分割は、取り消しの請求ができなくなります。

追認とは、取り消しできることを知った後に、取り消さないものとして扱うような行為です。

たとえば、不正を知りながら遺産の引き渡しを要求したり、遺産をほかの人に譲渡したりした場合は追認とみなされる可能性があります。

詐欺や錯誤など取り消しの理由となる不正が発覚した場合は、そのまま遺産分割を進めないよう気をつけましょう。

 

相続で嘘をつく人がいて悩んだら弁護士に相談しよう

遺産相続におけるトラブルは、長期化すると大きな精神的負担となります。

独自の調査や対処には限界があるため、嘘や不正が疑われる場合は弁護士への相談を検討してみてください。

弁護士に相談すれば、遺言書や財産の確認・不正行為の証拠収集・取り消し請求の進め方など総括的にアドバイスが得られます。

相続手続きにかかる手間を軽減させるためにも、弁護士のサポートを得ながら問題解決を目指しましょう。

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