PayPayやSuicaなどの電子マネーの相続について
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PayPayやSuicaなどの電子マネーの相続について
キャッシュレス決済が広く普及する中、PayPay(ペイペイ)やSuicaといった電子マネーを日常的に利用する人が増えています。
しかし、これらの電子マネーが「相続の対象になるのか」「どうやって手続きするのか」といった点は、あまり知られていません。
今回の記事では、相続におけるPayPayやSuicaなどの電子マネーの扱いや相続手続きの流れ、注意点などを解説します。
相続の際に電子マネーを適切に扱うためにも、ぜひ参考にしてみてください。
目次
PayPay(ペイペイ)やSuicaなどの電子マネーは相続できる?
PayPayやSuicaなどの電子マネーは、その種類によって相続の可否が異なります。
電子マネーは日常生活に浸透している一方で、相続に関する情報は少ないため、正しい理解が必要です。
・そもそも電子マネーとは?
・電子マネーの種類
・プリペイド型の電子マネーは相続できる
・ポストペイ型とデビット型の電子マネーは相続不可
以下では、電子マネーの基本情報やどのようなケースで相続が可能かを詳しく解説していきます。
そもそも電子マネーとは?
電子マネーとは、通信を介して電子データで支払いができる決済手段です。
利便性が高く、現金に代わる支払い方法として、交通機関やコンビニ・ネットショッピングなど幅広い場面で利用されています。
便利な反面、物理的な通帳やカードが存在しない場合が多く、相続時に残高の存在に気づきにくいという問題もあります。
とくにスマホアプリ型の電子マネーは、パスワード保護によって家族による確認が困難なケースもあるため相続時は注意が必要です。
電子マネーの種類
電子マネーは多くの会社から発行されており、支払い方式で分類すると主に以下の3種類があります。
電子マネーの種類 | 支払い方法 | 代表的なサービス |
プリペイド型(前払い) | 事前にチャージして使う | Suica・PASMO・PayPay・楽天Edy・nanaco・WAON など |
ポストペイ型(後払い) | 利用後にクレジット決済 | iD・QUICPayなど |
デビット型(即時払い) | 利用時に即時引き落とし | 銀行デビットカードなど |
プリペイド型は、あらかじめチャージした残高の分だけ支払いに利用できる仕組みです。
対してポストペイ型は、クレジットカードと電子マネーを連携して使用する仕組みのため、残高がなくても利用が可能です。
また、デビット型は決済と同時に銀行口座から引き落とされるため、口座の残高がなければ利用できません。
プリペイド型の電子マネーは相続できる
プリペイド型の電子マネーは、チャージした残高が残っていれば基本的に相続の対象となります。
たとえば、PayPayやSuicaの残高は、相続人が所定の手続きを行うことで払い戻しを受けられる可能性があります。
ただし、アプリ型の電子マネーでは、残高の確認にスマートフォンのロック解除やアカウント情報へのアクセスが必要です。
事前に遺族への情報共有ができていなければ、電子マネーの利用状況を確認するのが困難になるため注意しましょう。
ポストペイ型とデビット型の電子マネーは相続不可
ポストペイ型とデビット型の電子マネーは、基本的に相続できません。
事前に現金をチャージするプリペイド型とは異なり、利用した際に支払いが生じる仕組みのためです。
相続の対象となる「残高」が存在しないことから、払い戻しの対象外となります。
なお、ポストペイ型の電子マネーの場合は後払いになるため、生前に被相続人が使用した分は相続人が支払う必要があります。
PayPay(ペイペイ)やSuicaなどの電子マネーの相続手続き
PayPayやSuicaといったプリペイド型の電子マネーを相続する際には、適切な手続きと書類の準備が必要です。
手続きの内容や対応はサービス提供会社ごとに異なるため、事前に確認しておくようにしましょう。
・電子マネーの相続に必要となる書類
・電子マネーの基本的な相続手続きの流れ
以下では、電子マネーの相続に必要となる基本的な書類と手続きの流れについて解説していきます。
電子マネーの相続に必要となる書類
電子マネーの相続手続きで共通して必要となるのは、以下のような書類です。
・被相続人の死亡を証明できる書類(死亡診断書や除籍謄本など)
・相続人と被相続人の関係性を証明できる書類(戸籍謄本など)
・相続人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
このほかにも、被相続人の遺言書や遺産分割協議書の提出が求められるケースもあります。
電子マネーの残高の確認や払い戻しを申請する際は、事前にサービス提供会社に必要書類を確認するようにしてください。
電子マネーの基本的な相続手続きの流れ
電子マネーの相続手続きは、基本的に以下のような流れで進行します。
①電子マネーのサービス提供会社に連絡する
②遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成する
③必要書類を準備して提出する
④残高の払い戻し手続きを進める
被相続人が複数の電子マネーを使用していた場合は、個別に対応していく必要があります。
間違いのないように、事前にサービス提供会社に連絡して確認しながら進めるようにしましょう。
PayPay(ペイペイ)やSuicaなどの電子マネーの相続で押さえておくべき注意点
電子マネーを相続する際には、単に「残高を引き継げるかどうか」だけでなく、制度上の注意点を理解しておく必要があります。
主な注意点として挙げられるのは、次の3つです。
・電子マネーも相続税の対象となる
・電子マネーで貯まるポイントは相続の対象外
・電子マネー会社によっては払い戻しできない可能性がある
各注意点について、以下で一つずつ確認していきましょう。
電子マネーも相続税の対象となる
電子マネーの残高は被相続人の相続財産として扱われるため、相続税の課税対象となります。
相続税には基礎控除額があり、相続財産の総額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合に課税されます。
残高が小額であったとしても、ほかの財産と合算した合計額が基礎控除額を超えていれば相続税が課されるため注意が必要です。
相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内となるため、忘れずに申告を行いましょう。
電子マネーで貯まるポイントは相続の対象外
電子マネーに付随して貯まる「ポイント」や「キャンペーン特典」などは、原則として相続の対象外です。
利用者本人が死亡した場合は、遺族が代わりに使ったり現金化して相続したりすることはできません。
ただし、一部の提供会社では、家族間でのポイントの引継ぎが可能なケースもあります。
詳細は被相続人が利用している電子マネーの会社に個別に問い合わせるか、規約を確認してください。
電子マネー会社によっては払い戻しできない可能性がある
プリペイド型の電子マネーであっても、すべてのサービスで払い戻しが保証されているわけではありません。
サービス提供会社の対応方針や利用規約により、相続時の払い戻しに対応していないケースも存在します。
「残高が残っていれば相続できる」とは限らない点に注意が必要です。
随時規約の改定が行われる可能性もあるため、相続が開始した際は最新の情報を確認しながら対応するようにしましょう。
PayPay(ペイペイ)やSuicaなどの電子マネーを相続する際は事前の確認が重要
電子マネーは従来の財産とは異なる性質を持つため、相続時に思わぬトラブルになる場合があります。
手続きの方法はサービスごとに異なり、放置しているとそのまま失われてしまう可能性も否定できません。
そのため、日頃から利用している電子マネーの規約を確認し、いざというときにどのような対応が可能か把握しておくと安心です。
電子マネーは便利な反面、相続の観点ではまだ制度が整いきっていない分野でもあります。
相続手続きの進め方で悩んだときは、必要に応じて弁護士や税理士といった専門家への相談も検討しましょう。

弁護士法人ふくい総合法律事務所

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