孫に相続をさせたい場合の対応。法定相続人に孫は含まれない

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分48秒です。

高齢化が進む中、「自分の財産を孫に残したい」と考える人は少なくありません。

しかし、相続において孫は原則として法定相続人に含まれないため、対策をしなければ孫に財産が渡らない可能性があります。

今回の記事では、孫が法定相続人ではない理由や財産を渡すための具体的な方法、注意点について解説します。

相続に関する正しい知識をもつことで、希望通りに財産を託し、家族間のトラブルを未然に防げるでしょう。

孫への相続について疑問や不安を抱えている人は、ぜひ最後までご覧ください。

 

一般的に孫は法定相続人ではない

結論からいえば、相続において孫は原則として法定相続人ではありません。

相続発生時点で被相続人(亡くなった人)の子どもが健在であれば、その子どもが優先的に法定相続人となるためです。

したがって、孫に財産を渡したい場合には、特別な手続きや工夫が必要になります。

この原則を理解するには、民法で定められた法定相続人の「順位」について知っておくことが重要です。

法定相続人の順位

法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を受け継ぐ権利をもつ人です。

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者は必ず法定相続人になります。

配偶者以外の親族の優先順位については、以下のように定められています。

第一順位 子ども
第二順位 父母・祖父母(直系尊属)
第三順位 兄弟姉妹

 

民法では明確に法定相続人の順位が決まっており、孫は含まれていないため、通常は相続権をもちません。

たとえば、被相続人に配偶者と子どもがいる場合、配偶者と第一順位である子どもが法定相続人になります。

子どもがすでに亡くなっている場合は、代襲相続により、その子ども(孫)が相続人となるケースもありますが、これはあくまで例外的な扱いです。

 

被相続人の孫に相続財産を渡せる5つのケース

原則として孫は法定相続人ではありませんが、一定の条件や手続きを踏めば、孫に相続財産を渡せます。

代表的な方法は、次の5つです。
・代襲相続の発生
・遺言書による指定
・養子縁組を行う
・相続発生前の生前贈与
・生命保険金の受取人に指定する

孫に財産を託すためには、これらの手段を正しく理解し、状況に応じて使い分ける必要があります。

それぞれのケースについて、以下で詳しく確認していきましょう。

代襲相続の発生

代襲相続の発生は、孫が法定相続人になる例外的なケースです。

代襲相続とは、本来相続人となるはずの人が被相続人より先に死亡している場合などに、その子どもが代わりに相続する制度です。

たとえば、被相続人の息子が先に亡くなっていた場合、その息子の子ども(=孫)が代襲相続人として相続分を受け継ぎます。

代襲相続では、相続分も原則として本来の相続人と同じ割合になります。

ただし、死亡による代襲相続は、「相続発生時点ですでに死亡している」ことが条件である点に注意が必要です。

遺言書による指定

遺言書を作成し、孫を財産の受取人に指定する方法もあります。

遺言書には、「誰にどの財産をどれだけ渡すか」を明記することが可能です。

形式に不備がない限り、遺言は法定相続よりも優先されるため、非常に有効な手段です。

ただし、「遺留分」の存在には注意しておく必要があります。

遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の相続人に認められた最低限の遺産の取り分です。

「孫にすべての財産を渡す」といった遺言を残すと、遺留分侵害としてトラブルになるおそれもあるため気をつけましょう。

養子縁組を行う

孫を養子として迎えると、その孫は相続発生時に法定相続人として扱われます。

養子縁組を行った孫は、被相続人の「法律上の子ども」になるためです。

これによって、孫もほかの実子と同じように相続権をもち、子どもと同じ額の財産を相続できます。

相続発生前の生前贈与

相続が発生する前に、孫に対して財産を贈与する方法もあります。

生前贈与は、相続を待たずに自分の意思で財産を渡せる点がメリットです。

年間110万円までは贈与税の基礎控除が適用されるため、数年に分けて少しずつ贈与すれば、税負担を抑えられます。

また、一定条件を満たすと、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与に対して非課税となる特例制度も活用できます。

ただし、生前贈与は相続税の課税対象として扱われる場合もあるため、贈与の時期や金額は慎重に判断しましょう。

生命保険金の受取人に指定する

生命保険の受取人に孫を指定すれば、相続とは別枠でお金を渡すことが可能です。

生命保険金は、原則として「受取人固有の財産」として扱われ、法定相続人であるかどうかに関係なく受け取れる特徴があります。

また、相続税の課税においては非課税枠が設けられており、法定相続人1人につき500万円まで非課税となる点もメリットです。

ただし、孫が法定相続人でない場合はこの非課税枠の対象外となり、相続税額が高額になるおそれもあるため注意が必要です。

 

孫に相続財産を渡す際に注意すべきポイント

孫に相続財産を渡す際には、以下のようなポイントに注意が必要です。
・ほかの相続人とトラブルになる可能性がある
・相続税の2割加算の対象となる
・子どもが相続放棄をしても代襲相続は発生しない

孫に相続財産を渡す方法はいくつかありますが、手続きが複雑になりやすく、思わぬトラブルや税負担が発生するおそれもあります。

以下では、それぞれの注意点を具体的に解説していきます。

ほかの相続人とトラブルになる可能性がある

孫に財産を相続させると、ほかの法定相続人との間でトラブルが発生する場合があります。

とくに、遺言や生前贈与で孫の取り分が多い場合、ほかの相続人が不公平と感じやすくなるでしょう。

また、孫に財産を渡したいがために遺留分を侵害してしまうと、「遺留分侵害額請求」が行われる可能性もあります。

親族間の関係性を悪化させないためにも、生前に説明や話し合いを行い、相続人の納得を得ておくようにしましょう。

相続税の2割加算の対象となる

相続や遺贈によって孫に財産を渡すと、相続税の2割加算の対象となる可能性があります。

相続税の2割加算とは、配偶者や一親等の血族以外の人物が相続する場合に、相続税額が2割増しになる制度です。

これは相続税法の規定によるもので、相続税負担の均衡を守る目的で相続税が加算される仕組みになっています。

孫を生命保険金の受取人にした場合や、養子縁組した場合も2割加算は適用されます。

ただし、代襲相続によって孫が正式な法定相続人となった場合は2割加算の対象外となるため、ケースごとの判断が必要です。

子どもが相続放棄をしても代襲相続は発生しない

相続人である子どもが相続放棄をした場合、代襲相続は発生しません。

代襲相続できるのは、本来の相続人が死亡した場合、もしくは相続欠格・廃除となった場合のみです。

相続欠格とは、相続人が民法で規定された特定の重大な非行をした場合に、相続権を失う制度です。

一方で相続廃除は、相続人に著しい非行があった場合に、被相続人の意思によって相続権をはく奪する制度となります。

相続放棄は代襲相続の対象外となり、子どもが相続放棄をしても孫が相続できるわけではないため注意しましょう。

 

相続で孫に財産を渡したい場合は専門家への相談がおすすめ

孫への財産移転には、慎重な判断と正確な知識が必要です。

選択によっては税負担や家族関係に影響を及ぼす可能性があるため、個人で判断するのはリスクが伴います。

孫への相続で悩んだときには、専門家である弁護士や税理士・司法書士への相談を検討しましょう。

相続問題に精通した専門家であれば、最適な手段を提案してもらえるほか、書類作成や手続きのサポートも受けられます。

将来のトラブルを未然に防ぎ安心して相続準備を進めるためにも、できるだけ早い段階での相談を検討してみてください。

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