生活保護中の相続放棄の手続きや注意点
〇この記事を読むのに必要な時間は約8分40秒です。 
生活保護の受給中に相続人となったとき、相続放棄をしてもよいのか不安に感じる人もいるでしょう。
結論からいえば、生活保護受給者であっても相続放棄の手続き自体は可能です。
ただし、現金や預貯金などプラスの財産を放棄すると、生活保護の制度上問題になる可能性があります。
今回の記事では、生活保護受給中の相続放棄についてわかりやすく解説します。
注意点や失敗しないための対策まで含めて解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
生活保護受給中に相続放棄はできる?

生活保護を受けていても、相続放棄の手続き自体は可能です。
相続放棄は、生活保護の有無にかかわらず、相続人が家庭裁判所に申述して行う手続きであるためです。
ここでは、相続放棄の基本と生活保護受給中の考え方として、次の内容を解説します。
・相続放棄自体は家庭裁判所で行う手続き
・生活保護では「使える資産の活用」が前提になる
以下で詳しく確認していきましょう。
相続放棄自体は家庭裁判所で行う手続き
相続放棄とは、亡くなった人の相続財産を一切引き継がないようにする手続きです。
預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も引き継がなくなる点に特徴があります。
相続放棄をするには、家庭裁判所に「相続放棄の申述」を行う必要があります。
生活保護受給者であったとしても、相続放棄の申述自体が認められないわけではありません。
生活保護では「使える資産の活用」が前提になる
生活保護では、「利用できる資産は生活のために活用する」という考え方が前提です。
たとえば、預貯金や未使用の土地・建物などがある場合には、原則として売却などによって生活費に充てることが求められます。
そのため、相続によって預貯金などの財産を取得できる場合、その財産を生活費に充てられる可能性があると考えられます。
このようなケースで相続放棄をすると、「本来活用できる資産を自ら手放した」と判断されるおそれがあるでしょう。
生活保護受給中の相続放棄や遺産分割で注意すべきポイント
生活保護受給中の相続放棄や遺産分割で注意すべきポイントは、次の2点です。
・プラスの財産を放棄すると生活保護に影響する可能性がある
・遺産分割で取得額を減らす場合も注意が必要
生活保護を受けている場合、自己判断だけで相続手続きを進めるのは危険です。
各注意点について、以下で詳しく解説していきます。
プラスの財産を放棄すると生活保護に影響する可能性がある
預貯金・現金・売却可能な不動産など、プラスの財産がある場合に相続放棄をすると、生活保護に影響する可能性があります。
本来であれば、その財産を生活費に充てられたはずであり、「活用できる資産を手放した」と判断されるおそれがあるためです。
その結果、状況によっては生活保護の停止・廃止や、すでに受けた保護費の返還が問題になる可能性もあります。
自己判断で相続放棄を進めるのは避け、事前にケースワーカーや弁護士に相談しながら対応を検討しましょう。
遺産分割で取得額を減らす場合も注意が必要
生活保護の受給中は、相続放棄だけでなく、遺産分割協議にも注意が必要です。
遺産分割協議とは、相続人同士で誰がどの財産を取得するかを話し合って決める手続きです。
生活保護を受けている人が、合理的な理由なく法定相続分よりも大幅に少ない内容で遺産分割に合意すると、生活保護上問題になる可能性があります。
「本来であれば取得できたはずの財産を、あえて取得しなかった」と見られるおそれがあるためです。
このようなケースでは、相続放棄と同様に生活保護の受給資格や返還の問題につながる可能性があるため注意しましょう。
生活保護受給者でも相続放棄を検討できるケース
生活保護を受けていたとしても、次のようなケースでは相続放棄を検討する余地があります。
・借金などマイナスの財産が多いケース
・管理や処分が難しい不動産があるケース
相続によって借金を背負ったり、維持費のかかる不動産を抱えたりする場合には、単純に「相続すべき」とはいえません。
それぞれのケースについて、以下で具体的に見ていきましょう。
借金などマイナスの財産が多いケース
亡くなった人に借金や未払い金が多い場合は、相続放棄を検討すべき代表的なケースです。
相続の対象となる財産には、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
そのため、マイナスの財産が多い場合、そのまま相続すると返済を求められる可能性があります。
このような場合には、相続放棄の選択が有効となるでしょう。
ただし、借金があっても実際にはプラスの財産のほうが多いケースもあるため、財産状況を調べたうえで判断することが重要です。
管理や処分が難しい不動産があるケース
相続財産に不動産が含まれている場合も、内容によっては相続放棄を検討する余地があります。
とくに、山林・農地・老朽化した空き家・遠方にある土地などは、すぐに売却できるとは限りません。
売却が難しい不動産を相続すると、生活費に活用できないばかりか、管理責任や費用負担が生活を圧迫するおそれがあります。
不動産は価値・売却の可能性・維持費などによって判断が変わるため、迷ったときは早めに専門家に相談しましょう。
生活保護中の相続放棄で失敗しないための対策

生活保護受給中の相続放棄で失敗しないためには、自己判断せず、関係者に相談しながら対応を検討することが大切です。
具体的には、次のような対策が挙げられます。
・ケースワーカーと弁護士に早めに相談する
・3ヶ月の期限内に財産調査と申述を進める
以下で詳しく確認していきましょう。
ケースワーカーと弁護士に早めに相談する
生活保護の受給中に相続人になった場合は、まずケースワーカーに相続の発生を伝えましょう。
相続によって預貯金や不動産を取得する可能性がある場合、生活保護の判断に関係するためです。
あとから相続の事実が判明すると、説明や対応が難しくなるおそれがあります。
ただし、ケースワーカーは生活保護制度の担当者であり、相続手続きそのものを代理してくれるわけではありません。
相続放棄をすべきか、遺産分割をどのように進めるべきかといった点は、弁護士に相談するのが安心です。
3ヶ月の期限内に財産調査と申述を進める
相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3ヶ月以内に行う必要があります。
この3ヶ月の間に、亡くなった人の預貯金・不動産・借金・未払い金などをできる限り調査しましょう。
プラスの財産が多いのか、借金などのマイナスの財産が多いのかによって、相続放棄をすべきかどうかの判断は変わります。
生活保護を受けている場合は、その結果を踏まえて、福祉事務所への報告や相談も進める必要があります。
相続放棄を行う場合は、財産調査を済ませたうえで、期限内に家庭裁判所への申述が必要です。
生活保護中の相続放棄で悩んだときは専門家に相談しよう
生活保護受給中の相続では、遺産の内容と生活保護への影響をあわせて確認する必要があります。
相続放棄は借金を引き継がないための有効な手段になる一方で、受け取れる財産を手放すことにもつながります。
また、遺産分割や相続放棄の判断によっては、生活保護の継続や返還の問題に影響する可能性もあるため注意が必要です。
相続が発生したときや手続きの進め方で悩んだときは、早めにケースワーカーや弁護士に相談しましょう。
ケースワーカーには生活保護への影響について、弁護士には相続放棄や遺産分割の進め方について相談するのが適しています。
それぞれの立場から助言を受けられれば、遺産の内容や生活状況に合った対応を選びやすくなるでしょう。
弁護士法人ふくい総合法律事務所
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