遺言の撤回はいつでもできる。具体的な方法

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分24秒です。

遺言書を作成したあとに、家族関係や財産状況が変わり、「以前の遺言を撤回したい」と考える場合があります。

遺言は、一度作成したら変更できないものではなく、遺言者が生きている間であればいつでも撤回が可能です。

ただし、遺言の撤回には法律で定められた方法があり、遺言書の種類や保管状況によって注意すべき点も異なります。

今回の記事では、遺言の撤回の基本的な考え方や撤回方法、注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。

 

遺言者はいつでも遺言の撤回ができる


遺言は、遺言者の最終的な意思を尊重するための制度です。

そのため、一度作成した遺言であっても、遺言者本人の意思によっていつでも撤回できます。

ここでは、遺言の撤回に関する基本事項として次の内容を解説します。

・遺言の撤回とは?
・遺言の全部もしくは一部の撤回が可能

以下で詳しく確認していきましょう。

遺言の撤回とは?

遺言の撤回とは、以前作成した遺言の効力をなくすことです。

遺言は、作成後に家族関係や財産状況・遺言者本人の考えが変わった場合などに、本人の意思でいつでも撤回できます。

撤回は、単に気持ちが変わったと家族に伝えるだけでは足りず、法律上有効な方法で行う必要があります。

そのため、遺言を撤回したい場合は、どのような方法で意思を残すかが重要です。

なお、遺言の撤回は遺言者本人だけが行えるものであり、家族や相続人が代わりに撤回することはできません。

遺言の全部もしくは一部の撤回が可能

遺言の撤回は、遺言全体だけでなく、一部を対象にすることも可能です。

たとえば、前の遺言をすべて撤回したい場合は、新しい遺言書で「以前の遺言をすべて撤回する」と記載する方法があります。

一方で、「自宅を長男に相続させる」という部分だけを「長女に相続させる」と変更するような、一部撤回も可能です。

ただし、一部だけ撤回する場合は、どの内容を残し、どの内容を撤回するのかを明確にする必要があります。

記載があいまいだと、相続開始後に相続人同士で争いになるおそれがあるため注意しましょう。

 

遺言の撤回をする主な方法


遺言の撤回方法には、主に新しい遺言書を作成する方法と、遺言書そのものを破棄する方法があります。

代表的な撤回方法は、次のとおりです。

・新しい遺言書で前の遺言を撤回する
・前の遺言と異なる内容で新しい遺言書を作成する
・自筆証書遺言や秘密証書遺言を破棄する
・公証役場で新たな公正証書遺言を作成する

以下では、それぞれの方法について具体的に解説していきます。

新しい遺言書で前の遺言を撤回する

もっともわかりやすいのは、新しい遺言書を作成し、その中で前の遺言を撤回する方法です。

たとえば、新しい遺言書に「〇年〇月〇日付の遺言をすべて撤回する」と記載すれば、前の遺言を撤回する意思を明確にできます。

この方法であれば、どの遺言を撤回したいのかが明らかになりやすく、相続開始後のトラブル防止にもつながるでしょう。

なお、遺言の方式を満たさないメモ書きや口頭での意思表示では撤回できないため、法律で定められた方式に従って作成する必要があります。

前の遺言と異なる内容で新しい遺言書を作成する

前の遺言と異なる内容の遺言書を作成した場合も、遺言の撤回にあたる可能性があります。

たとえば、前の遺言で「自宅を長男に相続させる」と記載した後に、新たな遺言で「自宅を長女に相続させる」と記載した場合です。

この場合、両方の内容の実現はできないため、矛盾する部分については後の遺言が優先されます。

ただし、どの部分が撤回されたのかがわかりにくい内容だと、相続人同士で意見が対立するおそれがあります。

新しい遺言書を作る際は、前の遺言を撤回するのか、一部だけ変更するのかをできるだけ明確に記載しましょう。

自筆証書遺言や秘密証書遺言を破棄する

自宅などで保管している自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者本人が故意に破棄すれば、破棄した部分について撤回されたものとみなされます。

しかし、破棄した事実や、遺言者本人の意思で破棄したかどうかが後から争われる可能性もあるため注意が必要です。

撤回の意思を明確に残したい場合は、単に破棄するだけでなく、新しい遺言書を作成する方法を検討した方が安心でしょう。

公証役場で新たな公正証書遺言を作成する

公正証書遺言を撤回する場合は、新しい公正証書遺言の中で、前の遺言を撤回する旨を記載するのが一般的です。

公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されています。

そのため、自筆証書遺言などとは異なり、手元にある正本や謄本を破棄しても遺言を撤回したとはみなされない点に注意が必要です。

公正証書遺言には公証人が関与するため、方式不備によって無効になるリスクを抑えやすいメリットがあります。

 

遺言の撤回で注意すべきポイント


遺言の撤回で注意すべきポイントは、次の3つです。

・法務局保管の遺言は保管申請を撤回しても「遺言の撤回」にはならない
・一度撤回した遺言は原則として元に戻らない
・新しく作成する遺言書の無効リスクに注意が必要

遺言の撤回には法律上のルールがあるため、保管場所や有効性などを確認しながら慎重に行う必要があります。

それぞれの注意点について、以下で一つずつ確認していきましょう。

法務局保管の遺言は保管申請を撤回しても「遺言の撤回」にはならない

自筆証書遺言を法務局で保管している場合は、保管申請を撤回したとしても、遺言そのものの撤回にはなりません。

法務局での保管申請の撤回とは、あくまでも預けていた遺言書を返してもらう手続きです。

そのため、返却された遺言書をそのまま保管していると、有効な遺言として残る可能性があります。

遺言自体を撤回したい場合は、返却後に遺言者本人が破棄する、または新しい遺言書で前の遺言を撤回するなどの対応が必要です。

一度撤回した遺言は原則として元に戻らない

一度撤回した遺言は、原則として元に戻らない点にも注意が必要です。

たとえば、新たな遺言に「遺言の撤回を撤回する」と記載したとしても、一度撤回した遺言の効力が復活するわけではありません。

撤回した遺言の内容に戻したい場合は、あらためてその内容を記載した遺言書を作成しなおす必要があります。

ただし、撤回行為が錯誤・詐欺・強迫による場合には、例外的に前の遺言の効力が回復する余地があります。

新しく作成する遺言書の無効リスクに注意が必要

遺言の撤回を目的として新しい遺言書を作成する場合、その新しい遺言書が無効にならないよう注意が必要です。

とくに自筆証書遺言では、全文・日付・氏名の自書や押印など、法律で定められた方式を守らなければなりません。

方式に不備があると、新しい遺言書が無効となり、前の遺言を撤回する意思が実現できないおそれがあります。

不安がある場合は、公正証書遺言の作成や弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

 

遺言の撤回は方式と保管状況を確認した上で進めよう

遺言の撤回をする際は、まず現在の遺言書がどの方式で作成され、どこに保管されているのかを確認しましょう。

自筆証書遺言・公正証書遺言・法務局で保管している自筆証書遺言では、撤回する際の注意点が異なります。

また、新しい遺言書で前の遺言を撤回する場合は、方式不備や内容のあいまいさにも注意が必要です。

遺言の形式や表現に問題があると、相続開始後のトラブルにつながるおそれがあります。

どの方法を選ぶべきか迷う場合や、相続人間の争いが予想される場合は、早めに弁護士などの専門家へ相談すると安心です。

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