遺産相続の遺留分とは?遺留分の適用範囲

 

この記事を読むのに必要な時間は約8分21秒です。

遺産相続では、遺贈や贈与によって公平な相続が妨げられる可能性があるため、遺留分の概念を理解しておく必要があります。

遺留分とは、一定の相続人が法律で保証された最低限の遺産を確保するための制度です。

今回の記事では、相続の遺留分の概要や適用範囲・計算方法などについて詳しく解説します。

相続発生時の遺留分の扱いに疑問がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

遺産相続の遺留分とは

遺産相続における遺留分とは、一定の相続人に対して、法律上確保されている最低限の遺産取得割合です。
・遺留分が認められるのは不公平な遺贈や贈与があったとき
・遺留分の時効は1年

不公平な遺産相続が行われた場合、遺留分が認められる相続人は最低限の遺産を取り戻せます。

遺留分が認められるタイミングや時効について、以下で詳しく確認していきましょう。

遺留分が認められるのは不公平な遺贈や贈与があったとき

相続人に遺留分が認められるのは、不公平な遺贈や贈与があったときです。

たとえば「すべての財産を長男に相続する」といった内容の遺言書が残されていた場合、長男以外の相続人が遺産を受け取れなくなる可能性があります。

このような場合、遺留分として最低限の遺産取得割合が保証されている相続人であれば、「遺留分侵害額請求」を行うことで遺産を取り戻せるのです。

遺留分の時効は1年

遺留分の請求には、1年間の時効が設けられています。

相続開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年間経過すると、請求する権利が失われてしまうため注意が必要です。

また、相続開始や遺留分侵害を知らなかった場合であっても、相続開始から10年間経過すると遺留分の請求権は消滅します。

遺留分が適用される範囲

遺留分が適用される範囲は、亡くなった人と相続人の関係によって決められています。

遺産相続において、どの相続人が遺留分を請求できるのかは基本知識として押さえておきましょう。
・遺留分が認められる相続人
・遺留分が認められない相続人

遺留分が認められる相続人と認められない相続人について、以下で具体的に解説していきます。

遺留分が認められる相続人

遺留分が認められる相続人は、以下のとおりです。
・配偶者
・子どもや孫などの直系卑属
・親や祖父母などの直系尊属

亡くなった人の妻や夫は、遺留分が認められます。

また、直接の子孫を直系卑属、直接の先祖を直系尊属といい、いずれも遺留分適用の対象です。

遺留分が認められない相続人

遺留分が認められない相続人は、以下のとおりです。
・兄弟姉妹
・甥姪

法律で規定された相続人には順位が決められており、亡くなった人に配偶者・子ども・孫・親・祖父母などの親族がいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。

また、兄弟姉妹もいない場合は、甥姪が相続人となります。

しかし、兄弟姉妹や甥姪が相続人となった場合でも、遺留分の対象にはなりません。

相続人ごとの遺留分の割合

相続人ごとの遺留分の割合や計算方法について、知っておくべき基準を以下の項目別に解説します。
・遺留分の対象となる財産
・遺留分は法定相続分の半分
・遺留分の割合は2段階で計算
・総体的遺留分
・個別的遺留分
・遺留分計算例

遺留分の割合は相続人によって異なり、計算する際は亡くなった人の遺産額と法定相続分を理解する必要があります。

各項目を、次で詳細に見ていきましょう。

遺留分の対象となる財産

遺留分の対象となるのは、主に以下の財産です。
・遺贈する財産
・死因贈与する財産
・生前贈与した財産

遺贈は遺言書で承継を指定した財産を指し、死因贈与は当事者双方による契約で継承する財産を指します。

相続開始時点で保有していた財産に限らず、生前贈与した財産も場合によっては遺留分の対象となる点は押さえておきましょう。

遺留分は法定相続分の半分

遺留分は基本的に、法定相続分の半分と定められています。

法定相続分とは、相続人が2人以上いる場合の、各相続人の法律で定められた相続割合です。

たとえば、亡くなった人の子どもの法定相続分は遺産の2分の1となっており、子どもが請求できる遺留分はその半分であるため、4分の1となります。

遺留分の割合は2段階で計算

「遺留分は法定相続分の半分」という法則に当てはまらない相続のケースもあるため、具体的な遺留分の割合は2段階で計算するのが一般的です。

第一段階では、亡くなった人の遺産全体から遺留分の対象となる財産を抽出し、「総体的遺留分」を明らかにします。

次に第二段階で、総体的遺留分に対して、各相続人(遺留分権利者)の個別的な遺留分を計算します。

総体的遺留分

総体的遺留分とは、全相続人の遺留分の合計です。

遺留分の合計は、遺留分を認められる相続人が誰かによって異なります。

たとえば亡くなった人の配偶者と子どもが相続人となる場合、総体的遺留分の割合は、遺産全体の2分の1となります。

また、親や祖父母などの直系尊属のみが相続人となる場合、総体的遺留分の割合は遺産全体の3分の1です。

個別的遺留分

個別的遺留分とは、総体的遺留分を遺留分権利者となる相続人に配分した割合です。

計算する際は、総体的遺留分に各相続人の法定相続分をかけ算して算出します。

例として、相続人が配偶者と子ども二人のケースでは、総体的遺留分は2分の1です。

配偶者の法定相続分は2分の1のため、それに総体的遺留分の2分の1をかけた「4分の1」が個別的遺留分になります。

子ども一人の法定相続分は2分の1×2分の1=4分の1となり、それに総体的遺留分の2分の1をかけた「8分の1」が個別的遺留分となります。

遺留分計算例

亡くなった人が残した遺産総額が6,000万円、相続人が配偶者と子ども3人のケースを例に挙げ、具体的な遺留分の計算方法を見ていきましょう。

相続人が配偶者と子どもの場合、総体的遺留分は2分の1です。

法定相続分は、配偶者が2分の1、子どもは2分の1を3人で分けるためそれぞれが6分の1です。

総体的遺留分に法定相続分をかけ算し、各相続人の個別的遺留分を算出すると、以下の金額になります。
・配偶者:1,500万円(6,000万円の2分の1×2分の1)
・子ども一人あたり:500万円(6,000万円の2分の1×6分の1)

 

遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求

従来の遺留分の請求方法は「遺留分減殺請求」でしたが、2019年7月の改正相続法によって「遺留分侵害額請求」に変わりました。

遺留分減殺請求とは、遺留分を遺産そのものとして取り戻す手続きです。

対して遺留分侵害額請求は、遺留分をお金で取り戻すための手続きとなります。

遺産を現物として取り戻す場合、不動産や株式など分割するのが難しい財産は複雑な手続きが必要なため、トラブルに発展するケースも多くありました。

法改正によって遺留分は原則としてお金で清算できるようになり、相続人間で揉めるリスクが軽減されています。

遺産相続の遺留分で悩んだときは、弁護士に相談しよう

遺産相続における遺留分は、相続人の権利を保護するための重要な制度です。

遺留分の適用範囲や計算方法を理解しておくことで、不公平な遺贈や贈与による相続人の権利侵害を防げます。

「遺産がもらえない」「遺留分請求で揉めている」などの相続問題に直面した際には、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。

専門知識や経験による適切なサポートを受けられれば、相続におけるトラブルを回避し、相続人の権利を適正に保護できるでしょう。

 

 

 

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